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24話 絶望的な戦い

あー、間に合わなかったorz

ギリギリ間に合うかと思ったのに←汗

ってわけで今日はもう1話あげる予定です。

次は間に合せたいなぁ。

赤い光だった

鈍く輝く赤い閃光が放たれていく。その閃光はひとつだけのときもあるが、大抵は数えるのが億劫になるほどに重ねられて放たれていた。


その無数の閃光が今回は頭上から降り注ぐようにして放たれた。その閃光を放つのは、獰猛な笑顔を浮かべた赤い女性だった。女性の開いた口は赤かった。まるだいまから炎を吐きそうなほどに、その口の中は赤い。


ほんの一瞬だけ、レンはその光景をぼんやりと見つめていた。


「来るぞ!」


ガルドが叫ぶ。その叫びにレンは慌てて行動を再開する。


すでに返事をする余裕はない。閃光はすでにレンの目の前にまで迫っている。ガルドはどうするのかを確認できる時間はない。


「「雷電」!」


「雷電」を用いて高速で回避するレン。少し前まで立っていた場所に絡み付くような無数の斬撃が押し寄せていた。


斬撃が止んだとき、そこには無数の斬撃によりズタズタに切り裂かれた地面があった。しかもひとつひとつの斬撃はとても深く地面を切り裂いていた。まるで無数の小さな地割れが元からあったかのようにだ。


(直撃したら死ぬな、あれ)


あまりにもな光景にかえって冷静になってしまったレン。だが、すでに致死の閃光は迫っていた。


「呆けていたら死ぬぞ?」


女性の声がすぐそばから聞こえてきた。振り返ることなく、レンは「雷電」での移動を行った。壁を駆け抜け、天井を足場にして、決して止まることなく進み続ける。その後を赤い致死は追いかけてくる。


「はっはっはっ!よく避ける!だが、いつまで避けられるかな?」


女性は笑いながら次々に斬撃を放ってくる。言動が明らかにおかしいのだが、それを言っても仕方がない。


(そもそも誰だっつーの!)


そう、そもそもこの女性が誰なのかがわからないし、なぜ戦闘になっているのかもわからないのだ。


なにからなにまでわからないことばかりだが、唯一分かっていることはある。


(止まったら死ぬ!)


女性がどういう存在なのかはわからないが、少なくとも足を止めていたら死ぬ。それだけははっきりとわかっていた。


ゆえにレンは足を止めることなく、移動を続けていた。そんなレンを追いかけるようにして致死の斬撃は迫ってくる。


トタン屋根に降り注ぐ豪雨のような音が響いていく。トタン屋根の場合はあくまでも水の雨ではあるが、レンの場合は斬撃の雨だった。


「おうおう、これでもまだ避けるかよ。だが、いつまで続けられるかな?」


女性が楽しそうに笑う声。その声とともに背後に迫る斬撃の音が増した。量と威力という意味合いで。


両方とも単純な内容だった。


単純に斬撃の量が増え、一撃の威力が強くなったというだけのこと。


だが、レンにとってはただそれだけのこととは言えないことだった。


むしろ「ふざけんなよ!」と言いたくなることだった。


レンは「雷電」をずっと使っていた。


だが、その「雷電」でもどうにか避けられる速度の斬撃が、威力とその量を増して迫ってくるのだ。


レンにとってはふざけんなとしか言いようがないことだった。


(ガルドさんは大丈夫なのかな?)


不意にガルドのことが脳裏をよぎる。ガルドの心配をする余裕などなかったはずだったのに、なぜかガルドのことが気になった。


だが、周囲を見回す余裕などレンにはない。できるのはただ前を見て駆け抜けること。もう何度目かになる壁を駆け登り、天井にまで至ったとき、それを見た。


「がぁぁぁぁぁーっ!」


その手の斧を高々と掲げながら女性に向かって駆け抜けるガルドの姿をレンは見たのだ。ガルドは「獣謳無刃」状態のまま、体中から血を流して女性に向かって突撃していた。


(なにか策でもあるのか?)


