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6話 一石二鳥

 おひさしぶりです。

 月曜日の夕方から体調を崩してしまった結果、三日も空けるということになってしまいました←汗

 季節の変わり目には気を付けないとダメですね。

 さて、今回はちょっと長めのお話になります。というか、長くなってしまいました←汗

 あととある某料理アニメのネタをブッ込みました。わかる方は想像してくださいな。

 予選が始まった数時間が立った頃、タマモは口をあんぐりと開けていた。


「ほへぇ~」


「タマちゃん、口が開きっぱなしになっているよ?」


「だらしないから、口チャックしていてね」


 ヒナギクとレンはそれぞれに苦笑いしながら、タマモの様子を眺めていた。ふたりも苦笑いしているだけであり、タマモの様子を呆れてはいなかった。


 というのも口を大きく開けてしまっているプレイヤーはタマモだけではなかった。「武闘大会」の予選。それだけを聞けば、さほどレベルは高くないと思っていたプレイヤーが多かったのだろうが、その予想があまいものだというのがわかる光景が、次々に舞台上で繰り広げられていた。


「受けろ、「スラッシュダンス」」


「なんの! 「ブレイズソード」」


 現在舞台上ではクラン部門での予選第八試合が行われており、試合はその佳境に入ったところだった。「双剣士」と「大剣士」のふたつのクランのリーダー同士での一騎打ちとなっていた。それぞれがリーダーを務めていたクラン以外はすべて場外に落ちるか、戦意喪失し棄権をしたため、残ったふたつのクランはそれぞれにPKKの選抜チームだった。そのため相手のチームの力量はお互いにわかりきっていた。ただ戦うだけであれば決着は着かないだろうということで、両チームのリーダー同士での決闘が開始されたのだ。


「双剣士」と「大剣士」の力量は互角だった。「双剣技」の武術である「スラッシュダンス」──左右の剣で瞬時に放たれる八連撃──を軸に手数で攻める「双剣士」と「大剣技」の武術である「ブレイズソード」──上下左右どの方向からも放てる渾身の一撃──で迎撃する「大剣士」の戦いは白熱したものになっていく。


 お互いにクールタイムが終わるごとに武術を放っていた。すでにこれで三度目のクールタイムが終わり、現在四度目のぶつかり合いとなっていた。それでもまだお互いに致命的なダメージを受けていないのだから、PKKの選抜チームという肩書きが伊達ではなかったというなによりもの証拠だろう。


「舌を巻く速度だな、クレス! まったく追い付けんぞ!」


「そっちこそ。相変らずの凄まじい一撃だな、バルドス!」


 白熱した戦いを演じながらも「双剣士」ことクレスと「大剣士」バルドスはお互いの健闘を称えながら、剣を交えていた。お互いに笑い合いながらのやり取りに、ふたりがそれぞれバトルマニアであることを示しているように見える。


 そんなリーダーの姿にそれぞれのチームメンバーはみなため息を吐いていた。どうやらPKKの中でも特にバトルマニアなふたりが率いるチーム同士が予選でぶつかり合うことになってしまったようだった。


「……あの両チームに挟まれたクランは本当にかわいそうだよなぁ」


 選抜チームに挟まれたみっつのクランは本当にかいわそうだった。みっつのうちのひとつはPKで構成されたクランが混じっていた。当初は選抜チームをだいぶ煽っていたのだが、ほかのふたつのクランをそれぞれのチームのメンバーに任せ、クレスとバルドスのふたりだけでPKクランに突撃していった。その結果、呼吸三つ分くらいでPKのクランは全滅していた。


 その様子を見ていたほかのふたつのクランはみずから場外へと降りて棄権してしまったのだ。そのふたつのクランも決して弱かったわけではない。そのふたつのクランもベータテスターの集まりだったようだが、PKK、しかも選抜されたチーム相手に勝ち目はないと踏んだようだった。


 そうして開始数分で残ったのはPKKの選抜チームふたつだけになり、それからずっと両チームのリーダーによる決闘が行われていた。


「「双剣士」クレスに賭ける奴はもういないか!? いまのところオッズはクレスが6:4でクレスが有利だぞ!」


「なにを言ってやがる! いま有利なのは「大剣士」のバルドスだろうが!」


 そのあまりにも白熱した試合のためか、一部のクランが胴元となり賭けが行われていた。おかげで予選会場内はとんでもない大盛り上がりになっていた。


「はぁ~、すごいものですねぇ」


「だねぇ。さすがはPKKの選抜チームなだけあるよ」


 うんうんと頷くヒナギクとそんなヒナギクを尻目に簡易キッチンでフライパンを振るうタマモ。


 作っているのはいつものキャベベ炒めだった。


 予選会場は閉鎖空間であるため、本来であれば「調理」なんてすれば匂いが籠ってしまうものだが、この予選会場内では匂いが籠ることはない、と運営からのお達しがあった。


 それはつまり「調理」スキルを持っているプレイヤーはこの機会に「調理」して小金を稼いでもいいですよ、という運営からのお許しでもあった。


 ここぞとばかりにタマモたちは観戦をしつつ、タマモの経験値稼ぎのためにフライパンを振るうことにしたのだ。


 ヒナギクとしてはまだタマモは「調理」の経験を積んだ方がいいという考えもあったのだが、これだけのプレイヤーがいる中で「調理」を行うことが今後どれだけあるかはわからないことと少しでもタマモのステータス的不利を解消させるために渋々とGOサインを出したのだ。


