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EX-2 嘲笑する悪魔

 特別編二話目はベータテスター二人組の末路です。

 まぁ、末路というほどでもないかもですが。

「しっかりしろ、クロード」


 ファウストはクロードに肩を貸しながら、「アルト」の裏路地を歩いていた。


 相棒であるクロードは重傷を負い、気絶していた。ファウストも気絶させられてしまったが、重傷とまではいかなかったので、こうしてクロードに肩を貸しながら拠点へと向かうことができていた。


「くそ、なんなんだ、あいつらは!」


 最強の一角であるベータテスターである自分たちを一蹴したあの二人組。


 黒髪の剣士はまるで雷を彷彿させるような速さで懐に飛び込んできた。そして黒い稲妻を纏った剣で斬りかかってきた。


 その後はわからないが、クロードの様子を見るかぎり、あの黒髪の剣士ではなく、あの茶髪の女にやられたということなのだろう。


「あの女ゴリラかなにかなのか?」


 クロードの顏はひどい有り様だった。


 鼻と歯が折れて血まみれになり、顔には拳の痕のようなものがくっきりと残っていた。


 どう考えても人間でできることではない。それは自分を倒した黒髪の剣士もまた同じだ。


「なんなんだよ、あの化け物どもは」


 最強の自分たちを倒せるなんてありえない。それもリリースしてから始めたばかりのプレイヤーが倒したのだ。どう考えてもおかしい。明らかにチートなどの違法を行っているとしか思えない。


「早く連絡を──来たか」


 メニューにメールの着信があったという表示が出た。クロードを運びながら運営に件の二人組の違法行為を通報したのだ。


 どう考えてもあの二人組はチーターだろう。となれば、だ。運営に通報するのは善良なるプレイヤーとしては当然の行為と言える。


(これであいつらはアカウントを削除されるだろう。最低でも凍結はされるはず。そうしたら折を見て、あのガキをいたぶればいい。今回の分を込めてせいぜいかわいがってやる)


 ファウストは喉の奥を鳴らすように笑いながら、運営からのメールを開いた。チーターを見つけたことへの感謝の内容だろうと思いこんでいたファウストだった。だが──。


「は? 注意勧告?」


 ──メールの題名にファウストは思わず口にしてしまった。


「お客様による通報を受けて、件のプレイヤーおふたりを精査しましたが、お客様からのお申し出である違法行為はなにひとつございませんでした。いたずらに他プレイヤーを貶めるような誹謗中傷はおやめください。もしお聞き入れされない場合、お客様のアカウントを停止せざるを得ないこともございます」


 メールに書かれた文面をファウストは呆気に取られながら読み上げた。そしてすぐに叫んでいた。


「ふざけんな! あいつらはどこからどう見てもチーターじゃねえか! 恰好は普通だったが、EKもおかしければ、ステータスだっておかしいだろうが!」


 想像もしていなかった文面にファウストは苛立ちを露わにした。


 そもそもチートでなければ、どうやって最強である自分たちを倒せると言うのだろうか。


 ありえない。ありえるわけがない。ありえるとすれば、それはもうチートでしかない。


 いや、もしかしたら運営自体があの二人組と繋がっているのではないのか? 


 ファウストの思考は妄想に近い方向へと突き進んでいく。


「ふざけやがって! 俺たちは善良なプレイヤーだぞ! その善良なプレイヤーをあいつらと手を組んで貶めて楽しいのか!」


 ファウストは空へと向かって叫んだ。いまもモニターでチェックしているであろう運営に向かって罵倒を浴びせかける。


 そんなことをしても無駄なことはファウストもわかっていた。だが、それでも言わずにはいられない。ファウストは散々な罵声を浴びせ掛け続けた。そのときだった。


「所詮は小者か。「井の中の蛙」であったことは一目でわかった。だから泳がせておいてやったのだが、ここまで醜悪な蛙であったか。見ておられぬのぅ」


 鈴を鳴らすような声が聞こえてきた。振り返るとそこには「銀髪の悪魔」が立っていた。それも見下すような目を向けて、だ。


「て、てめぇ、いまなんて」


「「井の中の蛙大海を知らず」と言うた。ああ、それとも蛙でもわかるように「ゲコゲコ」と鳴いた方がよかったかのぅ? だが、我は蛙の言葉を知らんのでな。適当に「ゲコゲコ」と鳴いて「愛している」とか「嫁にしておくれ」なんて言っていたら身の毛がよだつからのぅ。だからこうして我は人としての言葉で言うたのじゃ。すまぬのぅ、蛙語には疎くてな」


 ふふふと「銀髪の悪魔」は笑った。そのひと言にファウストの目の前は真っ赤に染まった。


「ふざけんな! てめぇ、俺が「嘲笑のファウスト」だと知って」


「いや、知らぬな」


「は?」


「だからそなたの名など知らぬよ。顔はなんとなく憶えていたが、名前は知らぬ。そもそも興味もなかった。先から言うているが、我は蛙などどうでもよい。もう少しかわいげがあれば、ほれ女子向けの某テーマパークにいるカエルのキャラクターがおるじゃろう? あのように愛らしい存在であれば愛でてやってもよいかもしれぬが。……ああ、無理じゃな。気持ち悪い。むしろあのキャラクターに失礼かのぅ。リリースされて一か月も経っておらんのに、初心者に返り討ちにされた無能な蛙と同じにされるなどとはな」


「銀髪の悪魔」が見下すように笑った。我慢はできなかった。


 クロードを放り出し、ファウストは自慢のSRのEKである「歴戦の大剣」にて斬りかかった。


「銀髪の悪魔」は動かない。腹の立つ笑みを浮かべたままだった。


(殺してやる!)


 ファウストは雄叫びを上げながら全力で「歴戦の大剣」を振り下し──。


「あくびが出るのぅ」


 ──宙を舞った。なにをされたのかわからない。わかるのは「歴戦の大剣」が天高く舞っていることと、その切っ先がファウストめがけて落ちてくることだけ。


「我が殺すほどの価値もない。初の死亡は自分の得物によってでの方がそなたらしいのぅ」


「銀髪の悪魔」が笑う。だが言い返すよりも速く「歴戦の大剣」の切っ先が喉を切り裂いた。

 実際に「チーター」だって通報して、間違っていたらこういう勧告って来るんでしょうか?

 ネットゲーはやったことあるんですが、オフラインだったので、そういうのはいまいちわからなくて←汗

 次回は明日の正午となります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何度も何度も同じようなことをしてたら警告も来るでしょうねぇ... どこかのゲームで大量の人を些細なことで通報し続けてたら逆に垢BANされたって話聞いた気もしますし
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