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56話 検証と釣り大会

2日間更新できず、すみません←汗

両日ともに寝落ちしていました←汗

「取得経験値極減」と「取得経験値上昇極」──。


 字面の時点で相反する効果のあるふたつのスキル。


 普通に考えれば、相反する効果同士なのだから、相殺ないし、どちらかの効果を完全に無効するということになるはずだった。


 だが、このふたつのスキルにはまさかのリンク効果があった。


 それもそれぞれのスキルに別種の効果のだ。


 リンク効果があるスキルと言われれば、たしかにそれぞれに別種の効果が乗ることも多い。


 たとえば、あるモンスターから得られる特徴的な左右の腕をそれぞれ加工して、剣と盾を作り、同時装備したら、それぞれの攻撃力と回避力が2倍になるなど。


 もしくは同名のメイン武器とサブ武器を同時装備したら、それぞれの武器の基本能力が上昇するなど。


 リンク効果ないしセット効果という名称で、ゲームにはつきものの能力である。


 そのリンク効果が「取得経験値極減」と「取得経験値上昇極」にも存在していた。


 そしてそれぞれの効果はまさに破格と言ってもいい内容であった。


「上昇」は「極限」効果外の行動と同種の行動時において、「上昇」の効果の反映。


「極限」は「上昇」の効果を倍加せる。


「極限」のリンク効果は「上昇」の効果の倍、つまり10倍になるというわかりやすいもの。


 が、「上昇」のリンク効果は文面だけでは、少しわかりづらい。


 わかりづらいが、いままでの「極減」の効果範囲の緩和が「上昇」のリンク効果だった。


 いままで「極減」は「調理」以外の経験値はすべて強制的に1とする悪夢のパッシブスキルであった。


 が、「上昇」を取得したことで「調理」以外から、「調理」と同種の行動以外という緩和を受けたのである。


 そう、「調理」と同種の行動、つまり生産行動においてタマモは経験値を常時10倍得られるということになったのだ。


 反面、相変わらず戦闘後の取得経験値は強制的に1となってしまうものの、生産行動を行うたびに、他のプレイヤーの10倍の経験値を取得できるというのはまさに破格である。


 加えて、タマモはもともと生産行動がメインであるため、生産行動だけが経験値10倍となっても、縛りにもなっていない。


 むしろ、縛りどころか、完全に恩恵を受けることになったのだ。


 とはいえ、リンク効果の文面を信じればの話。


「もしかしたら騙すつもりなのかもしれない」とタマモは呟いた。


 さすがに虚偽の文面を表示させるのは、いろいろと問題ではあるものの、「ここの運営ならやりかねない」という虚偽を抱いてしまうのも無理からぬ話である。


 それはタマモだけではなく、他のプレイヤーたちも共通した認識であった。


 特に生産職の面々は、タマモと想いを同じにしていた。


 いままでの生産職の扱いを踏まえれば、虚偽の目を向けてしまうのもある意味当然である。


 最初期は「生産職ならぬ凄惨職」と言われていたほどだったのだ。


 いまだに生産に対するハードルは高めではあるものの、きっちりとシステムを理解し、システム通りに行動を行えば、得るものはたしかにあるのだ。


 ただ、システムを把握していなかった頃の、まさに黎明期は阿鼻叫喚であったことを踏まえると、いきなり恩恵、いや、福音ともいうべき効果を目の当たりにしても「また騙すつもりか?」という疑いを抱いてしまうのも当然と言えば当然だった。


 戦闘メインのプレイヤーは、生産職ほどではないものの、わかりづらいシステムに四苦八苦した憶えが大なり小なりあるため、タマモたちの意見に同意まではできないものの、虚偽の目を向けてしまうのも理解することはできていた。


