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7話 覚悟を決めるとき

 本日四話目です。

 サブタイが悲壮感溢れますけど、前話の内容の続きですので、まぁ、お察しというか←顔を反らす

「はぁぁぁぁぁーっ!? 意味がわからないんですけどぉぉぉぉぉー!?」


 タマモは宿屋の部屋の中で心の底からの絶叫をあげていた。


 その手にあるのはURランクの引換券から手に入れた、最高ランクのEK。


 数あるEKの中でも最強のひとつ、のはずだった。


 しかしタマモが手にしたEKはおたまとフライパン。ただの調理器具だった。


 ステンレス製らしきぴかぴかと光るおたまにきらりと黒光りするフライパン。


 これがゲーム内でなければ、これから調理をするのだろうと思われるだろうが、残念ながらゲーム内である。


 そして引換券を使用してこのふたつが現れたということは、これがURランクのEKだということになる。タマモは絶望を感じた。


「い、いや、待つのです! もしかしたら見た目だけな可能性があるのですよ! か、「鑑定」スキルがあるはずです。えっと、あ、取得制ですか。えっと有効化して」


 ゲームによっては「鑑定」スキルがセットされていることもあるが、「EKO」はボーナスポイントで取得し、有効化することになっていた。


 ちなみに消費ポイントは1であり、レベルアップするごとに鑑定する項目が増えていく。


 初期の「鑑定」スキルでは大した情報は得られないが、背に腹は代えられないとタマモは「鑑定」スキルを取得し、そのまま有効化した。


 そうして有効化した「鑑定」で確認した結果──。


 名称 おたま ランク UR


 名称 フライパン ランク UR


 ──と出た。まだ「鑑定」のレベルが低すぎるため、知りたい情報はなにも出なかった。出るには出たが、この調理器具がURランクのEKだと確定したということだけだった。


「つ、使えねぇぇぇぇ!」


 タマモは頭を抱えながら叫んだ。知りたいことではあったのだ。そうたしかにこれがURランクのEKなのかという疑問に対しての答えにはなった。


 だが、知りたいのはその先のことである。なぜ調理器具がURランクという最高ランクになるのか。その理由をタマモは知りたかった。


 しかし開示された情報は 名称とランクだけ。


 これもすべては有効化してすぐの「鑑定」で調べたためではあるが、それでも説明くらいはよこせと思わずにはいられないタマモだった。


 そもそもの話、こういう最高ランクの武器というのは神器とか伝説の武器とか、見た目もちゃんとしていて説明文もカッコいい武器というのが相場だろう。


 なのにタマモが得たのはおたまとフライパンという、どのご家庭にもあるであろうお母さんの相棒たちである。


 このふたつを武器にしてこれからモンスターと戦い、フィールドを駆け抜けていくのかと思うと絶望感が半端ではなかった。


「り、リメイク! リメイクです! こんなのやっていられませんよ!」


 タマモは即座にリメイク──アバターの再作成を決めた。


「EKO」ではアカウントひとつにつき、アバターを三人まで使用できる。


 正確にはリメイクというよりも、別のアバターを作成になるが、広義的にリメイクということになっていた。


 そうしてリメイクしたアバターはそれぞれ別データという扱いになるため、手に入れたEKもそれぞれのアバターのものとなる。


 ただし初回ガチャが無料なのはひとり目のアバターだけであり、ふたり目からは初回から課金をしなければならなくなる。


 だが課金をしたとしても、調理器具を振るう勇者なんてなりたくもない。


 これが他プレイヤーであれば、まだ話のネタにはなる。


 だが自分から話のネタになるようなことをしようとはタマモは思わなかった。


「さっさとログアウトして、こんなふざけた状況からおさらばですよ!」


 リメイクするにはまずログアウトをする必要があった。タマモは当然のようにログアウトを選択しようとした。


『──またいつかさきほどまでのように抱っこされてくれればよいぞ?』


 不意に脳裏によみがえったアオイとのやりとりがタマモの手を止めた。


「……次にまた会えるのでしょうか?」


 タマモとしてはアオイのことは嫌いではなかった。


 むしろ優しくていい人で、至高の胸の持ち主で、超絶美人さんなタマモの理想の嫁像そのものだった。


 リメイクするのは実に簡単なことだった。


 ログアウトを選び、別のアバターを作成すればいいだけのことである。


 今度はタマモが望む容姿にすればいい。


 リアルの姿を少し変えただけのアバターではなく、タマモ自身が望む姿のアバターにすればいいのである。


 しかしそうしてアバターをリメイクしたとして、果たしてアオイはさきほどのように抱っこしながら頭を撫でてくれたり、立ち耳をくすぐるようにこすってくれたりしてくれるだろうか? そもそも次は獣人になるとも限らない。


「……耳こりこり、気持ちよかったのです」


 あの気持ちよさはなんとも言えなかった。


 猫や犬の気持ちが少しだけわかった気がしたものだ。


 そもそもアオイがああして抱っこしてくれたのは、タマモがいまの特別アバターだったこそである。


 この姿だからこそジャストフィットだった。しかし体型を弄ってもジャストフィットにはならないかもしれない。


 それ以前にリメイクしたアバターを、「タマモ」だとアオイは理解してくれるかもわからない。


 フレンドコールで説明をして、もう一度あの噴水広場で時間を決めて会えばわかってはくれるだろう。


 しかしアオイはこの特別アバターを「かわいい」と言ってくれたのだ。


 つまりアオイはかわいいものが好きなのだろう。いまのタマモだからこそかわいがってくれたのだ。リメイクしたアバターをかわいがってくれるとは限らない。


 それに見た目は調理器具だが、腐っても最高ランクのEKを手に入れたのだ。それを見ためが気に入らないからと言って、性能を確かめることもせずに使わないというのはあまりにも早計すぎる。


 せめて一度使ってみて、完全に産廃かどうかを確かめてからでも遅くはない。


 いや、最高ランクのEKが産廃なわけがない。なにかしらの理由があるはずだ。そう最高ランクのEKになった理由がこの武器にあるはずだった。


 そしてリメイクしても今回のように最高ランクと言わなくても、高レアランクのEKが手に入るかわからない。


 リアルラックがとんでもなく低い自覚がタマモにはある。


 もしリメイクしてもコモンランクのEKしか手に入らなかったら? 


 それも残りふたつのデータを使ってもコモンランクだけであったら、もう目も当てられない状況になる。


 なによりも、このアバターは特別アバターである。


 一万人目という記念に贈られたアバターをこの程度のことで手放していいのだろうか。


 最初は辛いが、最終的に最強となれる。まさに特別なアバターを武器の見た目がダサいというそれだけの理由で手放していいのだろうか。


「……うん。やっぱりリメイクはなしです」


 後ろ髪惹かれる想いではあるが、せっかくの特別なアバター、最高ランクのEK、そしてアオイという理想の嫁な友人。その三つがタマモを引き留めていた。


「できるかぎりこのアバターとこの子たちで頑張るのです!」


 そうしてタマモは覚悟を決めて、このアバターで「EKO」を楽しむことにしたのだった。

 タマモらしい不純な動機となりました←笑

 二日目終了です。

 続きは今夜十二時からの三日目となります。

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