Ex-28 詭弁とジレンマ
PKの一大本拠地である「蒼天城」──。
PKクラン「蒼天」の居城であり、他のPKにも開放されていた。城の外見は国の王が住まう城そのものであり、広大な敷地を持った本拠地であり、敷地内には様々な施設が存在していた。
そんな「蒼天城」の一角には、玉座の間から直接迎える中庭がある。無論、玉座の間からしか向かえないわけではないが、玉座の間からであれば、すぐに中庭に出られるということ。
その中庭は城のちょうど中央に位置している。中庭の大きさは中庭という言葉が似合わないほどに広々としており、そこには様々な花々が植えられていた。
「EKO」には季節の移り変わりはない。あったとしても、それぞれの地域に四季それぞれが当てはめられており、その季節は基本的に移り変わることなく年中同じである。
たとえば、春が当てはめられた地域であれば、年中花見ができるほどに日差しは温かく穏やかな過ごしやすいことになる。逆に冬であれば、年中雪が降り積もり、日によっては害意としか思えないほどの猛吹雪に見舞われることもある。
そんな「EKO」において、その中庭の花々はかなり異様である。四季それぞれの花々が見事に咲き誇っていた。桜が満開に咲き誇っていると思えば、向日葵が意気揚々とその身を伸ばしていたり、キンモクセイがその甘い香りを漂わせていたり、椿の花が静かにその場に溶け込んでいたりなど。それぞれに咲く時期がまるで違う花々が一堂に会している。ガーデニングを趣味にしている者がいれば、目を疑いかねない光景である。
そんな中庭には咲き誇る花々の美しさとは真逆の、物々しい一角がある。その一角はちょうど中庭の中央にある10メートル四方の舞台がある。四隅には柱があり、その柱の頭頂部はそれぞれの柱を繋ぐ欄干があった。その欄干のうえにはなにもなく、まるで屋根のない四阿のように見える。欄干や柱のところどころには蔦が巻き付いているのが余計に四阿を連想させてくれる。
その舞台を囲むようにして花々は咲き誇っていた。まるで舞台の物々しさを少しでも華やかにしようと花々が努力した結果であるかのようだ。
その舞台から金属音が鳴り響いていた。
キィンという高い音もあれば、ガンガンと叩きつけるような鈍いもする。時には地面を破壊したかのようなドゴォンという大きな音もしていた。それらの音は絶え間なく、高速で続いていたが、不意に音が止んだ。
音が鳴り響いていた舞台。やはりその中央にはふたつの人影があった。ひとつは長い銀髪を靡かせ、妖しい光を紅い瞳に灯した女性。もうひとつは黒い髪に褐色の肌をした女性。褐色の女性はひどく疲弊しているようで、何度も肩を上気させながら銀髪の女性を睨み付けている。が、当の銀髪の女性はその視線を受けてもどこ吹く風というかのように、余裕のある笑みを浮かべていた。
銀髪の女性が余裕を浮かべるのも当然で、褐色の女性は地面に膝を突いて倒れ伏していた。褐色の女性の喉元には銀髪の女性が持つとても大きなしゃもじが突きつけられていた。
「我の勝ちじゃな、明空。これで10連勝。「約束」を果たして貰おうかの」
にやにやと銀髪の女性こと「銀髪の魔王」と称される最強のPKKであるアオイは言う。文字通りの眼下にいる褐色の女性──アッシリアは唇を強く噛み締めている。
「……相変わらずチートよね、それ」
アッシリアが吐き捨てるように言いながら、見やるのはアオイが持つEKであり、タマモの持つおたまとフライパンと同じ最高ランクのURランクである「おしゃもじ鉋切」だった。見た目はとても大きなしゃもじにしか見えない。しかしその一撃は大地を割り、大気を斬ると言わんばかりの非常識にもほどがある攻撃力を誇っていた。その攻撃力の前にアッシリアはもう幾度となく力尽きており、それは今回も同じだった。アッシリアはもう立つことさえできないほどに疲弊しきっていた。
「見た目はなんともふざけたものだが、性能はやはり最高ランクなだけはあるのぅ。これで見た目も相応であればよかったのじゃが、まぁ、よかろう。二兎を追う者は一兎を得ずとも言うしな」
