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47話 「フィオーレ」参戦

「うんうん。三人ともよく似合っているなぁ」


 デントがインベントリから取り出した「通りすがりの紡績職人」からの贈り物。その贈り物をタマモたちはそれぞれに身に着けていた。


「なんか、ちょっと恥ずかしいね、これ」


 あははは、と照れくさそうに笑うヒナギク。いままでのヒナギクは初期装備のインナーの上に皮製胸当てを身に着けていたが、いまは白を基調に、随所にほんのりと黄色のアクセントをほどこしたシャツとパンツルックになっていた。あえてドレスではなく、パンツルックなのはヒナギクの戦闘スタイルを考慮してというのは明らかだった。特にヒナギクの両手はハーフフィンガーグローブで覆われている。拳の保護であれば、拳全面を覆うべきだろうが、本来の後衛としての役割を踏まえると、拳全面をグローブで覆わないようにしているのだろう。もしくは「通りすがりの紡績職人」の遊び心が少し含まれているようだ。


「いやいや、なかなかセンスいいよ、これ」


 ヒナギクとは相反して、レンはご満悦な顔をしていた。ヒナギク同様にいままでのレンは初期装備のインナーの上にやはり皮製の胸当てを装備していただけだった。いまはやはりヒナギク同様に白を基調にしつつも、随所に淡い紫色のアクセントが入ったジャケットとデニム姿になっていた。よく見るとジャケットとデニムの裾はまるで炎のような模様が入っており、厨二病をり患しているレン好みの見た目をしていた。これもやはり「通りすがりの紡績職人」の遊び心が存分に反映されているようだった。


「姐さん、間に合わないと言っていたのに」


 タマモは若干涙ぐんだ様子でみずからの装備を見つめていた。タマモの装備はいままではヒナギクとレンと同様にインナーの上に皮製の胸当てだった。だがいまのタマモはすっかりと様変わりしていた。それもヒナギクとレンとは趣が異なって和装だった。具体的に言えば、白い小袖に緋色の袴姿だった。足はちゃんと真っ白の足袋に包まれている。ひと言で言えば巫女装束をタマモは身に着けていた。それもご丁寧なことに三本あるふさふさの尻尾を通せるように、袴に尻尾用の穴が空いていた。ただ若干袴の丈がやや短いのは、「通りすがりの紡績職人」の趣味が反映されているであろうことは間違いない。


「あ、そうだ。タマモちゃんにはあとこれがあったんだ」


 ぽんと手を叩きながら慌ててデントがインベントリから取り出したのは、青い羽織だった。青いと言ってもそこまで濃い青ではなく、どちらかという水色に近い薄い青の羽織だった。


「袴の丈が思っていたよりも短くなったお詫びだって言っていたよ」


「別に気にしなくてもよかったんですけど」


「ん~、姐さん曰く、「私が気にするから」ということだったよ」


 デントが取り出してくれた羽織を受け取り、巫女装束の上から文字通り羽織るタマモ。紅白の巫女装束に青の羽織というのはあまり見かけないものだが、青い羽織にしたのは、おそらくはタマモ自身の名前を踏まえてなのだろうとタマモは思った。


 実際ヒナギクとレンの服はそれぞれの名前に合せて、それぞれの花の色に合わせたものだった。ただタマモだけは巫女装束では具合が悪いと思ったのだろう。だからこそ色合いと言う問題をあえて無視して、「通りすがりの紡績職人」は青の羽織を追加で用意してくれたのだろう。


「通りすがりの紡績職人」が用意してくれた青の羽織をしっかりと握り絞めながら、タマモは胸の奥が温かくなるのを感じていた。


「これで姐さんからの贈り物は全部だ。姐さんの心尽くしで精いっぱい頑張ってくんな」


 デントは人のよさそうな顔で満面の笑みを浮かべていた。その笑顔と言葉にタマモたちはそれぞれに頷いた。そしてほぼ同時にワールドアナウンスが聞こえてきた。


「時間となりましたので、これより第一回イベント「武闘大会」の開催を宣言致します。事前にお知らせしていた通り、参加と観戦かをお選びください」


 ワールドアナウンスの通りに、目の前に参加か観戦かを選ぶダイアログが表示された。タマモはヒナギクとレンを見やる。ふたりは力強く頷いていた。


「目標は本戦出場です!」


「いままでの特訓を武器に!」


「チームワークで乗り切ろう!」


「「「「フィオーレ」参戦!」」」


 あらかじめ決めていた合言葉をそれぞれに口にして、タマモたち「フィオーレ」は「武闘大会」への参加を表明したのだった。

 これにて第二章の本編は終了です。次回より特別編です。

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