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5話 情報収集と予選開始

「金網ねぇ。デスマッチっぽいな」


「あー、プロレス?」


「そうそう」


 レンとヒナギクが目の前にある舞台を眺めながら言う。


 金網に覆われた舞台はたしかにプロレスの金網式デスマッチに近い。


 金網に覆われた舞台で、逃げ場のないリングで相手と一対一の決闘。


 たしかにデスマッチと言っても過言ではないのかもしれない。


「それでは予選第一試合を始めます。なお試合はすべて抽選により決定しております。いつどのクランとの対戦になるのかは皆さまにはお伝えはしませんので、ご了承ください」


 アナウンスが再び聞こえてきた。その内容に他のプレイヤーが少しざわついてしまう。


 いまの内容になにか不備でもあったのだろうかとタマモは首を傾げた。そんなタマモにレンは考え込みながら言う。


「……なるほどねぇ。誰と戦うのかはわからないってことは、対戦相手の試合だけを見ていればいいってわけじゃなくなるか」


「試合以外は常に観戦しているっていうスタンスでいろっていうメッセージだね」


「……まぁ、初イベントだからこそなんだろうなぁ」


 レンの言葉にヒナギクも頷いていた。そんなふたりの言葉の通り、他のクランたちも「交代制で」とか「どの試合を誰が見るのか」という話し合いを始めていた。どのクランも真面目に話し合いをしている光景にタマモは「ほえ」と惚けたように呟いた。


「ただ戦えばいいってわけじゃないんですね」


「そりゃそうだよ。戦うってことはただ目の前の敵を倒せばいいってわけじゃないもの。相手の観察から始まり、相手を徐々に知り、そして攻略法を編み出していく、という一連の流れがあるんだもの。遮二無二突っ込んで勝つなんてことはそうそうありえないでしょう? ほら某狩りゲーとかもモンスターのことをなにも知らずに突っ込んでも返り討ちに遭うじゃん? それと同じだよ」


「あぁ、なるほど」


 レンの説明に納得するタマモ。その内容を聞いていた他のクランの事情がわかっていなかったプレイヤーたちもその内容を聞いて「あぁ」と納得していた。


 ちなみに某狩ゲーは、レンの言う通り、ただ突っ込んだだけでは返り討ちに遭いやすい。


 相手モンスターの行動を把握し、ひとつひとつの行動の隙を狙って攻撃を叩きこむというのが基本的な流れである。


 中には完全なターン制バトルになってしまうモンスターもいれば、盲目状態にさせればあとはタコ殴りにできるというモンスターもいるし、盲目状態にすると大暴れし始めて、かえって危険というモンスターもいるため、モンスターの行動を把握すると同時に、そのモンスターを理解することも重要となる。


 つまり情報収集こそが勝利の鍵となる。


 その某狩ゲー同様に今回の「武闘大会」でも対戦相手の情報を知ることは重要となるが、その相手がランダムで選ばれるとなると、ほぼすべての試合を網羅しておくということになる。特にタマモにとっては、自由にスキルをセットできるという能力のあるタマモにとっては、相手クランの情報収集は最重要と言ってもいいことだった。


(なるほど、ならたしかに他のクランが話し合いを始めるのも当然なのです)


 幸いなことにクラン部門であれば、試合時間までなら他のクランの試合を手分けして観戦していることも可能だった。


 もし試合時間が重なった試合があったとしても、他のクランに、友好的なクランに情報収集を依頼するということも可能だろう。


「……これってお金を稼ぐ方法にもなりますね」


「ああ、たしかに。ほかのクランの依頼を受けて、情報収集に徹してほしいクランの情報を売るっていうのもありか」


「むしろ、それを想定しているのかもしれないね」


 タマモの言葉にヒナギクとレンはそれぞれに考え込む。


 やりようによってはビジネスチャンスともなりえる。


 優勝賞金の100万シルとまではいかないかもしれないが、ほぼすべての試合を網羅できれば、100万シル近くを稼ぐことも可能かもしれない。


 もっとも競合相手が存在するだろうから、荒稼ぎするというのはなかなかに難しいかもしれないが、ある程度であれば稼ぐことは可能だろう。


 そのことに気付いたクランもいくつかあるようだ。実際タマモの耳には「優勝を狙うか、小金を稼ぎに行くか」での話し合いの内容が聞こえてくる。


(倍率高めの大金狙いか、競合相手が多いけれど確実性のある小金狙いのどちらを重視するかで立ち回りは変わってきますもんねぇ)


 中にはこれを機に情報収集をメインとするクランも現れてきそうだが、その収集した情報はいずれ自分たちにも活用できるようになるとなれば、悪くない選択肢だとタマモも思う。


 実際そういう風に方向転換をしたクランもちらほらといるようだった。


「これはこれでお祭りって感じですね」


「だねぇ」


「まぁ、俺たちの場合は本戦出場が目標だから、やることは変わらないけどね」


「フィオーレ」の場合は話し合いするまでもなく、方針は決まっていた。目指すは本戦出場だった。そのためにも情報収集でも頑張ろうと思うタマモだった。


 そうして他のクランたちも方針が決定しだしたころ、予選の第一試合は始まったのだった。

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