 となれば、だ。


 いまだお祭りの真っ最中ではあるものの、リンク効果の文面が正しいかどうかの確認をしようという流れになるのは決しておかしなことではなかった。


 むしろ、当然といっていい。


 つまりは、再びの検証が始まったのだ。


 それも、今回は「調理」ではなく、「調理」以外の生産行動についての検証だった。


 その検証とは──。


「お、引いているにゃよ!」


「タマモさん、しっかりっす!」


「はい、任せてください、これで──フィッッッッーシュ!」


「「「「「「おおぉー!」」」」」


 ──「釣り」であった。


 というのも、お祭り会場内、それも会場の端の方にそこそこ大きめの池があったのだ。


 その池にはパンフィッシュを始めとした様々な魚が棲息していた。


 そう、「釣り」の対象であるパンフィッシュを始めとした、食用に向いた魚たちがだ。


 つまり、その池では「釣り」が行えるということだった。


 なぜお祭り会場の一角で「釣り」のポイントがあるのか。


 それも食用に向いた魚たちばかりなのか。


 運営からの答えは期待できないものの、渡りに船という状況であることには変わらない。


 となれば、あとは話は早い。


 タマモはにゃん公望と七海を始めとした「漁師」たちに手伝って貰いながら、「釣り」を始めたのである。


 だが、タマモが延々と魚を釣るだけなのは、江面としてはかなり微妙というか、かなり地味であった。


 が、そこは悪知恵働くにゃん公望だ。


「どうせなら、みんなも「釣り」をしてみるにゃよ。経験者はもちろん勝手に釣ればいいし、興味がある人は「漁師」の面々で教えてあげるにゃよ」


 ここぞとばかりに「釣り」を推したのだ。


 現在「漁師」の数はそこまで多くないし、「釣り」スキル持ちもそこまで多くはない。


 だが、魚系食材の需要はそれなりにある。


 現在の「漁師」たちだけで賄うことはできないほどに。


 となればだ。


 この状況を利用しない手はないとばかりに、にゃん公望は「釣り」を大々的に推したのである。


 とはいえ、「釣り」を推したところで、道具がなければどうしようもないが、木工職人である木蓮たちを巻きこみ、初心者用の竿を量産してもらうことにしたのである。


 幸いなことに初心者用の竿は、「木工」の初期レベルでも作れるほどに簡単である。


 そして木蓮は木工職人におけるトッププレイヤーである。


 初心者用の釣り竿を仕立て上げることなど秒でできてしまう。


 他の木工職人も、木蓮ほどではなくても、かなりの速度で釣り竿を量産することができた。


 材料の木材は丸太ひとつで数十人分となる。それも初心者用の釣り竿であれば、これと言って貴重な木材も必要ではない。


 池周辺に生えていた雑木でもなんの問題もなかった。


 ただし、初心者用の釣り竿に付与されるのは、「釣り」スキルだけであるが、触れるだけであれば、それでなんの問題もなかった。


 かくして、にゃん公望主導の元で、釣り教室が開催されることとなった。


 ボーナスポイントを支払って「釣り」スキルを取得しろというのではなく、「釣り」スキルが付与されている釣り竿を使うだけ。


 その代金も300シルという良心価格だった。


 手取り足取り教えて貰えるうえに、300シルというお小遣いレベルの代償という状況は、日和見だった「釣り」スキル非所持プレイヤーたちの心を動かすには十分だった。


 加えて──。


「来ましたよぉぉぉぉぉ!」


 ──楽しげに「釣り」を満喫するタマモを見ていたら、「ちょっとやってみようかな」と思うプレイヤーは多かったようだ。


 次から次へと初心用の釣り竿が売れていき、にゃん公望たちによる初心者教室は大盛況となったのだ。

 