にやにやと笑みを浮かべながらアオイは、アッシリアを見下ろしていた。アオイを睨み返すのでアッシリアは精一杯だった。もう戦う余力など残されていない。仮に残されていたとしても、全力でやり合っても届かない相手に、わずかばかり残された力でどう立ち向かえばいいのか。それで一矢報いれればいいが、そんなことは逆立ちをしても無理であることはアッシリアが誰よりも理解していることだった。
だからできるのはせいぜい睨み返すことくらい。力では屈しても心までは屈しない。そんな意思を込めた瞳を向けること。それがいまのアッシリアにできる唯一のことだった。
「そう睨むでない、明空よ。なにも取って喰おうとしているわけではないのだ。我が喰いたいのはそなたではない。我が喰いたい相手はすでにいる。それもとびっきりのごちそうがな」
真っ赤な唇を舌でゆっくりと舐め取るアオイ。その様子は煽情的でありつつも、狂気を感じられる。その狂気は普段のアッシリアであれば、向けられる相手には同情するとしか思えないもの。もし相手が相手でなければ、アッシリアは無視していた。触らぬ神に祟りなしと口にしてだ。
アッシリアは自分が正義の味方とは思っていない。
正義などという言葉は、それこそ人の数だけあるのだ。
本人にとっては正義であっても、他人から見れば悪と言われることもある。
RPGのラスボスにとっての正義が、主人公側から見れば悪行にしか思えないことであっても、ラスボス側から見れば自分にこそ正義があると信じているように。
正しさというものは人それぞれで変わってしまう。
ゆえに正義の味方なんてものは存在しない。万人共通の正しさなんてものは存在しないのだから、正義の味方なんてものが存在しないのは当然のことだ。
アオイの狂気が向けられる相手をかわいそうだと思っても、手を差し伸べることはしないのは、アオイの正義を覆すほどの理由がアッシリアにはないからである。そもそも身も知りもしない他人相手にそこまで情を向けるほど、アッシリアはお人好しではないとアッシリア自身では思っていた。
だからこの狂気を向けられる相手がどんな目に遭おうとアッシリアには関係のないことなのだ。……その相手がアッシリアにとって唯一無二の存在でなければ、だ。
「……お生憎様。そうはさせない!」
アッシリアはアオイの脚を払った。「むぅ?」と唸りながらアオイが地面に倒れ込んでいく。アッシリアは雄叫びを上げながら、アオイを地面に縫い付けた。
戦う力など欠片も残っていない。だが、残っていなくても体はわずかに動くのだ。わずかに動けるのであれば、それで十分だった。戦いにならなくても喉笛を噛みちぎりに行くことくらいはできる。それがいまだ。
「アル!」
アッシリアのEK手甲型ギミックブレードの「アルタイル」を起動させ、ありったけの毒を生成し、その刀身を真っ黒な毒々しい色へと変化させる。確実に相手を死に至らせる猛毒の刃をアッシリアはアオイの喉元めがけて振り下ろした。
それは端から見ればただ倒れ込んだようにしか見えない一撃。事実、倒れ込んだだけだ。もう振り上げて突き刺すだけの力もない。できるのは、攻撃になるのは猛毒の刃を喉元に向けて倒れ込むということくらい。
それでもアオイを倒すことはできる。アオイとの戦いは模擬戦でしかない。だが、その模擬戦の前にした「約束」の条件はアオイが10連勝するかアッシリアがどんな形でも1勝をもぎ取るかということ。明らかに格下と見くびられてしまっているが、事実10連敗を喫しているのだから、否定することはできない。
けれど、まだ屈したわけではない。10連敗は喫した。それは認める。しかし10連敗をしたとしてもその後1勝をもぎ取れば、アッシリア側の条件は満たされることになるのだ。アオイは10連勝するまでにとは言わなかった。ならいつ1勝をもぎ取っても問題はないはずだ。屁理屈と言われるだろうし、アッシリアもこれが屁理屈だということは重々承知している。それでもその屁理屈をこねいてでもアッシリアはそうしなければならない事情がある。
(まりもは私が守る!)
