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1話 闘技場に到着

 一日延期しましたが、今日から第三章を開始します。

 

 参加表明をした瞬間、タマモたち「フィオーレ」は一瞬のうちに「闘技場」へと──「闘技場」の入り口前にと移動していた。


「──うわぁ、やっぱり一瞬で移動するんだなぁ」


 レンがあたりを見回していた。ヒナギクも口にしてはいないが、不思議そうな顔をしている。


 タマモにはふたりほどの新鮮さはない。一回目の時点で驚けるだけ驚いていたからだ。


 というよりも、タマモにはふたりがなぜ驚いているのかがわからない。


「レンさんもヒナギクさんもあのとき移動していたはずだったんですけど」


 そう、あのとき──件のベータテストふたり組との決闘の際に、レンもヒナギクも移動していたはずだった。


 だからふたりもこれが二回目であるはずなのに、なぜそんなに驚くのだろうか。


 タマモは首を傾げていた。そんなタマモにふたりは苦笑いしながら答えた。


「えっと、それがその」


「頭に血が上りすぎていて、よく憶えていないんだよねぇ」


 あははは、と苦笑いするレンとヒナギク。


 それだけ、ふたりにとってタマモに絡んでいたあの二人組の蛮行は許しがたいものだったということ。


 それほどタマモを仲間として大切に想っていてくれたということだった。


 ふたりの想いを受けて若干涙目になるタマモだった。


「あー、ほらほら、泣くなよ、タマちゃん」


「ぅ~、泣いてなんかないです」


「あー、レンがタマちゃん泣かしたぁ」


「お、おい、ヒナギク! なにを言っているんだよ!?」


 涙目になったタマモを、レンは目線の合う高さまで屈んで頭を撫でていた。


 傍から見ると兄妹もしくは親子のようにも見える光景であった。

 そこに茶々を入れるヒナギクはさながら意地悪な姉か、夫と娘のやりとりを見守る妻というところ。


 一部のプレイヤーたちにとっては「爆発しろ」と言いたくなるような光景だろう。


 実際に同じように「闘技場」へと移動してきたプレイヤーたちの一部は血の涙を流しながら、タマモたちのやり取りを見ていた。主にレンへの嫉妬の視線が激しかったのは言うまでもない。


 ただその嫉妬がどういう意味でのものなのかは一考の余地があるのだが。


 どちらにしろ、このままでは醜聞になりかねない。


 レンはタマモを小脇に抱え、ヒナギクの手を掴むと、そそくさとその場──「闘技場」の入り口前から離れ、「闘技場」の内部へと入って行った。


 ちなみに余談になるが、小脇に抱えられたタマモの、丈の短い袴の中身は、まるで意思を持っているかのように三本の尻尾がひとりでに動きガードしていた。


 あわよくば、と考えていた一部のプレイヤーは歯ぎしりしながら血の涙を流していたことを記しておく。


 もっとも尻尾がガードしていなかったとしても、良い子も遊べる「エターナルカイザーオンライン」において、そういうラッキーは、徹底的にプロテクトされているため、どのみち袴の中身を見ることは叶わなかった。


 それは一部のプレイヤーも理解していた。理解しているが、それでもわずかな「もしかしたら」という可能性に懸けていたのだ。


 しかしその可能性はあっさりと裏切られてしまう。


 期待を裏切られたことへの悲しみと美幼女なタマモに触れられることへの憤り。


 そのふたつの感情によって一部のプレイヤーこと隠れていた「紳士」たちは血の涙を流していた。


 だが、新たに血の涙を流しているプレイヤーが隠れ「紳士」であることを、同じクランのプレイヤーは軒並み気付き、今後もクランのメンバーないしフレンドとして付き合っていくかどうかをひそかに考えるようになったのもまた余談である。


 理解を示そうと努力するプレイヤーもいるようだが、GMコールをしようとする女性プレイヤーを必死に止めるプレイヤーもいた。


 そんなある意味カオスな状況を知らず知らずのうちに起こしてしまったタマモはというと──。


「れ、レンさん! 速い、速いですよぉ!?」


 ──疾走するレンに抱えられ、再び涙目になっていた。


 レンに手を掴まれたヒナギクはため息を吐いていただけだったが、当のレンは止まるとこなく「闘技場」の内部を駆け抜けていた。


 とにかく自身に起こり得たハプニングを防いでいたことに気づかないまま、タマモはレンの小脇に抱えられながら、「闘技場」の内部を爆走したのだった。

 「紳士」はどこにでもいると思うのです。むしろどこにでもいるからこその「紳士」とも←

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