 中にはタマモと同じく経験者もおり、経験者たちはみんな初心者コーナーから離れて、黙々と「釣り」を行っていた。


 が、そこでもにゃん公望が悪知恵を働かせたのだ。


「どうせなら、釣り大会でもしようにゃ~。まぁ、賞金も賞品もないお遊びだけど、ただ釣るだけよりもいいんじゃにゃい?」


 と言ったのである。


 そこから先は話はとんとん拍子で進み、またもや木蓮が釣果を張り出すボードを作りだし、その釣果ボードにそれまでの釣果が次々に書き込まれていった。


 そんなわけで、現在の池の周囲は釣り大会と初心者用釣り教室を併行するという、ある意味カオスな状況と化していた。


 そんなカオスな状況下において、タマモは釣果ボードにおいて、最高の記録をたたき出していた。


 釣果ボードの記録では、釣った数、種類、大きさなどが記されているが、そのすべてでタマモはトップを独走していた。


 現在タマモはトータル30尾、15種類、60センチオーバーと三冠達成秒読み段階である。


 そんなタマモに追従するのは、「素封家」のマスターであるシーマ、「ブレイズソウル」のアントニオと「紅華」のステラであった。


 3人はそれぞれに数、種類、大きさでタマモの二番手であり、タマモの先行を許している。


 が、「このままでは終われない」とばかりに静かな闘志を燃やしていた。


 闘志を燃やすのは3人だけではなく、密かに「釣り」スキルを所持するプレイヤーたちも同じである。


 釣り大会は静かにだが、白熱した状況へと変化していった。


「くっそ! またタマモちゃんに負けちまう!」


 そんな釣り大会には初心者教室を終えたプレイヤーも参加していた。


 初心者教室を卒業したプレイヤーであるバルドは、トップを独走するタマモに歯噛みしていた。


 が、どれだけ歯噛みしたところで、こればかりはどうしようもないことであった。


 いまもタマモが釣り上げた魚が宙を舞うのを見て、ひとり悔しそうに顔を歪めるバルド。


 その隣でガルドはどっしりと腰を下ろして釣り竿を構えていた。


「がははは、そう張り合うな、バルド。こと「釣り」においてはいまは嬢ちゃんにアドバンテージがあるんだからよぉ」


 見た目だけで言えば、ガルドは歴戦の釣り人のような雰囲気をかもちだしている。


 が、その釣果はバルドともども散々である。


「だからといって、負けたままんじゃ悔しいじゃねえか」


「だから、いまはって言っただろう? 今日始めたばかりの俺たちじゃ前々から「釣り」に勤しんでいた嬢ちゃんに勝てるわけがねえ。だが、今後は違う」


「はっ!?」


「そうよ。今後の勝ちのためにいまは徹底的な情報収集をだな」


「うるさいっての、ガルドもバルドも! あんたらが大声出すから魚が逃げるんだよぉ!」


 そのガルドの隣ではローズが血走った目で叫んでいた。


 3人ともにゃん公望の初心者教室を同時に卒業した動機であり、全員が釣り大会に参加しているが、その釣果は仲良くボウズであった。


「なに言ってんだよ、姉貴が叫ぶからだろうが!?」


「はぁぁぁぁ!? あんたらが大声出すからでしょう!?」


「あー、もううるせえなぁ、おまえらはよぉ!」


 バルドにしたり顔で語っていたガルドも、ついにはローズの剣幕の前に叫び始める。


 なんだかんだで釣果なしは3人の心をこれでもかと抉っていたのだろう。


 3人はそれぞれのせいだという罵り合いを行い、そのたびに3人の周囲からは魚が去って行った。


 そのことに気づくことなく、3人はただ釣り糸を垂らし続けることとなる。


 その後、釣り教室の終了とともに釣り大会も終わりを告げた。


 結果はタマモが見事に三冠達成し、同時にレベルをまたひとつあげ、レベル27になった。


 これにより、生産行動時においても経験値は常時10倍が事実であると実証されることなったのだ。


 なお、バルト、ガルド、ローズの3人は仲良くボウズ、釣り大会において最下位という不名誉な記録を得ることとなったのだった。

タマモ レベル27


HP 6704


MP 6704


STR 53


VIT 53


DEX 53


AGI 62


INT 50


MEN 50


LUC 32

 

以上タマちゃんのレベル27時のステータスとなります。

……うん、やっぱり化け物化しているな←汗

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