大切な親友にして、ようやく気づけた想いを向ける相手。その相手に毒牙など向けさせて堪るものか。なにを言われてもいい。唾棄すべき相手とされてもいい。それでも、それでもアッシリア、いや、秋山莉亜は玉森まりもを守りたいのだ。まりもを守るためであれば、どんなことでもしよう。どれほどの罵声や罵倒を浴びようともまりもを守れるのであれば、それでいい。
アッシリアは再び雄叫びを上げながら、アオイの喉笛を噛みちぎるべく、猛毒の刃を突き立て──。
「惜しいのぅ。狙いは悪くないが、残念なことじゃ」
──猛毒の刃を突き立てたつもりだった。
だが、アッシリアが見たのは喉元から紅いエフェクトを放つアオイでははなかった。アッシリアが見たのは自身が倒れ込んだ地面とそんな自身を見下ろすアオイだった。
(なんで?)
確実に仕留めたと思った。
今度こそ仕留めたと思った。
なのに、なぜいま私は地面に這い蹲っているの?
アッシリアは混乱の最中にいた。
アオイのEKがとんだチート武器であることは理解している。それでもそのチートたる能力には、こんな効果はないはずだった。
ならいったい私はいまなにをされたのか。
アッシリアにはわからなかった。
わからないまま、アオイを見上げることしかできなかった。
「さぁ、教えて貰おうか、アッシリア。そなたとタマモの関係をな? そなたとタマモがただのフレンドではないことはわかっておる。その関係性を以て、我にタマモを喰らわせよ。もう我慢ならんのじゃよ。我はいますぐにでもタマモを喰らい、我のものにしたいのじゃ。その身もその心もボロボロにしたうえでなぁ」
アオイは笑う。
その笑みは影になっているということもあるが、それを踏まえても暗かった。まるで闇を眺めているように。闇の中にぼぅと禍々しい紅い光りが点っているように、深い闇がそこには広がっていた。
「さぁ、教えろ、アッシリア。我の愛おしい花嫁のことをな」
アオイが、闇が迫る。迫り来る闇の前にアッシリアは俯きながら、最後の手段を取った。
「お生憎様、ね。あんたがあの子のことを知ることはないよ。だって、これで終わりだもの」
アッシリアはあらかじめ登録していたある項目を選んだ。
「ゲームマスターの方々! ごらんの通り、プレイヤーアオイは特定プレイヤーの個人情報を、現実での個人情報を不正に得ようとしています。これは約款における問題行為となるはずです! 即座の凍結処理ないしアカウント削除を具申します!」
アッシリアが選んだ項目。それはGMコールこと各種問い合わせだった。「EKO」をはじめとしたMMORPGでは、常に運営が目を光らせており、当然アオイのこの言動はすべて運営にも筒抜けとなっている。
アオイが持ちかけた「約束」は、タマモの個人情報を知る限りで教えろということ。その時点でアウトとしか言えないことだったが、なぜか運営は動かなかったが、運営としてもアオイが本気で言っているのかどうかが判断がつかなかったのだろう。冗談で言ったのであれば、勝負が着いてからお説教ルームに呼び出せばいいし、アッシリアが勝てばそれはそれで問題はない。
しかしアッシリアは負けた。だが、アオイが本気で言っていることもわかった。
ならば、あとはGMコールでアオイを永久的に追放すればいいだけのことである。
「ほぅ、姑息なことをするの?」
「姑息なのはどっちよ。あんたにはあの子に指一本触れさせやしない! せいぜい現実で悔しがっていろ、異常者が」
吐き捨てるようにアッシリアは笑った。だが、アオイはなぜか笑みを崩さなかった。その余裕はどういうことだとアッシリアが思った、そのとき。
「GMコールにより参上いたしました」
