将来の夢は?
初投稿です。できるだけ頻繁に上げていきたいと考えてます。よろしくお願いします。
キーンコーンカーンコーン。
青薔薇学園初等科の下校チャイムが鳴り、着席していた生徒達がざわつき始める。
「はい、それじゃ宿題の提出は月曜日の朝だから忘れるなよー、日直、号令」
「起立、礼!」「「先生、さようなら!!」」
怠そうな先生の言葉と反対に力強い日直の号令で帰りの会が終了し、周囲の生徒達が待ってましたとばかりに黄色い声を上げながら教室から飛び出していく。
今日は土曜日、つまり昼までの授業であり、クラブ活動や習い事も特にない者もこれから帰宅するはずだったが……。
「ぐぬぬぅ」
紅クロマは椅子に座り直し、帰りの会で突如配られた宿題を前に頭を抱えていた。
「あれ?どうしたのですか、クロちゃん?」
帰りの準備をしながら隣の席のクロマに話しかけてきたのは親友の楓。
家が近いため、普段は一緒に通学しているのだが、クロマの様子を見て不思議に思ったらしく、首をかしげている。
「ごめん楓ちゃん……さっきの宿題をどうしようかと悩んでて」
「さっきのって、将来の夢を書くプリントのことですか?」
「うん、でも全然思いつかなくて……楓ちゃんはやっぱりアイドルだよね?」
「まぁ、今のところはそうですね。お母様もそれを望んでますし私も成れるならなりたいです」
楓は 親が芸能人の事務所を経営しており、彼女自身も小学校に上がる前からジュニアアイドル候補生として、ダンスの習い事やボイストレーニングをしているらしい。
「すごいなぁ……私この年になってまだ何にも将来の事も考えられてないよ」
「フフフッ、クロちゃん、私たちはまだ小学3年生、8歳です。こんな宿題適当に書いてもきっと怒られませんよ」
「……ソウダネ」
楓の諭すような無自覚な言葉が、クロマの精神を削っていく。
なぜなら、クロマは見た目通りの少し発育が悪い小学三年生ではないからである。
(私、実は精神年齢は合計で30歳くらいなのに将来性がないダメ人間だなぁハハハ)
「どうしたの?クロちゃん大丈夫?」
「ナンデモナイヨー」
「それならいいけど……クロちゃんは何かやってみたい事とか、やりたい事とかないの?」
「あるにはあるんだけど……ちょっと難しくてね」
「ふむ……よかったら相談してみてください、何か力になれるかもしれません」
楓が自分の机に荷物を置き、席に着く。
「助かるけど……楓ちゃん今日は習い事とか大丈夫なの?」
「土曜日は夕方から自宅でボイトレだけですし、大丈夫です」
「そっか、ありがとう。じゃあ聞いてもいいかな?」
クロマがプリントを楓に差し出す。
「いえ、他ならぬ親友のクロちゃんのためですもの。それで、何に困ってるんです――か?」
にっこりと微笑みながらクロマのプリントを覗き込んだ 楓の言葉がぴたり止まる。
『将来の夢 1番:騎士 2番:魔物ハンター 3番:ダンジョン冒険者』
「実は前から少し調べてたんだけど……この国って魔物が全然いないしダンジョンの話も全然聞かないし、騎士団もないみたいだからどうすればいいのかなって」
「ク、クロちゃん?」
「できればモンスターと戦う仕事がしたいの!」
そう、紅クロマは転生者である。
それも、異世界リガルドではモンスター討伐に人生を捧げ、人類最強とまで謳われた騎士であり、そしてちょっとお馬鹿であった。