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43話 裏話その2

 話は昨日までに遡る──。


「──さて、ついに明日だね」


 ヒナギクは「フィオーレ」の本拠地内でカレンダーを見つめていた。


 その両隣にはそれぞれレンとタマモが立っていた。ちなみにタマモの隣にはアンリの姿もあった。その腕の中には眠たそうにしているクーの姿もある。要するに「フィオーレ」の面々が総揃いである。


「フィオーレ」の面々はそれぞれにカレンダーを眺めている。それぞれに表情は異なるが、その視線がカレンダーに向けられていることは同じである。


 そのカレンダーには24日に「プレゼント大作戦」と書かれているし、その翌日である25日には「アンリちゃんの誕生日!」と大きく書かれていた。


「いよいよ、明日となりましたが、みんな準備は大丈夫かな?」


 ヒナギクはタマモたちをそれぞれに見やっていた。それぞれが静かに頷いているも、当事者であるアンリはなんとも言えない顔をしていた。加えてクーは相変わらず眠そうである。それどころか、鼻提灯を時折出すほどであった。


「クーちゃん、眠っちゃダメだってば」とヒナギクがクーの体を揺すると、ぱぁんという音を立てて鼻提灯が破れ、クーが目を覚ますも、その顔は非常に眠たそうであったが、クー自身眠ってはまずいと思ったのか、「……きゅ」とちょっと辛そうにだが頷いていた。


「明日はプレゼント大作戦後に、どうにか時間を作ってアンリちゃんの誕生日パーティーをするよ!」


「かなりキツキツですね」


「スケジュール的には余裕はほとんどないな」


「それでもやるしかないよ」


 胸を張りながらヒナギクは言う。その言葉にタマモもレンも頷いていた。


 明日のプレイヤー主導イベントである「プレゼント大作戦」とアンリの誕生日パーティーは並行するというのは「フィオーレ」内では満場一致していた。そのために、今日まで頑張ってきたのだ。 


 当のアンリは「皆様が起きられてからでもいいんですけど」と恐縮しているのだが、ヒナギクは「どうせなら日付変わってすぐがいいよね」と言い出して聞かない。ヒナギクが一度言い出したら話を聞いてくれないのはもうわかりきっていることなので、レンはもちろんとしてタマモもあえてなにも言わないでいた。


 そうして満場一致した結果、「フィオーレ」の面々は当日のログインは20時30頃にすることになったのだ。ちなみに「プレゼント大作戦」の開始は21時から。つまり開始30分前にログインすることになっている。


 本来は20時頃にログインして最終準備をすることになっていたのだが、アオイたちが気を利かし、30分遅れてログインすることになったのだ。もちろん30分遅れた分、アオイたち以上に頑張るつもりだ。


 そして30分遅れた分、ログイン限界も30分遅れることになる。その30分間でアンリの誕生日パーティーを行うこととなっていた。


 30分だけの誕生日パーティーというのは、なかなか見受けられないものだが、たとえ短くてもこれでもかと祝おうと決めていたのだ。


 ゆえに一分一秒でさえも惜しみ、行動せねばならない。そのタイムスケジュールは分刻みどころか、秒刻みとなるだろう。その秒刻みの工程はまるで「タイムアタックでもすんの?」と言われかねないものである。


 だが、それくらいしないと時間は作れないのであれば、やるしかないのである。タイムアタックだろうとなんだろうとやってみせる。そんな心意気だったのだ。


 が、その心意気もあっさりと瓦解することになった。


 それはタマモに届いた一通のメールによるものだった。


 ──ピロリン


 やけに安っぽく、甲高い音が聞こえた。


 なんだろうと思っていると、タマモの目の前にいきなりウィンドウが開かれた。そこには「新着メールが届きました」と表示されていた。


「メール、です?」


 なんだろうと思いつつ、メールを開くと「拝啓タマモ様」という書き出しの一文が目に入った。その一文に目を通していくタマモ。その内容は以下のようなものであった。



「拝啓タマモ様。

 師走を迎え、ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。さて、今回プレイヤー主導のクリスマスイベント。通称「プレゼント大作戦」におきまして、ずいぶんと前からご準備をされていることは当方としても重々承知ではあります。ですが、誠に勝手ながら、今回のイベントは当方にもご協力をさせていただきたく存じ上げます。ですが、先述の通り、今回のイベントは皆様方がずいぶんと前から準備をしておられることは承知しておりますし、前日になっていきなり「一枚噛ませろ」というのはあまりにも無礼であることもまた承知しております。なので、今回の件においての話し合いの場を設けさせていただきたいのです。本日中であれば、いつであろうと対応いたします。とはいえ、いきなりのことでありますので、すぐには無理かと思われます。1時間後にもう一度ご連絡をいたします。その際に話し合いの場を設けられるお時間を認めていただけるとありがたく思います。むろん、断れられても構いません。ですが、どうかお時間をいただけると幸いであります。重ね重ね失礼ではありますが、どうかご一考のほどお願い致します。では、次の連絡の際に色好いお返事をいただけることをお祈り致します。 

 エターナルカイザーオンライン運営チームゲームマスターソラより」


 届いたメールの内容はなんともまぁ予想にもしていないものだった。そのあまりにも内容にタマモは一瞬硬直したが、運営の力を貸してもらえるのであれば、それはそれでいいのではないかと思った。


 が、やはりいきなりすぎるので、すぐには返事はできない。それは運営側もわかっているのだろう。1時間後というのはあまりにも短いが、時間がまったくないわけではなかった。相談することくらいはできるだろう。受けるにせよ、断るにせよ、相談できる時間は与えられているのだ。


 であれば、タマモがすることはひとつだけである。


「あー、ヒナギクさん、レンさん。ちょっとお話が」


 タマモは面倒なことになるかもしれないなぁと思いつつ、メールの内容をふたりに話したのだった。

まぁ、失礼すぎる内容ではありますが、一考する価値はあるかなと

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