落下するよりも速く天井を駆け抜けて反対側の壁にたどり着くと、そのままぐるりと壁を伝っていくレン。女性の斬撃は相変わらずレンを追いかけてくるが、その視線はガルドにも向けられていた。


「……つまらんなぁ」


だが、女性がガルドを見やる目はとても冷たい。正直な話、なにが楽しいんだとレンは言いたくなったのだが、女性にそんなことを言っても無駄なことはわかっていた。


加えてそんなことを言えるわけもない。レンはただ駆け抜けることしかできない。攻撃に移ることがレンにはできなかった。


だが、レンに攻撃が集中している間に、ガルドは女性に迫り、その手にある斧を振り下ろした。女性はガルドを見やっているが、避ける素振りはない。


(避けないのか?それともカウンターでも狙っているのか?)


駆け抜けながらもレンは眼下の光景を見つめた。そしてガルドの一撃が女性に肉薄し、その体を切り裂こうとした、そのとき。


「……ふん。この程度か」


女性が左手の人差し指を振り下ろされる斧にと向け、斧を指一本で受け止めたのだ。


「……は?」


眼下の光景にレンは目を疑った。普通なら指が切り飛ばされるどころか、深々とその体を抉るはずだった斧の一撃が、人差し指一本で受け止められてしまったのだ。目を疑わないわけがなかった。


「ほれ、油断するなよ、小僧」


女性が言った。レンは慌てて移動を再開しようとしたとき、斬撃とは別の攻撃が放たれた。いままでの斬撃はありえないことだったが、飛ぶ斬撃だった。


どれだけ鍛えればそんなことができるのか、レンにはまるでわからない。


しかし女性は現実に斬撃を飛ばしていた。それだけでもありえないというのに、女性はその斬撃を曲げてきたのだ。


「な!?」


いままでは単純に斬撃が飛んでくるだけだった。だが、いま放たれたのは指向性を持つかのように、みずからの意志で曲がって放たれた飛ぶ斬撃だった。


レンは大きく弧を描くようにして壁を駆け抜けてその斬撃をどうにか回避した。


「がぁぁぁぁぁっ!」


同時にガルドが斧での攻撃を再開していた。だが、女性はガルドの攻撃を人差し指一本で受け止めていく。ガルドは何度も斧を打ち下ろすが、女性の指が動くことはない。


(なんなんだよ、いったい)


ありえない剣術を使い、ガルドの渾身の一撃を指一本で受け止める。そんな女性などいるわけがない。いや、性別問わずにいるわけがない。あるとすればそれは人間という種をはるかに越えた存在だということ。


(いったい、何者なんだよ、あの人は)


わからないことだらけで頭がパンクしそうだ。加えて解せないこともできてしまった。


「なんで武術を使わないんだ、ガルドさんは?」


ガルドはさっきから斧を振り下ろしてばかりだ。武術を使おうとはしていない。なぜ武術を使わないのか。斧を振り下ろすだけの攻撃じゃ女性には通じない。そんなことはガルドならばわかりきっていることだろうに。なのに通常攻撃だけを繰り返すガルド。その動きにレンは首を傾げていた。


「やれやれ。暴走するのはいいが、この程度の力かよ。誠につまらん」


不意に女性が呟いた。暴走。その単語が意味することはひとつ。「獣謳無刃」のリミットを超過したということだった。


「まぁ、獣相手に戦うのも悪くはないが、そなたは弱すぎる」


女性の手がゆっくりと動く。同時にガルドの体から血が吹き上がった。


目にも見えない速度で斬ったのだということだけしかわからなかった。


いつガルドを斬ったのか、いや、斬る体勢になったことさえもレンには見えなかった。


ガルドの体が崩れ落ちていく。レンは「ガルドさん!」と叫びながら、脇構えを取り、女性に向けて駆け抜けていく。


「ほぅ?」


女性は目を細めた。まるで愉快な見せ物を見ているかのような表情。その表情にレンは苛立った。


(見せ物が見たいならとびっきりのを見せてやる!)


レンは雄叫びを上げた。雄叫びを上げながらミカヅチの柄を強く握りしめる。


放つのは「雷電一閃」とみずから名付けた一撃。「雷電」で高速移動してからの抜刀術。


いま使える手札で最高の一撃。その一撃にすべてを懸ける。


そんなレンを見て女性は笑っている。その笑顔を消すべくレンは渾身の力を込めた「雷電一閃」を放ったのだった。

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