16話 崩れ落ちるタマモ
サブタイで「壁にぶつかったのか」と思われるでしょうが、そういう意味ではないとだけ←
翌日、ログインをしていつものように畑に向かうと、憔悴したレンをタマモは見つけた。
「はぁ」
憔悴しながらも肩を落とすレン。そんなレンをヒナギクは苦笑いしながら見守っていた。
いったいなにがあったのだろうとタマモはヒナギクに声を掛けた。
「おはようございます、ヒナギクさん」
「おはよう、タマちゃん。ほら、レン。タマちゃん来たよ?」
「うん? ああ、おはよう、タマちゃん」
挨拶を交わすとレンはすぐにまたため息を吐いた。
なぜため息など吐くのかがタマモにはわからなかった。そんなタマモにヒナギクはおかしそうに笑って答えた。
「実はね、レンったら変わった「称号」を贈られちゃったんだよ」
「「称号」ですか?」
「うん。言ってもいいよね、レン?」
「……いまさらだからね」
再度ため息を吐くレン。ため息はとても重たい。
どうやらヒナギクの「鬼屠女」のような不名誉な「称号」を得たようだなとタマモは思った。
「これなんだけどね」
レンはまたため息を吐きながら、ステータス画面にある「称号」を見せてくれた。
「炉痢魂ですか?」
「……うん」
タマモが読み上げるとレンが肩をがくりと落とした。
レンが得た「称号」である「炉痢魂」は漢字だけであればなんだろうと思うものだが、読み仮名を振るととたんに不名誉と化すものだった。
実際説明文には「不名誉と思うか、最高の誉れと思うかはあなた次第」と書かれている。
「……いや、普通は誉れにはならないと思いますよ?」
「だよねぇ」
思わず説明文にツッコミを入れてしまうタマモとタマモに同意をするヒナギク。
しかし当のレンはため息を吐くだけだった。
「この「称号」を得ることで誉れと思うのは、一部の「紳士」だけだとボクは思うのです」
「……それって紳士なのかな?」
「……スラングみたいなものだと思ってください、ヒナギクさん」
「ああ、そういう」
なるほどとヒナギクは頷いた。実際「炉痢魂」を得られると知った一部のプレイヤーたちは入手のために動いていることをふたりは知らない。
そしてそんな一部のプレイヤーたちにレンが感謝されていることをふたりはやはり知らない。
「それでレンさんは「紳士」なんですか?」
「そういう風に運営さんたちには思われたみたいだね」
「ですかぁ」
ヒナギクの言葉に少しだけ安堵したタマモ。
タマモはゲームでもリアルでもロリータな見た目なため、もしレンが「紳士」であったら、危険にさらされる可能性があったのでレンが「紳士」ではないことを幼なじみであるヒナギクに教えてもらって一安心していた。
もっともふたりは先日レンが「そちらの世界」の扉を開きかけていたことを知らない。
レン自身そのことをタマモはもちろんヒナギクにも語っていなかった。
というよりもヒナギクにだけは語れないと思ったレンがあえて話していないというだけのことなのだが。
そうしてタマモとヒナギクに「紳士」かどうかの確認をされていた、当のレンはと言うと──。
「誰がロリコンだよ。たしかに幼女はかわいいけど、そんなコンプレックスになるほどじゃないよ」
──ため息を吐きながらもとても不満げだった。
幼女はかわいいと思っても、それをいろんな意味で愛でようとは考えていない。
たしかに「そっちの世界」の扉を開きかけはしたが、未遂であり完全に開いたわけではないのだ。
もっともそんなレンの姿を「炉痢魂」を得ようと躍起になっているプレイヤーが見たら、「時間の問題だ」と言うのだろうが。
未遂であっても「そっちの世界」の扉を開きかけたことには変わらない。じきに落ちると思われていることをレンは知らない。
「でも、レンさんっていつ幼女さんと戯れていたんでしょうか?」
タマモはレンが「炉痢魂」を得られたきっかけを自身との特訓であるとは思っていなかった。
そのためのその発言だった。だが、その発言にヒナギクは「え?」と驚いた。そしてひと言言ってしまった。
「えっと、タマちゃんと特訓していたのを見て、運営さんたちがそう判断したんじゃないかな?」
「……え?」
たっぷりと数秒掛けてタマモは首を傾げた。そんなタマモにヒナギクは「あははは」と苦笑いしていた。ヒナギクを見つめてからタマモがゆっくりと崩れ落ちたのは言うまでもない。
実際タマモはロリではないですから。一応心はレディですので←しみじみ