目の前に真っ白なドレスを着た、真っ白な髪をした眼鏡を掛けた女性が現れる。ゲームの雰囲気に合わせているのだろうか、まるで女神を思わせるような出で立ちだったが、紛れもなくゲームマスターであることは間違いなさそうだった。
「この度の問題において、ゲームマスターとしての権限を行使させて解決とさせていただきます」
ゲームマスターは一礼をした。これでアオイは終わる。そう思ったアッシリアだったが、ゲームマスターはなぜかアオイではなく、アッシリアを見つめていた。いったいどうしたのだろうと思っていると、ゲームマスターが口にしたのは思いも寄らないものだった。
「プレイヤー間の契約不履行として、プレイヤー名アッシリアを処罰対象候補とさせていただきます」
「……は?」
言われた言葉の意味がすぐに理解できなかった。
契約不履行とゲームマスターは言った。つまり契約を守れとゲームマスターは言っているのだ。それはつまりタマモ──玉森まりもの個人情報をこの場で口にしろということだ。その言葉の意味を理解したとき、アッシリアは思わず叫んでいた。
「ど、どういうことですか!? 個人情報の漏洩なんてどんな職種であってもあってはならないことです! それをゲームマスターであるあなたが率先して破れなんて、どう考えてもおかしいでしょう!?」
「契約不履行の次はゲームマスターへの風刺ですか? より処罰内容が重くなりますが、よろしいのですか、プレイヤーアッシリア」
「おかしいものはおかしいでしょう!? なんで私が悪いという風になっているんですか!? 約款でも個人情報の漏洩については」
「ええ、書いていますね。ですが、今回の場合はそれに当てはまらないと判断いたします」
「なぜ!?」
「今回の場合、プレイヤーアオイの言動を顧みる限り、彼女の言動は特別おかしなことはなにもないかと」
「な、なにを言って」
「彼女の発言はプレイヤータマモを自分のものにしたいということでした。それはつまり自身のクランの一員にしたいということです」
「は?」
「身も心もボロボロにするということは、決闘のうえで雌雄を決するということ」
「そんなの」
「花嫁というのは、将来的にプレイヤー間での婚姻システムを導入することを噂かなにかで聞き及んだことでしょう。同性異性であろうとこのゲーム内におきましては問題なく婚姻関係を結ぶことができるようになりますので、システム上問題行為にはあたりません。まだプレイヤータマモ自身の意思もありますが、そちらは当人同士での話し合いによるものとみなしますので、運営側から特に言うことはありません」
「そんなの、おかしいよ」
「よってプレイヤーアオイには問題行為はなにもないということになります。むしろ、契約不履行のうえ、ゲームマスターである私を風刺するあなたの方が処罰対象に相応しいと愚行いたしますが?」
「ふざ、けんな」
ゲームマスターの口から出たとは思えない発言ばかりだった。
むしろ、これは本当にゲームマスターなのかと言いたくなる。
だが、いまのところ他の運営が出てくる様子はない。つまりこのゲームマスターが言うことは運営の見解ということなのだろう。
罰せられるべきはアオイではなく、アッシリア。
それが運営たちが導き出した回答ということだった。
「ですが、この場で契約を履行されるのであれば、私への風刺については大目に見ましょう」
「それは、あの子のことをこのゲスに教えろと?」
「そういうことですね。ああ、ちなみにその罵倒も約款的には」
「よいよい、ゲームマスター殿。処罰対処候補とはいえ、これは我のクランの一員である。日頃からいろいろと不満もあるのだろう。それが一時的に顔を出した。その程度のことで我はこれを処罰しようとは思わぬ。その程度で処罰するなど自身の狭量を口にするようなものではないか。よって我から彼女を罰するつもりはないと言っておこうかの」
