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Ex-4 暗号読解

 第二章の特別編です。

 とあるファーマーさん視点となります。

 とてとてと夕暮れの街中を走る影があった。


 本人としてはまじめに走っているつもりだが、背中をやや反らして駆ける姿はシュールであり、道行くプレイヤーたちはその姿を見てくすりと笑っていた。

 

 しかし重ねて言うが、本人としてはまじめに走っている。


 ただ見た目も相まって笑ってしまうのだ。


 その影の持ち主は某スナック菓子のキャラクターを彷彿させる恰幅のいい体型に、細目、そして口を円形に覆う黒い髭という、誰がどう見ても狙っているとしか思えない外見をしていた。


 そのうえ、職業はファーマーなのだから、完全にあのキャラクターをモチーフにしているとしか思えない。


 そう、彼の名はデント。タマモたち「フィオーレ」と懇意にしているファーマーであり、生産板における「通りすがりのファーマー」その人だった。 


 そのデントはいま本人的には疾走しながら、「アルト」の街中を駆け抜けていた。


「えっと、今日は」 


 疾走しながら掲示板を確認するデント。つい少し前に掲示板で、タマモから絹糸を預かったことを載せたので、そろそろ反応がある頃だろうと思ったのだ。そしてその予想は当たっていた。


(「天元は聳えて、くるくるとドリルのように回る」、かぁ。相変わらず意味わからんなぁ)


 レスの内容は「天元は聳えて、くるくるとドリルのように回る」だった。


 それだけを見ると、話の通じない人か、ポエマーかなにかかと思うことではあるが、投稿者の名前を見ると、納得するしかない。あぁ、今日はそこなのかと。不思議なレスの投稿者の名前は「通りすがりの紡績職人」だった。


(天元、天元なぁ。ドリルアニメのタイトルがそうだったけど、あれってどういう意味だったかな?)


 とことんドリルにこだわった、某立ち姿を披露させるあのアニメのタイトルにも「天元」という言葉はあった。


 だが、当時はどういう意味だったのかを知らず、調べた記憶があった。そう記憶はある。だが内容を、調べた意味を覚えていないデント。


(そもそも天元なんて普通使わんもんなぁ) 


 実生活で「天元」は使われないし、例のアニメが放送されるまでは見たこともなかった。ゆえにデントは意味を知らなかった。


(ん~。まぁ、後ろの内容で考えるかぁ)


「天元」についてはとりあえず放置して、後ろの言葉からみちびきだすことにした。


(「聳える」ってことは高い建物ってことだよなぁ。「くるくるとドリルのように回る」は、なんでドリルなんだぁ?)


「天元」にしろ、「ドリル」にしろ、あのアニメを彷彿させる内容であった。「通りすがりの紡績職人」もおそらくはあれをモチーフにしたのだろう。それがヒントなのか、もしくはただの趣味だったからなのかは判断がつかないデント。


(ドリル。ドリルなぁ。……たしか「二重螺旋を~」ってセリフあったなぁ)


「あ、そういうことか」


 聳え立つような高い建物で、ドリルのようにくるくると回る螺旋状ないしは、螺旋状のなにかがあるもの。


「「時計塔」かぁ」


「アルト」の街の名物である「時計塔」──。


「通りすがりの紡績職人」が指定しているのは、「時計塔」だろうと踏んだデント。進路を街の中央にある「時計塔」へと向けた。


「あ~、そう言えば「天元」って中央って意味だったなぁ」


 いまさらなことだが、意味をようやく思い出せた。正確な意味は少し異なっていたが、おおむね中央という意味で合っていたはずだった。


「とりあえず行くかぁ」


 とてとてと走りながらデントは「時計塔」へと向かった。


(そう言えば、「時計塔」のどこだろう?)


「天元に聳え、くるくるとドリルのように回る」では、具体的な場所を、「時計塔」のどこを指定しているのかはわからない。


(たぶん屋上かね)


 ドリルのように回るとわざわざヒントのようなものを出したのは、単純にヒントではなく場所の指定なのだろう。となれば螺旋階段の中腹にはいないだろう。いるとすれば螺旋階段の頂上、すなわち屋上だろう。


 天元に聳え、というのは「時計塔」自身を指しつつ、その頂上をも指しているのだろう。ドリルは螺旋階段と二重ということを意味しているのだろうとデントは踏んだ。


(姐さんの暗号は本当に頭を使うなぁ)


 やれやれとため息を吐きつつ、デントは「時計塔」へと向かった。

 暗号読解に苦労するデントさんでした。

 次回は姐さんこと「通りすがりの紡績職人」さんが出ます、たぶん←

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