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11話 暗闇の中で響く音

グロ注意報です。

あくまで最後の方だけですが、苦手な方はスルーお願いします

 音がしていた。


 水の音なのだが、流れる音でも、滴るような音でもなかった。


 ぴちゃぴちゃという音がどこから聞こえてくるのだ。


 その音がいったい何の音なのか、タマモにはわからなかった。


 強いて近いものを言えば、魚が水面に飛び出す音くらいだろうが、あくまでも近いだけであり、そのものではなかった。


 それに魚が棲息するような水辺特有の匂いはしないので、やはり魚が水面に飛び出す音ではないのだろう。


 では、この音はいったいなんの音なのか。


 タマモは脳裏によぎる疑問に導かれるようにして、重たいまぶたを開いた。


 まぶたを開き、タマモが真っ先に見たのは、灯り一つない暗闇だった。


 四囲を見渡しても、どこにも灯りという灯りは存在せず、ただ暗闇だけがそこにはあった。その暗闇の中でタマモはひとりぽつんと立っていたのだ。


「どういう、こと?」


 なんでいきなりこんな場所にいるのか。そもそもここはどこなのか。タマモは状況をまるで掴めないでいた。


 状況を掴めないまま、呆然と目の前の闇を眺めていると──。


「……あの音だ」


 ──再び、あの水の音のようなものが聞こえてきたのだ。


 相変わらず、ぴちゃぴちゃというよくわからない音だった。


 音の正体はまるで見当もつかないものの、その音が闇の向こう側から聞こえてくることがわかった。


 念のために耳を澄ませてみたが、やはり闇の向こう側から、ちょうど正面方向から、例の音がしていることがわかった。


 もっとも音の出所がわかっただけで、どうしてこんな場所にいるのかという疑問が解決したわけではない。


 だが、少なくともこの先になにかしらがあることだけはわかった。


「……この先、か」


 相変わらず、灯りひとつさえもないため、一寸先にもなにが待ち受けているのかもわからない。


 それでも、この先にこの状況を打破するための手がかり、になるかはわからないが、なにかしらの情報があることは間違いなかった。


 その情報が現状を打破する切っ掛けになればいいが、そうでなければわりとお手上げである。


 だが、このまま座して待つよりかは、はるかにいいだろう。


「……行きますか」


 なにが待ち受けているかはわからない。


 それでも、待ち続けたところで、状況が好転することがないのは間違いない。


 タマモは息をひとつ吐いてから、暗闇の中へと脚を踏み入れた。


「……特に変化はなし、と」


 脚を踏み入れた際に、じっと足元を見つめてみたが、特にこれと言った変化は見えなかった。


 同じ暗闇でも、氷結王の御山の貯蔵庫のように、感覚を麻痺させるような呪いが掛けられているわけではないようだった。


 貯蔵庫のときは、黒色の光が、闇と同色の光りがボウッと点いたり、消えたりしていたが、今回はそんな光はどれだけ目を凝らしても見えなかった。


 だからといって、安全というわけではない。


 しかし、危険というわけでもない。


 というか、安全か危険かを判断できるような情報がなにひとつとてないのだ。


 この暗闇がなんなのかはもちろん、例の水が何の音なのかもまるでわからないままだった。


「……鬼が出るか、蛇が出るか、ですかね」


 このまま進み続けた先になにがあるのかは、まだわからない。


 わからないが、決心したとおり、このまま座して待っていて、状況が好転することはありえない。


 虎穴に入らずんば虎児を得ずという言葉の通り、現状はまさに虎穴に入るかどうかの瀬戸際であり、臆したところでこれ以上の進展はない。


 だが、先に進めば、少なくともなにかしらの情報という宝を手にすることはできる。


「……狐は度胸」


 タマモは再び息を吐き出してから、再び闇の中へと脚を踏み入れる。


 今回は一歩だけで止まらず、そのまま二歩目、三歩目と次々に踏みだしていった。


 そうして闇の中を進んでも、タマモの四囲にこれといった変化はなかった。


 相変わらずの一寸先も見えない暗闇が広がり続けるだけ。


 これはこれで感覚が狂いそうだなと思いつつ、脚を踏みだしていくタマモ。


 そうして脚を踏みだしていくにつれて、タマモはひとつの変化に気付いた。


「……これは音?」


 そう、いままで聞こえてきた水の音のようなもの以外の音が聞こえ始めたのだ。


むに連れて、例の水の音は徐々にはっきりとしたものになっていった。


 基本的に、水の音が大半だが、それ以外の音も徐々にだが、聞こえ始めたのだ。


 それと同時に鼻をつくような、すえた臭いがどこからともなくし始めたのだ。

 

 堪らず、タマモは自身の鼻を押さえた。


 それでもなお、刺激臭と言ってもいい臭いが、容赦なくタマモの鼻腔を攻撃していく。


 あまりの臭いにタマモは涙目になりながらも、闇の中を進んでいったとき──。


 ぐちゃ


 ──やけにぬるぬるとしたものを踏み抜いたのだ。


 なにを踏んでしまったのだろうと目を凝らすも、なにかしらの物体の輪郭は見えた。


 が、やはり灯りひとつない状況では、輪郭くらいしかわからなかった。


 なにか細長いもののように見えるのだが、それ以上はわからなかった。


 なんだろうと思いつつ、タマモは指を鳴らして「狐火」を灯し、そして──。


「……え?」


 ──自身が踏み抜いたものを見て、絶句した。


 タマモが踏みつけたもの。それは人の腕だった。肘から先しかない、誰かの腕をタマモは踏みつけていたのだ。


 思わず、小さな悲鳴をあげつつ、その場から跳び下がるタマモ。


 タマモが跳び下がるのと同時に、タマモが踏みつけていた腕が闇の向こう側へと引きずり込まれていくかのように移動していった。


 いったい、なにがと思った、そのとき。


 ガリッ、ゴリッという音が聞こえてきたのだ。次いでバキィという音と、くちゃくちゃという咀嚼音のようなものもまた。


「食べて、いる?」


 闇の向こう側にタマモが踏みつけた腕を食べるナニカがいる。


 それこそ人食いの悍ましい化け物であろうナニカがだ。


 タマモは唇を真一文字に結び、ナニカがいるであろう闇へと向かって「狐火」を次々に投げつけた。


 投げつけた「狐火」はその数を増やす度に、闇を払い、その向こう側にいるナニカの姿を露わにした。


 が、露わになったナニカの姿を見て、タマモは呆然となってしまった。


 暗闇の向こう側にいた、人食いの化け物であるナニカ。


 青い髪を垂れ流しながら、瞳孔を縦に裂けさせて、被害者の腕に食らいつく美しい女性がそこにはいた。


 その姿を見て、タマモは呆然とその名を口にした。


「エリ、セ?」


 そう、そこにいたのはタマモの世話役のひとりであるエリセだった。


 普段とはまるで違う、獣のような姿となったエリセがそこにはいたのだった。

本音を言うと、グロにするかNTRにするかをガチで悩みましたが、NTRは書けなかったので、あえなくグロになりました←

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