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8話 予選一回戦

 今日もだいぶ遅れてしまいました←汗

 お休みの日はどうも気が抜けてしまうなぁ←汗

 今回は「フィオーレ」の試合です。

 わりとあっさりと終わります。

 第九試合から試合展開は異様なほどに加速した。


 第八試合のPKK同士の決闘の余韻によるものか、それとも会場内の熱にあてられたのかは定かではないが、それまで読み合いが主だった試合が、最初からそれぞれの武術による応酬になった。


 その結果、試合時間が大幅に短縮されることになった。


 最初から全力でのぶつかり合いをして、長時間拮抗するなど稀であり、大抵はあっさりと決着が着いてしまった。


 かえって試合時間よりも試合までの準備時間、それまでの試合の片付けの方が長くかかってしまうほどだった。


 だがあっさりと決着が着くものの、武術や魔法の応酬は自然と試合を盛り上げていき、予選開始から十時間以上が経ってもなお、会場内の熱気は治まることを知らなかった。


 その白熱した予選第一回戦も残り二試合を数えた頃、ついに「フィオーレ」の出番が訪れた。


「ん~、ラス前かぁ」


「中盤くらいがよかったけどねぇ」


 試合の順番に若干の不満を洩らすヒナギクとレン。ふたりは最終試合前よりも、中盤の順番を望んでいたようだった。


「ラスト前だとダメなんですか?」


「いや、最後の方ってさ、わりと視線が集まるじゃん?」


「中盤だとわりと埋没しやすいから、目立たないんだけどね」


 やれやれとため息を吐くヒナギクとレン。盛り上り始めた頃の、中盤頃の試合というのはわりと埋没しやすく、記憶にも残りづらいものだ。その前後に派手な試合があればなおさらである。


 しかし最後の方の試合となると自然と集中して見られてしまいがちである。興行、たとえばボクシングやプロレスの試合であれば、メインイベントをラストにするものだ。タマモたち「フィオーレ」の試合はいわばセミファイナル。リアルであればTV中継も入り、注目が集まりだす頃の試合となる。


 となれば自然と目は集まってくるものだ。実際ひとつ前の試合まではまばらだったプレイヤーたちが徐々に数を増やしていた。埋没する試合にはなりそうにはなかった。


「……本戦のためにある程度は流す予定だったんだけど」


「むしろ本戦のためにある程度の情報は流すべきかもしれないね」


「ああ、それもありっちゃありだなぁ」


 ヒナギクとレンはふたりで作戦会議をしている。タマモも「フィオーレ」の一員というよりも、マスターであるはずなのだが、現状ではヒナギクとレンが最大戦力であり、現状ではタマモはまだオマケのようなものなのだから、ふたりがタマモを交えての作戦会議をしないのも無理もないことだった。


 タマモ自身、いまはオマケのようなものだから仕方がないと自分でも思っているため、特にこれと言って思うことはなかった。それでも若干寂しいというか、ちょっとだけ悔しくはあるが、いつかは三人での作戦会議ができるようになろうと決意するタマモ。


「よし。とりあえず一発かます」


「……いまのところそれしかないかなぁ」


 ヒナギクがため息を吐いた。どうやら作戦会議は終ったようだが、言われた意味がいまいちわからない。一発かますというのはどういうことだろうか?


「えっと、どういうことになったんですか?」


「ひと言で言えば」


「言えば?」


 なぜかためを作るレン。自然と緊張感が高まり、ごくりとタマモは喉を鳴らした。それを合図にしたかのようにレンは言った。


「タマちゃんは後ろで見ていていいよってことかな?」


「はい?」


「いや、だから俺とヒナギクでほかの四つのクランを退場させるからってことだよ」


 あっけらかんと言い切るレン。隣ではうんうんと頷くヒナギクがいた。現状ではそれしかないというのはわかるのだが、ふたりだけでほかの四つのクランを退場させる。そんなことができるのかとタマモは思う。


