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49話 不思議な胸の痛み

えー、10日も更新せずに申し訳ありません←汗

新しい仕事の関係上、どうにも手がつかず←超汗

お待たせして申し訳ありませんでしたorz←土下座

P.s.作品は違いますが、誤字訂正を連日でしてくださり、本当にありがとうございます。誤字訂正もしないとなぉ←ため息

「──ふぅん、ガルドさんとねぇ」


ヒナギクはテーブルに肘をついて、手の上に顎を乗せてレンの話を聞いていた。


ヒナギクの前にはマグカップがあり、その中には「アルト」で買ってきたというお茶が注がれている。


基本的には相槌を打つだけだが、時折問いかけてくれる。


例えば、どういうモンスターと戦ってきたのかとか、どういう人と出会ったのかとかなどのありふれたものや、面白かったり、逆にムカついたりしたことはあったのかとかなども聞かれた。


そのひとつひとつをレンはヒナギクに話していた。


中でもヒナギクは、屋号を勝手に使っていたという料理人に関して、怒りを抱いていた。それに関してはレンも同じだったが、すでにゲームマスターから制裁をされているため、こちらから改めて件の料理人になにかすることはないというのはヒナギクとも同意見に落ち着いた。


おそらくはタマモもヒナギクやレンと同じく、こちらから改めて制裁はしないということになるはずだが、タマモの場合はさして怒らないかもしれないとヒナギクは言い、レンも頷けた。


(タマちゃんの場合、無関心だろうしなぁ)


おそらくは怒ることはないだろうが、フランチャイズ料は支払えと言って終わりそうである。


タマモは自分の腕が未熟であることを理解している。……理解しているにも関わらず、ヒナギクの言いつけを破ってしまうことも多々あるが、基本的には修行中の身の上であるため、屋号に関してはあまり執着はしていないようだ。


「武闘大会」中でだいぶ有名になってしまっているが、常時屋台を運営しているわけではないため、屋号に関して勝手に使用されても怒ることはしないどころか、大した拘りはないそうである。


ただ、拘りがないのはあくまでも屋号に関してだけであり、屋台に関する拘りはそれなりにあるようだ。


例えば、キャベベ炒めの値段や使用する部位に関しては、かなり拘っている。というよりもヒナギクに散々と言われているため、その辺の拘りは強い。


ゆえに件の料理人のやらかしに関してで言えば、キャベベの使用部位と値段に関しては怒るだろうが、屋台の不正利用に関してであればタマモはなにも言わないだろう。せいぜいがフランチャイズ料を支払えと言うだけだとヒナギクは言いきったのだ。


タマモの師匠であるヒナギクが断言するのであれば、事実なのだろうとレンは思った。それによくよく考えてみれば、タマモにとって屋台への思い入れなどさほどないのだ。


ゆえに屋号の不正利用に関して思うことがあるのは、フランチャイズ料くらいだった。


ただヒナギクが言うには、掲示板が一時的にまずいことになっていたそうだが、どうにか鎮火はしたようだった。生産板のアイドルの屋号の不正利用は、本人ではなく周囲が騒いでいたようだった。


その生産板のアイドルはいま──。


「とりあえず、おふたりのご飯を用意しますので、仲良く待っていてください。アンリさんはおふたりの監視をお願いしますね?」


「……嫌です」


「へ?」


「旦那様がちゃんと言ってくださらないとアンリは無視します!」


きっぱりと言いきり、タマモから体ごと視線を背けるアンリ。


しかしちらちらとタマモを見やりつつ、尻尾を振っている姿からは「まだかな?まだかな?」と雄弁に物語っていた。


アンリが言う「ちゃんと言わないと」という言葉の意味が指すものはひとつだけである。それはタマモ自身わかっているようで、顔をほんのりと染めている。しかしタマモの変化を見てもアンリは態度を改めようとはしていない。

そんなアンリにタマモは折れた。


「……おふたりを監視してください、アンリ」


ぼそりと呟くようなタマモの一言。その一言にアンリはすぐさま「はい!」と嬉しそうに頷いた。言葉通りにアンリは満面の笑みでタマモを見つめている。タマモは「本当に現金ですねぇ」とやや呆れつつも、アンリを愛おしそうに見つめていた。


「……なぁ、ヒナギク」


「……言わなくてもいいんじゃないかな?むしろ言うとタマちゃんがかわいそうだから」


「それはそうかもしれないけど、でも」


「……タマちゃんだってわかっているよ。それでもアンリちゃんを大切に思っているんだよ」


「……だろう、な」


タマモはアンリをとても大切にしているのが、ふたりのやりとりからはうかがい知れた。


そんなタマモとアンリの姿を眺めていると、いずれ必ず訪れるふたりの別れを考えると胸が痛んだ。


「……いつかは終わるよ。どんなものにも永遠はないんだもん」


「……永遠はない、か」


「そうだよ。だってそれがあたりまえだもの。永遠に続いてほしいものはあるけど、永遠はないよ。それがあたりまえなんだから」


ヒナギクはアンリとタマモを見つめている。痛ましいものを見るようにふたりを見つめる姿にレンはなにも言うことができなくなった。


(永遠はない、か)


あたりまえのことだ。それでも永遠はないという言葉にレンの胸はわずかに痛んだ。その理由はわからない。レンとて永遠というものがないことは知っている。知っているがそれでも不思議な胸の痛みがあった。


(これはなんだろう?)


よくわからなかった。不思議に痛み続ける胸をわずかに押さえながら、レンはヒナギクの横顔を見つめた。


産まれてからずっと一緒に過ごしてきた幼なじみであるヒナギク。ヒナギクのことならなんでも知っているし、わかっているという自負がレンにはあった。


しかしいまのヒナギクはレンの知っているヒナギクとは少し違っているように見えた。


ヒナギクのはずなのに、ヒナギクではない。その不思議さの意味を考えつつもレンはヒナギクと、その視線の先にいるタマモを見つめたのだった。

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