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96話 おたまとフライパンの進化

遅くなりました←汗

今回はおたまとフライパンが進化します。

タマモ レベル4→5(EXP超過)


 種族 金毛の妖狐(獣人)


 職業 調理人 双剣士 漁師


 HP 67→74(7UP)


 MP 67→74(7UP)


 STR 3


 VIT 3


 DEX 4


 AGI 4


 INT 3→4(1UP)


 MEN 3→4(1UP)


 LUC 2


 Skill 調理Lv20、鑑定Lv15、尻尾操作Lv3、幻術Lv3、双剣術Lv5、狐火Lv5


装備 姐さん印の巫女服(防御力+5、AGIに補正値(小))


 EK おたまとフライパン(ランクUR)


 おたま(()()()())──「一撃必殺」「必中」「名剣」


 フライパン(()()()())──「絶対防御」「大盾」


称号 クロウラーの理解者、清貧美人、成り上がりし者、「氷結」の謁見者(New)、豪傑の誉れ(New)、スライムの理解者(New)、物々交換者(水)(New)、見極めし者(New)、流星の旅人(New)、氷結王の料理番(New)、(常春の招待状)


残ボーナスナポイント 70


レベルアップの通知後、タマモはステータスを表示させた。相変わらずの低ステータスではあるが、称号がずいぶんと多くなっていた。


(「常春の招待状」だけ表示が違うのは、なるほど「鑑定」では反映されないからですか。本人以外にはわからないようにされているんでしょうね)


称号欄で異彩を放つのが「常春の招待状」だった。他の称号も効果等を確認するとおかしなものばかり取得しているが、「常春の招待状」は表示がおかしかった。ただその内容を確認すると、その表示も納得できるものであった。


おそらくは「妖狐の里」のことを知られないための処置なのだろう。実際リーンは農業ギルドで働いているときは、通常のヒューマンにしか見えないのは、幻術を使用しているからである。


つまり妖狐であることを隠す理由があるということだろう。ただそれは「妖狐の里」を隠すためなのか、それとも妖狐であることを知られないためなのかは判断がつかない。もしくは両方かもしれないが、いまのところ理由はわからないため、どういう事情なのかは推測することしかできない。


(折を見て大ババ様かリーンさんに教えてもらいますかね)


タマモは称号のことを考えるのをやめて、ずっと気になっていたことに意識を向けた。


()()()()、ですか」


ステータスの装備EKの欄には、「進化可能」とあった。掲示板で確認はしていたが、EKはプレイヤーのレベルが5になったとき、最初の進化を遂げる。それはすべてのEKで共通していることのようだった。


もうひとつ共通していることは、進化のためにはE()K()()()()()×()1()0()0()()()使()()()()ことである。レベル5での進化となると、500回の使用ということになる。


タマモの場合は、500回調理を行わなければならないようだが、500回などとうの昔に越しているのだ。あとはレベルアップを果たせば進化は可能となっていたのだが、そのレベルアップが非常に遠かった。


しかしいまレベルアップを果たせた。おそらくは特別クエストをクリアしたことではなく、氷結王の食事を調理したことで大幅に経験値を得られたのだろう。


テンゼンやシュトローム他のスライムたち、アンリとリーンたち相手にも調理はしたのだが、経験値の加算はされなかったようだ。


(どういう計算の処理をしていたんでしょうか?)


どういう計算の処理をされていたのかはまるでわからないが、とりあえずレベルアップができたのであればそれでいい。そしてEKがようやく進化可能となったのであれば、それはそれでいいのだ。その証拠にタマモのEKは白い光を放っていた。


「ほぅ、進化か」


氷結王が目を見開いていた。いや、氷結王だけではなく、大ババ様やテンゼンたちもタマモのEKの変化を見て目を丸くしている。


「これがどういう進化をするのかがまるでわからないな」


テンゼンは腕を組んで首を傾げていた。だが、その言葉にはタマモも内心で頷いていた。おたまとフライパンというヘンテコなEKである。それが進化するとどういう風になるのかはまるで想像できない。


