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お掃除(彼女のいる部屋)
彼女がパソコンに釘付けになっている間はどうしようかと思い、僕は部屋の掃除をし始めた。
何故他人の部屋を掃除しようと思ったのは分からない。多分僕からしても相当酷いと思ったからだと思う。本の山と原稿用紙の平原、たまに滴る赤い雨。此れが花の様な少女の一人暮らし。文学スプラッタ少女だったのか、彼女は。
最初にしたのは置かれている本を本棚にしまう事からだった。彼女に本をどうしまうかを聞いたところ、パソコンから目を離さずに「作者の国別、人間関係別で」と無茶な注文を付けてきた。そんな文学オタクでも無い限り分かる筈もなく。
彼女に聞こうと思ったが、肉食獣じみた執念が文字通り目に見えていた。
「こん畜生」「テメェにゃ私に釣り合わん、失せろ」と誰かに罵倒するようなうわ言を繰り返していたので。
白湯を腕の当たらない位置にそっと置き、部屋を後にした。