 しかし論議する間もなく、舞台の準備ができたようでほかのクランがゆっくりと舞台に上がっていく。タマモたち「フィオーレ」は最後に舞台へと上がった。


 四つのクランはひとつだけ4人組だったが、ほかの三つは5人組だった。つまり敵は19人いるということになる。その19人をヒナギクとレンだけで相手する。どう考えても無謀である。


 しかし当のヒナギクとレンはそれぞれに屈伸したり腕を伸ばしたりしている。ただその目はとても真剣というか、どこか野生の獣を思わせるような、とてもギラギラとした目をしている。


(……ヒナギクさんもわりとバトルジャンキーですよね)


 ヒナギクはレンがバトルジャンキーだと言っていたが、いまの表情を見るかぎり、ヒナギクにも若干、いや、大いにその素質はあるように思えてならない。


「試合開始」


 様子の異なるふたりになにも言えないでいるうちに試合開始のアナウンスが流れた。一斉にそれぞれのクランがそれぞれのEKを構えた。


「じゃ、先に行ってくるよ、ヒナギク」


 ほぼ同時にレンがそう呟いた。ヒナギクが返事をするよりも速くレンは地面を蹴っていた。


 ──ドォーン!


 なにかが爆発するような音がすぐそばから聞こえた。見ればレンが立っていたはずの場所が黒く煤けていた。まるで落雷でもあったかのようだ。いったいなにがと思ったときには複数のうめき声が聞こえてきた。


「う、うわぁっ!」


「がぁっ!?」


「は、速っ!?」


 ちょうど三人分のうめき声が聞こえたと思うと、ちょうど対面側にいた4人組のクランが半壊していた。3人のプレイヤーがすでに場外にと転がり落ちていた。最後に残っていたリーダーは一瞬で半壊した自身のクランを見て、信じられないというようにそれを為したレンを見つめている。


「な、なにを」


「悪いね。教えられないんだよ」


 レンはとても冷たい目をしながら肩に担いだEKの鞘を振るった。同時に最後に残っていたリーダーの体が宙を舞い、場外へと落ちて行った。呼吸にしてふたつか三つ分ほどの時間での出来事だった。


「レンったら、もう仕方がないんだから」


 ヒナギクがため息を吐いた。タマモがヒナギクを見やろうとした。


 しかし、それよりも早くヒナギクの姿も消え、さきほどのようにまたうめき声が聞こえてきた。


 目を向ければ、別のクランにヒナギクが突撃をしていた。レンとは違い、ヒナギクは徒手空拳だけで5人組を制していた。


 それもできるかぎり急所を、首筋や顎、こめかみ、鼻と口の間などに拳や蹴りを放っていた。


 その姿はヒナギクの見目も相まって舞っているかのようにも見えるもので、思わずタマモは見惚れてしまっていた。


 その間にヒナギクが急襲したクランはほぼ全員が気絶した。


 ヒナギクが掛けた時間もまた呼吸ふたつか三つ分ほどであり、ふたり合わせても数十秒も掛かっていなかった。そうほんの数十秒で「フィオーレ」以外の四つのクラン、そのうちのふたつの敗退が決定した。


 あまりにもあっさりと行われた蹂躙劇に残ったふたつのクランはもちろん、観戦していたプレイヤーたちも息を呑んで固まっていた。


 しかし舞台上のヒナギクとレンは固まることなどなく、それぞれが次の獲物へと視線を向けて、ほぼ同時に地面を蹴った。それからやはり呼吸にしてふたつか三つほどで残ったふたつのクランもまた場外ないし気絶により、全滅していた。


 試合時間はほんの一分ほどだった。それまでのように武術の応酬によるものではなく、単純なプレイヤースキルだけでの戦いによって、セミファイナルは終了した。こうしてタマモたち「フィオーレ」は予選一回戦を圧倒的な速度により突破することになったのだった。

 

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