EARDRUM-MASSAGE(7)
耳かき編完結です。
「あらっ、もう30分経ちましたか。いかがでした?鼓膜のマッサージ。感想をお聞かせください」
う~~ん、いかがと問われても、後半15分はまるで作業が止まっていたもので、何とも講評のしようがないかと。
「うわっ、それは失礼しました。手が止まってしまってましたか。やっぱりお話をしながら耳と言う繊細な部位を施術するということ自体に、かなり無理がありそうですね。これをメニューに取り入れる場合、まず私の口に蓋をする前処理を施す必要がありそうです。これは企画倒れですかね」
いえ、最初の15分はとても心地よかったですし、すでに費用も掛かってるじゃないですか。チェアーとか。まだ決断するのは尚早かと。
「せっかくメニュー名も“EARDRUM-MASSAGE”って、ちょっと横文字を使ってみようか~なんて考えたんですけどねぇ」
それもどうかと。だって店の名前が“整体シバヤマ”ですから。実に大和的ですし。“鼓膜マッサージ”あたりの命名の方が、分かりやすいですし、お客さんの興味をくすぐるかと存じます。というより、そもそもこの店にメニュー表みたいのありました?見たことないです、私は。
「まあ、採用するしないは、もう少し時間を掛けて考えましょうかねぇ。菊元さん、実験台になって頂き、ありがとうございました。次にお会いするのは本部道場ですかねぇ。じゃあ、すぐに役立つ護身の技なんかを1つ2つ、次は指導しましょうかねぇ」
はい、よろしくお願いします。
それと美波さん、いま明るい声で接してくれてますが、お辛い心持ちが滲み出ちゃってます。とても無理をしてるって感じです。そのことをいま、私は口にできませんが。
辛い昔を思い出したとき、またダブチを買ってきますので、どうかいつもの明るく、ちょっと抜けてる美波さんに戻って下さい。
私は、そんな美波さんのことが大好きです。心の中で呟かせて頂きます。
「本日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」




