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27話 長の元へと

今日も遅くなりました←汗

でも徐々に早くはなってきます。

……それでも遅いんですけどね、サーセン←汗

「──ふむ。やはりどちらも弱いなぁ」


焦炎王はため息混じりに言った。焦炎王の前には、地面に膝を着いたガルドが肩で呼吸をしていた。


そんなガルドとは違い、焦炎王はまるで疲れてさえもいない。


むしろこれからレンも交えて戦っても問題なさそうなほどに余裕のある表情を浮かべていた。


「いやぁ、やっぱり手も足も出ないっすね」


「それはそうであろうさ。むしろそなたらに手足を出される程度では、竜の王にはなれぬよ」


焦炎王は苦笑いしている。だが、苦笑いしているが怒っているという風ではない。


あくまでもガルドの発言に笑っているだけである。が、焦炎王の眷属であるドラゴンたちは、ガルドの発言に若干苛ついているようで、殺気立っていた。


その殺気を浴びながらもガルドは笑っていた。焦炎王が苦笑いしているのは、四方八方から殺気を受けているのにも関わらず笑っているガルドの豪胆さに対してもだった。


(ガルドさん、すげえなぁ)


レン自身ガルドの態度に尊敬しそうになっていた。ただリスペクトできるかどうかはまた別ではあるが。


(少なくとも俺はあの状況じゃ笑えないなぁ)


ガルドよりも先に焦炎王と戦い、完敗を喫したレン。


それはレンに先を譲ったガルドもまた同じであるのだが、ガルドもまたレン同様に完敗を喫したのだが、レンよりもガルドは焦炎王とそれなりに戦えていた。


だが、戦えていてもそれなりという程度である。焦炎王はレンとの対峙同様に、ガルド相手であっても本気で戦っていなかった。


ただレンのときよりも多少丁寧に戦っていた。だが、あくまでも多少という程度。端から見れば誤差の範囲と言われても否定できない程度の違いでしかない。


そうしてレンとガルドと連戦しても焦炎王は、息一つ乱してさえもいない。


それだけレンとガルドとの実力差があるという証拠だった。


とはいえ、それも無理もない。


レンもガルドも全プレイヤーの中でも上位の腕前を誇る。


だが、それでもプレイヤーが操るアバターのステータスはさほど高いというわけではない。これはまだふたりともさほどレベルアップに勤しんでいないということもあるが、やはりまだリリースして数ヵ月では、レベルを上げるにしても限界があるのだ。


加えて「エターナルカイザーオンライン」のシステムでは、1日の大半をログインするという廃人プレイはできないため、大半のプレイヤーのレベルはどんぐりの背比べ状態である。


まぁ、タマモという例外もあるため、ほとんどのプレイヤーのレベルが同じというわけではない。だが、下にはタマモという例外はいるが、上は上でそこまで大きく差が開いているわけでもない。


現在の平均値は20ほどである。


ちなみにガルドはレベル25、レンはレベル19にまで達しているが、ガルドの持つ「歴戦の重斧」はBTランクのため、最初から位階は第2段階であるが、レンのミカヅチはまだ第1段階のままだった。


本来ならレベル19ともなれば、すでに第2段階に達していないとおかしいのだが、実を言うとレンはまだミカヅチをそこまで使っていない。


というのもプレイヤースキルが高すぎるため、大抵のモンスターであれば、一太刀で戦闘が終わってしまうからだ。


つまりいままでの戦闘回数と使用回数が=ということ。


そして戦闘で入る経験値は、タマモのように強制的に1になるわけではないので、常に使用回数を先行することとなる。


そのうえ、「武闘大会」で勝ち抜いたことでの獲得した経験値と「古塔」で得た経験値の影響により、使用回数と戦闘での経験値との差はより大きく開いてしまい、結果レベルが20近いというのに、レンはまだミカヅチを進化させることができないでいた。


進化させられないという問題は「フィオーレ」内ではレンだけではなく、ヒナギクもまた同じ問題を抱えているのだが、ヒナギクの場合はレンとは別の問題を抱えていることもあるのだが、いまは割愛する。