 ちなみに「調理」スキルを持っていないレンは呼び込み兼列整理兼会計を担当している。


 レンにばかり負担がかかっているように見えるが、実際のところ「調理」スキルがあるタマモとヒナギクは「調理」で手一杯になっていた。


 というのもタマモたち「フィオーレ」の簡易キッチンにはそれなりの行列ができていたのだ。


「「キャベベ炒め」かぁ。たまには野菜系もいいかなぁ」


「というか、作っているの、あの調理器具の子じゃん。あの子調理人だったんだね」


「隣のプレイヤー、めっちゃ美人さんだなぁ。絵になる光景だなぁ」


 観戦もしつつ、肉料理のように手が汚れることが少ないキャベベ炒めはわりと人気があるようだった。加えて、現段階では肉料理のために肉の種類が少ないというのもあるのだろう。


 現在の「EKO」内で主流の肉料理は「レッドボアのステーキ」だった。その効果は満腹度を30パーセント回復と1時間のSTR値の増加(小)というバフありの食事だった。


 しかし「レッドボアのステーキ」の元となる「レッドボアの肉」はその名の通り、レッドボアという猪系のモンスターからのレアドロップなため、なかなか流通しない。


 そのうえ「ステーキ」を作るために複数のレッドボアの肉が必要だった。加えて「調理」スキルが5以上でないと「生ごみ」という失敗アイテムと化してしまうのだ。


 そんな「レッドボアのステーキ」を出しているクランもあるようだが、数量限定のうえ、一皿5000シルという高額での料金設定になってしまっていた。


 それでも瞬く間に売り切れてしまうし、売り切れてしまったら見向きもされなくなってしまっていた。プレイヤーのお目当てはバフ付きの「ステーキ」一択だった。


 中には「モツ煮込み」という看板を掲げているクランもあるようだが、若いプレイヤーにはあまり人気がないようだ。


 しかし見た目が壮年のプレイヤーたちにはだいぶ人気があるようで、さながら立ち飲みの屋台と化していた。


 ほかにもスイーツ系だったり、串焼きだったりと様々な料理を出すクランはいるが、一貫した「キャベベ炒め」オンリーな「フィオーレ」のようなクランは珍しかった。


 その珍しさと一皿200シルなうえに数量限定がなしとあるためネタとして並んだクランがいた。


 バフなどないだろうから、とりあえず満足度の回復だけを考えての食事のつもりだったのだろうが、そうして出されだ「キャベベ炒め」をひと口食べたところ、そのクランは叫んでいた。


「う、うまい!?」


「なんだ、これ? なんだ、これ? なんだ、これぇぇぇぇぇ!?」


「シャキシャキとしたキャベベの食感と、各調味料のうま味、そしてふたつが合わさった絶妙なバランス。まさに見事だ!」


「うーまーいーぞー!」


 語彙がなくなるプレイヤーやただ「美味い」としか言えなくなるプレイヤー、はたまた語彙の限りを尽くすプレイヤー、座禅を組んだまま空中浮遊したり、海上をみずからの足で駆けぬけたりなどと様々なリアクションを見せる某料理アニメを連想させるプレイヤーとさまざまな反応をしてくれたため、それが評判を呼んだのだ。結果、レンにいろいろと任せるしかなくなってしまい、試合を観戦しつつ、「キャベベ炒め」を作ることになったタマモとヒナギクだった。


 タマモのインベントリには大量のキャベベが収納されているし、「ひと口大に切る」と「油通し」と「炒める」という工程しかないため、注文すればあっさりと出て来るということ、そして「調理」をタマモとヒナギクという美幼女と美少女が行っているということも合わさり、「フィオーレ」の行列はなかなか解消されることがなかった。


 そんな「フィオーレ」の行列を横目に舞台で決闘を行うクレスとバルドス。ふたりはすでに自分たちの世界に入っているため、周りがどうなっているのかをまるで把握していなかった。把握しないまま、ふたりの戦いは制限時間一杯まで続くことになった。


 結果は集中力をわずかに途切れさせてしまったクレスに、バルドスの一撃が入り、バルドスのチームが予選一回戦を勝ち残った。


 そして試合が終わると同時にタマモのレベルもひとつあがって4となり、だいぶ資金も稼げたことで文字通りの一石二鳥を得てほくほく顔となった「フィオーレ」だった。

 タマモ レベル3→4 


 種族 金毛の妖狐(獣人)


 職業 調理人 双剣士 狩人(セット職業)


 HP 61→67(6UP)


 MP 61→67(6UP)


 STR 2→3 (1UP)


 VIT 2→3(1UP)


 DEX 4


 AGI 4


 INT 3


 MEN 3


 LUC 2


 Skill 調理Lv5→Lv8  鑑定Lv7


装備 姐さん印の巫女服(防御力+5、AGIに補正値(小))


 EK おたまとフライパン(ランクUR)


 おたま──「一撃必殺」「必中」「名剣」


 フライパン──「絶対防御」「大盾」

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