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58話 ふたたびの終わり

少し短めです

 日が翳りつつあった。


 盛大に行われていた「お花見祭り」も終わりの時間が訪れた。


『──以上をもちまして、「お花見祭り」を終了とさせていただきます』


 運営からのワールドアナウンスが響く中、タマモたちが集った第36サーバーもまた粛々と祭りの終焉を──。


「料理コンテスト優勝は、タマモさん率いる「フィオーレ」連合チームです!」


 ──受け入れていたわけではなかった。


 他のサーバーでは粛々と終焉を受け入れているプレイヤーばかりな中、第36サーバーだけは熱狂に包まれていたのだ。


 その熱狂の理由は、にゃん公望が発案した料理コンテストの結果発表だった。


 発案者であるにゃん公望と、検証調理班の面々が組んだ「フィオーレ」連合チームがやはりというか、当然のように優勝を掴んだのである。


 みずから屋台を出す料理人系プレイヤーや、リアルでも調理を嗜むプレイヤーがチームを組んで参加していたものの、さすがにタマモたち連合チームには及ばなかったようである。


 とはいえ、それも無理からぬ話。


 タマモたち連合チームは、タマモを始めとして、全プレイヤー中でも有数の料理人が集った、いわばドリームチームだった。


 そのドリームチームを相手取って、優勝を掴めるチームが他にいるわけもなかった。


 可能性があるとすれば、おやっさん一家チームくらいだろう。


 が、当のおやっさんが不参加、いや、タマモたち連合チームに屋台を貸し出している以上、ドリームチームに土を着けられるチームは他に存在していなかったのだ。


 ゆえに、今回の料理コンテストの結果は、妥当としか言いようがない。


 妥当ではあるものの、当のタマモたちはガチで「調理」を行っている。


 当然、他のチームとて手を抜いていたわけではない。


 参加者は全員真剣に「調理」を行った。結果はドリームチームの優勝となったが、当のドリームチームの所属者たちはもちろん、他の参加者たちもそれぞれの健闘をたたえるべく拍手を送り合っていた。


 なお、全チームが作り上げた魚料理の数々は、大半が第36サーバーのプレイヤーたちの胃の中に消えていた。


 そう、すべてではなく、あくまでも大半である。その大半から逃れた料理は希望者がそれぞれにお土産としてインベントリに収められている。


 第36サーバーに集ったプレイヤーひとりにつき一品ずつ分けることができていた。


 それはタマモたちドリームチームの料理も同じである。


 ほとんどのプレイヤーが希望するチームの料理からお土産を選ぶことができた。


 さすがに全員が全員、希望するチームの料理を選べたわけではない。


 しかし、全チームの料理はすべてが美味しいそうな一品ばかりである。


 多少の不満はあるだろうが、今日という日の記念品ということもあり、はぶれたプレイヤーたちも不満には目をつぶったのだ。


 なお、料理コンテストの判定方法は、ランダムで選出されたプレイヤー10人によって、それぞれのチームの料理を食べ比べてという方式を取られていた。


 判定者には、タマモたちチームの中から、レンが選出され、レンは緊張した面持ちで全チームの料理を食べて判定をした。


 そうして10人の判定者たちによる判定の結果、タマモたちは優勝を掴んだのだ。


「残念ながら、今回の料理コンテストはあくまでも非公式かついわゆるお遊び企画であるため、賞金も賞品もありません。ですが、記録には残らずとも記憶には残る結果にはなったと思います」


 実況役に選ばれたプレイヤーのひとりが淡々と実況をこなしていく。


 素人ながらに、見事な実況とコンテストへのコメントに参加者のみならず、観客となっていたプレイヤーたちが黙って実況のコメントに耳を傾けていた。


「今後もこのような機会があれば、同じメンバーで、同じようにお祭り騒ぎができれば幸いです。最後に参加者の皆様の健闘をたたえる拍手をお願いいたします」


 そう言って締めの一言を告げる実況。その言葉に第36サーバーのプレイヤーたちは皆一様に拍手を送り合う。


 和やかにかつ、穏やかな料理コンテストの閉会式は進行していった。


 それも「お花見祭り」の終了とともに、終わりを告げる。


 ひとりまたひとりと強制ログアウトが行われていく。


 やがて、第36サーバーのプレイヤーは全員ひとりの例外を除いて、強制ログアウトとなったのだ。


 そう、例外を、タマモという例外を除いて。


「終わったみたいどすなぁ、旦那様」


 全員が強制ログアウトされる中、タマモも他の面々に合わせて強制ログアウトされたように振る舞っていた。


 そんなタマモの元に、いままで別行動をしていたエリセがふらりと現れたのだ。


「うん、お待たせ、エリセ」


「いいえ、お気になさらんと」


 くすくすと笑いながらエリセは、寝転んだタマモに手を差し伸べる。


 タマモは差し伸べられた手を取った。


「ほな、参りまひょ」


 エリセが再び笑った。


 その言葉に「うん」とだけ頷くと、タマモはエリセと手を繋いで、ヒナギクやレンたちが眠る場所から離れ──。


「あ、旦那様」


 ──初日の「フィオーレ」用の席でひとり腰を下ろしていたアンリの元へと向かったのだった。

https://kakuyomu.jp/works/16818093080456940494

今夜零時に13話更新となります。よろしくお願いします

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