「だからこそ楽しみですけどねぇ」


入手の際の絶望に比べたら、少なくとも強くなることはたしかなのだ。それがどのような強化にせよ、いまよりも強力になるのであればそれでいい。もはや絶望はない。タマモは満を持してEKの欄に触れると、「進化しますか?」という項目が表示された。タマモは迷うことなく「Yes」を選択した。


そのとたんにタマモのEKはいままでになく光り輝いていた。


「ま、眩しい!」


()()()()()()()()()()()()!」


掲示板で調べた内容によると、進化する際にEKはみな一様に輝くようだが、その輝きはそこまで強くはないはずだった。


だが、タマモのEKの輝きはとても強かった。EKそのものを直視できないくらいには。誰もが目を閉じ、輝きが収まるのを待っていた。それはタマモとて変わらなかった。だが──。


「ふふふ、ようやく進化できたねぇ。まぁ、これは()()()()()()()()()()()()けど」


──不意に声が聞こえた。誰の声なのかはよくわからない。だが、たしかに声が聞こえた。うっすらとまぶたを開くとそこには誰かがいた。穏やかに微笑む誰かが立っていた。


「ドラ助をよお助けてくれたねぇ。ドラ助を助けられなかったからイム美ちゃんも死んでいたし。それにふーことドラ助をまた会わせてくれた。ふふふ、これはお礼をせんとあかんねぇ。()()()()かなぁと思うけど、うまぁく使いこなしてなぁ」


声の主はゆっくりと穏やかな口調だった。言っていることは意味不明だが、なにかしらのものをくれようとしているようだった。


「あな、たは?」


「ふふふ、いつか思い出せると思うよ」


声の主はまた笑った。笑いながら手をゆっくりと伸ばしてくる。そしてその手がタマモに触れた。


「我が主たる主神に願う。「()()」と「()」に()()()()()()が一部を解放させたまえ」


それまでのおっとりとした口調が嘘のように声の主ははきはきとした喋り方をしていた。


その声に連動するようにおたまとフライパンからより強い光が発せられた。同時に掌の中がひどく熱かった。だが、不思議なことに掌に痛みはない。むしろどこか心地よかった。


「……頑張ってな、タマちゃん。ふふふ」


その心地よさに浸っていると後ろから抱き締められた。覚えのあるぬくもりだった。そのぬくもりに包まれながら、より強くなった輝きにまぶたを閉じると、ふっとぬくもりは消えてしまった。タマモは堪らず手を伸ばすが、虚空を掴むだけだった。


やがて光がやんだ。まぶたを開いてもそこには声の主はいなかった。ただ手の中にあったおたまとフライパンには明らかな変化があった。


銀のおたま……セットスキル(固定) 「魔法斬り」


銀のフライパン……セットスキル(固定) 「魔法返し」


ステータス上では、名称が異なり、セットスキルには固定されたスキルが表示されている。扱いとしては「取得経験値極減」と同じようで、別枠として数えられるようである。そのスキルは名称だけを見れば、かなり特殊なもののようだ。


それ以外の変化としては、セットスキルの枠が5つに増えていた。セットできるスキルもレベル1からレベル2となり、地味に強化されていた。


なによりもわかりやすい変化としては見た目が変わった。


いままでは鈍い光を放っていたおたまとフライパンが、いまは光沢のある銀色にとなっており、とてもきれいになっている。


「うわぁ、きれいです。まるで新品みたいですねぇ」


わかりやすい変化を遂げたおたまとフライパンを見て、若干興奮するタマモ。そんなタマモの姿に表情を綻ばせる氷結王ほかの面々。しかしその視線に気づくことなく、タマモはおたまとフライパンを空に掲げた。


すでに日は落ちているが、月と星の光によっておたまとフライパンはほのかに輝きを放っていた。その輝きはタマモがかつて望んだ輝きに比べると、まだまだ鈍い。


だが、その輝きがいまは誇らしかった。そんな相棒を手にしながら、タマモは目を輝かせた。


「これからもよろしくです!」


短くも心の底からの一言を投げ掛けると、おたまとフライパンはその一言に呼応するようにきらりと光を放った。


その光にタマモはこれ以上とない頼もしさを感じるのだった。

これで4章は終わりでもいいかなぁと思いましたが、もうちょっとだけ続きます。

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