とにかくレンもガルドも平均値を大きく逸脱していなかった。つまりはステータスもそこまで高いというわけではない。


そんなふたりと比べて焦炎王は、レベルもステータスも隔絶している。そもそも本来の竜の姿ではなく、人の姿で戦っているということは二重三重にも枷を着けて戦っているようなもの。いや、それどころか目隠しをし、一定の範囲内から動かない等のハンデを着けてもまだ足りないほどに実力をセーブしたうえで焦炎王はふたりと対峙していたのだ。


そんな焦炎王と戦ったところで勝ち目など最初からあるわけがない。むしろ1分でも戦えていたら称賛されるレベルだ。


それはレンとガルドの周囲にいるドラゴンたち相手であっても同じだ。レンとガルドにとっては隔絶しすぎていて、周囲にいるドラゴンたちと焦炎王の差はわからない。


実力差というものはあればあるほどに、正確な差を掴むことができなくなる。ゆえぬにレンとガルドでは焦炎王と眷属のドラゴンたちとの差はわからなかった。


ただドラゴンたちでも焦炎王には遠く及ばないということはわかる。ただ具体的にはどれだけというのがわからない。


ゆえに焦炎王はレンとガルドを「弱い」と言ったのだ。相手の実力もわからないほどの弱者。赤ん坊同然の存在。それが焦炎王から見た、レンとガルド。引いては「エターナルカイザーオンライン」の全プレイヤーの評価だった。


「まぁ、いまは弱くてもいずれは強くなれるであろうよ。暇潰しでそなたらを鍛えてやろう。それが終わったら、眷属どもの遊び相手をしろ。それ以外の時間はそなたらの好きにするがいい。一人で稽古するもよし、この地底火山を探索するもよし。好きにせよ」


そう言って焦炎王はあくびを掻いてから、腰を下ろした。焦炎王が腰を下ろしたのは、大きな岩の上だった。ガルドの体よりも大きな岩に焦炎王は瞬く間に腰かけたのだ。


普段から玉座代わりにしているのか、岩には焦炎王が座った形に削れており、焦炎王が岩を気に入っているということがなんとなくわかる。


ちなみにだが、レンを膝枕していたときは、焦炎王は地面に直で座っていた。


岩の餓えではレンが起きたときに滑り落ちてしまうことを危惧したからであろう。


ガルド同様に豪快な面もあるが、女性らしい細やかな気配りを見せる姿にレンは素直に好感を持てた。


もっとも本当に気配りするのであれば、「古塔」でいきなり襲ってくるなと言いたくなるが、それを口にしても焦炎王が笑うだけなのは目に見えていたため、レンは特になにも言う気はない。


「ちなみに今日の稽古は終わりということで?」


「そうさな。まぁ、初日であるのだから、今日はまだ遊び相手をしなくてもよかろうよ。思い思いの場所で休むといい。我は少し昼寝をする。後のことは、長にでも聞け」


「長?」


「うむ。我が眷属の長だ。その辺にいるから探して話を聞いてこい。まぁ、一応案内を着けようか。そこのフレイムドラゴン、長の元に案内してやれ」


「承知致しました」


焦炎王はあくびを掻きながら、周囲にいたドラゴンの一頭を指名した。指名されたドラゴンは恭しく頭を下げると見る見るうちにその姿を変えていく。やがてその姿は赤い燕尾服を着た1人の執事にと変わっていた。


「では、ご客人方、長様のもとへとお連れいたします。我が主、失礼致します」


「うむ。ほかの者どももご苦労であった。解散とする」


そう言って焦炎王はまぶたを閉じた。同時にドラゴンたちは一斉に頭を下げてから次々に飛び去っていく。その光景を呆けたようにレンとガルドは眺めていた。


「参りましょうか、ご客人方」


執事となったドラゴンの言葉に慌ててレンとガルドは頷き、焦炎王の眷属の長の元へと向かうのだった。

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