「左様ですか。よいご友人をお持ちですね、プレイヤーアッシリア」
ゲームマスターとアオイが笑い合う。想定も想像もしていなかった光景にアッシリアは項垂れた。項垂れながらもうどうすることもできないのだとはっきりと理解してしまった。
どうしてこうなったのかはわからない。わからないが少なくとも自分にはもうなにもできないことだけはわかった。わかってしまった。
「さて、そろそろあがくのはやめたらどうじゃ? さぁ、契約を成せ、アッシリア」
「アカウントの凍結ないし消去と契約履行のどちらがいいのかは選ばせて差し上げます」
ゲームマスターとアオイがそれぞれに言うが、アッシリアにはどちらも悪魔にしか思えなかった。悪魔が声色を変え、分身して話しかけているとしか思えなかった。
(アカウントを消されたら、私はゲームの中でまりもになにもしてあげられない。事情を現実で話しても信じてくれるかもわからない。だってまりもにとって、こいつは理想の女性像そのものなんだ。その理想の相手が裏でこんなことをしているなんて考えてもいない。だから私がなにを言ってもきっと聞いてはくれない。それどころか、下手をしたら逆戻りに)
少し前まで、喧嘩別れをしていたことがアッシリアの思考を乱していた。誠意を持って話せばタマモは必ずアッシリアの話を聞くだろう。だが、そう考えるよりも早く現実で仲違いをしていた約八ヶ月の記憶がアッシリアの思考を乱していく。
(……嫌だよ、もう、まりもがそばにいないなんて、やだよぉ)
アッシリア、いや、莉亜にとってまりもはいなくてはならない存在だった。まりもは莉亜に依存していたが、それは莉亜も同じなのだ。共依存し合う親友。それがふたりの関係であり、決してそれ以上にならなかった理由。あまりにも近すぎるがゆえのお互いのことをちゃんと見ることができていなかったのだ。
ある意味、ふたりが仲違いするのは自然の成り行きだった。共依存するがゆえに、どちらかが道を踏み外せば、バランスを崩すことになれば、どちらも落ちていく。それを堪えるほどの力があれば問題はない。しかしふたりにはどちらもその力はなかった。そのうえでまりもが莉亜を突き放した。どんな理由があるにせよ、ともに落ちていなかった時点でふたりの共依存は終わったのだ。
だが、莉亜はまだまりもに依存している。逆にまりもはすでに莉亜を依存する相手とは見ていない。当時のまりもにはなかったものをまりもはすでに得ている。ゆえに莉亜に依存する必要がなくなっているが、莉亜はなにも変わっていない。変わっていないからこそ、莉亜はまりもに縋るしかないのだが、当のまりもは以前とは違っている。それがわずかな歪みになっていることをふたりはともに理解していなかった。
そのわずかな歪みにして違いが、莉亜を少しずつ追い詰めていた。追い詰めながらも必死に表面を繕っていた。その繕っていたものがいま崩されそうになっている。
まりもを守る。
それは莉亜が幼い頃から自身に課して来たこと。いわば、アイデンティティーだ。
だが、そのアイデンティティーを守るためには、まりもを売らなければならない。
自己を肯定するためには、その対象を切り捨てなければならない。
不意に突きつけられた選択の前に、アッシリアは為す術を失っていた。
「さぁ、どうする? アッシリアよ」
アオイが笑う。
その笑い声にアッシリアは心の底から謝罪をした。
(ごめん。ごめんね、まりも。でも絶対に、これから先は守るから。だから、だから許して、お願い)
アッシリアは両手を握りしめながら、弱々しい力で握りしめながら、いまはいない親友へと謝り続けた。それがより自身を苦しめる選択であることを重々に理解しながらも、アッシリアはそれを口にしてしまうのだった。
これで6章はおしまいです。次回から7章となります。




