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4話 タマモの不安

「これより予選を開始します。参加プレイヤーは予選会場への移動をお願いします」


 ワールドアナウンスに従い、移動を始めたプレイヤーたちの後をタマモたち「フィオーレ」は着いて行く。雰囲気からして観戦するプレイヤーには見えない。


 誰も彼も実に見映えするEKを装備していた。たとえば武骨な大剣であったり、使い込まれた槍であったり、鈍い光を放つ盾であったり、と様々な形状のEKを出場するだろうプレイヤーたちは誰もが装備していた。


(むぅ~、カッコいいのですよ)


 誰もがまさに「これが俺の自慢の武器だ!」と言うかのようにそれぞれのEKを見せていた。


 隣を歩くレンとヒナギクもそれぞれに長剣と杖を身に付けていた。


「……おふたりに裏切られた気分なのです」


「え?」


「なんのこと?」


 思わず呟いた言葉にヒナギクとレンが反応していた。


 いきなり裏切られたと言われても、言われたヒナギクとレンにとってみれば、なんのことだというところ。 


 しかしタマモにとっては、ふたりに裏切られてしまったようなものである。もっとも莉亜という前例もあるため、ふたりを「裏切り者」と呼ぶつもりはタマモにはない。


ただふたりのEKはそれぞれにカッコいいのである。


 レンのEKは件のベータテスターたちを倒したときにも見た、黒い稲妻を纏った長剣。直に見るのは初めてだが、鞘には稲妻のような紋様が刻まれていて、実に厨二っぽくてカッコいい。レンにぴったりなEKだと改めて思える。


 ヒナギクのEKはやや長めの杖だった。殴打用にも使えそうなものであるが、その見た目はとても艶やかな黒で染まっていた。若干怖いなとタマモはなぜか思った。


「レンさんのもヒナギクさんのも迫力がありますよねぇ」


 とにかくふたりのEKはそれぞれにカッコよかった。実に羨ましいと思うタマモ。


「ぁ~」


「まぁ、タマちゃんのは特殊枠だから」


 あはは、と苦笑いするヒナギクとレン。そんなふたりの言葉に肩を落とすタマモ。そこに追い討ちを掛けるように、タマモたちの後ろにいたプレイヤーたちの声が聞こえてくる。


「あの狐っ子が背負っているのはEK、だよな?」


「そう、でしょう。たぶん」


「……俺の目がおかしいのかな?」


「うん。私の目もおかしいみたい。どう見てもフライパンとおたまだよね?」


「……えっと、EKって調理器具だったっけ?」


「いや、普通に武器だよ?」


「だよな?」


「うん」


 実に耳が痛い。いや、痛いを通り越してもはや悲惨である。


 乾いた笑い声をあげそうになるタマモ。しかしいまそんなことをすれば、視線が自身に集中すると思い、とっさのところで堪えた。


 そんなタマモを見ていられず、視線をそらしてしまうヒナギクとレン。ことEKに関してはタマモになにも言えないヒナギクとレン。それはいままでもそしてこれからも変わりそうにない。 


「……えっと、そう言えば予選ってどんなことをするんだっけ?」


「……たしかバトルロイヤルだったかな? 個人部門もクラン部門でも予選はバトルロイヤル形式で戦って、2回勝ち残れば本戦出場だったはず」


 EKの話題から話をそらすべく予選の形式について話し始めるヒナギクとレン。


 あえてEKの話題については触れないようにしてくれていることに感謝しつつ、タマモもまたふたりの話に参加することにした。


「バトルロイヤル形式となると、ボクが集中放火されそうなのです」


「う~ん。数によるかなぁ?」


「そうだね、数次第だと思うよ?」


「そうですかね?」


 どう考えても今回の「武闘大会」において、レベルという意味合いで最弱なのは自分だろうと思うタマモ。


 となれば集中放火を受けるのは間違いない。


 むしろ集中放火を受けない理由がないのである。


「武闘大会」のクラン部門では、クランのリーダーが戦闘不能扱いされるか、場外に落ちたらその時点で敗北する。


 もちろんクランのメンバー全員が戦闘不能ないし場外に落ちても敗けである。


 よってリーダーを狙うか、メンバー全員を倒すかというクランによって戦略が大きく変わる。


「フィオーレ」の場合はリーダーであるタマモが場外に落とされるか、倒されれば負けになるため、当然ほかのクランの第一目標になるのは目に見えていた。


 しかしヒナギクもレンも大して気にしていない様子だった。タマモにはふたりの様子が不思議でならない。


「まぁ、勝ちようはあるさ」


「そうそう。気にしなくてもいいよ」


 ヒナギクもレンも笑っている。いったいふたりの自信の源はどこにあるのだろう。そう思いながら、タマモはヒナギクとレンに挟まれる形でプレイヤーたちの移動に着いていき、そして予選会場である金網に覆われた舞台へとたどり着いたのだった。

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