50話 ヒナギクからのオシオキ
一週間ぶりになりました。
仕事が慣れない←泣
やっぱり昼間で働くのがあたりまえだったのが、深夜帯で働くというのは無謀だったなぁ←ため息
頑張りたいけど、体壊して辞めるかもですねぇ←汗
まぁ、そんなわけでかなり不安定な更新状況なわけです。今後も続きそうなので、見捨てないでくださると嬉しいです←ため息
今回はヒナギク視点ですが、内容はまぁ、うん←苦笑
少しだけ変わったのかもしれない。
ヒナギクはレンを一目見てからそう思った。
いまのレンの姿はアバターのままだ。現実のレンとは似ても似つかない。
だが、中身はヒナギクの幼なじみであるレンのままだった。少なくとも「フィオーレ」から一時的に離脱するまでは。
(……同じ学校で、同じクラスだし、帰り道もほとんど同じだから、いつも話はしているはず、なのに)
不思議といまのレンを見ていると「変わったなぁ」という思いが沸き起こった。とはいえ、どこがどう変わったのかと言われると説明しようがない。
ただ変わったとは思った。
いままでは年下の男の子を見ているような気分だった。だが、いまのレンはヒナギクよりも一歩先を歩んでいるように思えるのだ。ヒナギクより少し大人になったように思えた。
(同い年なのに)
ヒナギクとレンは生まれた年も生まれた日も生まれた場所も同じだった。生まれた正確な時間はやや異なるものの、物心つくまえから同じ日々を過ごしてきたと言ってもいい。
だからだろうか。
同じ時間を歩み続けてきたはずだったレンの、わずかな変化がどこか寂しかった。まるでおいてけぼりにされてしまったかのように感じられた。
(……おいてけぼりは嫌だって前から言っているのに)
ずっと昔からレンには何度も言っていた。「おいていかないで」と。ヒナギクはひとりでいるのが嫌いなのだ。いや、ひとりでいるのがなぜか怖い。
だから、幼い頃にレンに向かって「ひとりぼっちにしないで」と泣きながらお願いしたことがあった。
レンは「あたりまえだろう」と胸を張って言ってくれていた。
子供の頃、ヒナギクにとってレンはヒーローのような存在だった。
ヒナギクが男の子にいじめられていると、いつも助けてくれる。
たとえ年上が相手だとしてもレンは構うことなく立ち向かい助けてくれた。その分レンはたくさん傷ついたし、生傷が絶えない子だったけれど、その痛みを顔には出さず、いつも笑ってくれていた。そんなレンが大好きだった。
だが、その一方でヒナギクは自分を情けなく思っていた。レンがいないとなにもできないことが。レンに助けられてばかりのことが。泣くことしかできない自分がなによりも情けなかった。
だから強くなろうとした。
レンに助けてもらうばかりじゃなく、レンを支えてあげられるようになりたかったのだ。
だから強くなろうとした。
ただ強くなろうとしながらも、ひとりでいるのが怖いという感情は消えてくれず、結果子供の頃よりも強くなっても弱いままという、ずいぶんとねじれた成長をすることになった。
それでもレンはヒナギクを大切にしてくれた。ヒナギク自身でも面倒な女だなぁと思うことが多いというのに、それでも呆れることも嫌うこともせずに笑ってヒナギクを受け入れてくれている。そんなレンをいまでもヒナギクは嫌いではなかった。むしろ──。
「って、んなわけあるか!」
頭の中に浮かんだ答えを否定するヒナギク。さすがにそれはない。というかありえないとヒナギク自身で思ってしまったのだ。いくらなんでもそれはない、と。
「ひ、ヒナギク?」
ただ、その答えを否定することに意思気が向いていたからか、ヒナギクはつい口に出してしまっていた。そして出てきた答えを象徴する人物であるレンは、いまヒナギクの目の前にいるわけであり、そんな状態で叫んだらどうなるのかなんて言うまでもないことだった。
「ど、どうかしたのか?」
レンは表情をひきつらせて地面に倒れこんでいた。ヒナギクの剣幕に押されて倒れてしまったようだ。
ヒナギクとしてはオーバーすぎないかなと思うものの、実際にレンが倒れていることは変わらない。つまりはそれだけレンにとっては衝撃的だったということ。もっと言えば気圧されてしまったということか。
正直なことを言えば、非常に遺憾ではある。だが、どんなに納得いかないことであっても現実は変わらない。レンが倒れているという起きてしまった現実は変わらなかった。
そんな現実に内心打ちのめされそうになりつつも、ヒナギクは努めて笑顔を浮かべた。必死に「我慢」と何度も心の中で呟きながらもできる限りの笑顔をヒナギクは浮かべていく。
しかしその笑顔になぜかレンは「ひぃ」と悲鳴を上げてくれた。
「……おい、待て。あんたなんで悲鳴上げてんのさ?かわいい幼なじみの見とれるような笑顔を前に、なんで悲鳴上げるわけ?そこは普通キュン死するところじゃない?」
「かわ、いい?」
「ぁ?」
「なんでもないです、ごめんなさい!」
レンはその場で土下座をした。だが、ヒナギクとしては土下座をしろと言ったわけではないのだ。ただ尋ねただけである。なぜいわゆる「キュン死」をせずに、悲鳴を上げたのかをだ。
だというのにレンは理由を口にするどころか、なぜか「かわいい」というワードに対して反芻してきたのだ。
これはどう考えても喧嘩を売っているとしか思えないことであろう。いや、喧嘩を売っているのだろうとヒナギクは断定した。
「ちょっと話を聞かせてもらおうかな?特にわざわざ「かわいい」を反芻しやがったことは」
「えっと、それはですね。言葉のあやと言いますか」
「ぁ?」
「……ごめんなさい。他意は、他意はないんです!本当に他意はなかったんです!」
レンは額を地面に擦り付けながら叫んだ。しかしヒナギクの苛立ちは収まらない。収まる方法はあるが、それはレンの協力が必要となることだった。ゆえにヒナギクは動いた。
「レン。覚悟はいいよね?」
ヒナギクは立ち上がり、土下座をするレンの元へと歩いていく。レンは涙目になってヒナギクを見上げている。
だが、ヒナギクは止まらない。いや、止まる気はなかった。レンの頭、額のあたりへと右手を伸はして掴んだ。そして──。
「オシオキだよ?」
──ヒナギクは笑ったまま、レンを持ち上げた。レンは体をガクブルと震わせているが、もう時はすでに遅し。
「いい声で啼いてね?」
にっこりと笑いかけるヒナギク。そしてヒナギクによる怒りの制裁、もといオシオキは始まりを告げたのだった。
次回はできるだけ早く更新したいです




