54話 ぜんぜん悔しくないのです!
昨日は更新できずにすみません←汗
一日中ガチで寝ていました←
おかげで夜寝れなかったけども←本末転倒
不意に聞こえてきた咆哮。
獣系のモンスターのものとはだいぶ異なるようだが、たしかにそれは咆哮であった。そう、咆哮であるのだが──。
「……テンゼンさん」
「うん。タマモさんが言いたい意味はわかるよ」
──なにか様子が異なる。咆哮と言うと、気合いや闘志などが込められたものという印象が強い。なのにいま聞こえてきた咆哮は真逆のように聞こえたのだ。
現にいまも「ぼえぇぇぇーっ!」と咆哮は続いていた。それも連続して聞こえてくる。なにかを訴えているかのように、何度も何度も「ぼえぇぇぇーっ!」と叫んでいた。
なにを叫んでいるのかはさっぱりとわからないが、少なくともなにか言いたいことはあるようだ。ただその言いたいことを言う様子がなにかおかしいのだ。
その違和感がはたして自分だけであるのかをテンゼンに確かめようとしたタマモだが、テンゼンも同じ印象を抱いたようで困惑した様子であった。
ちらりとシュトロームを見やると、シュトロームは大きくため息を吐いていた。その様子を見てタマモはどうやら自分の、いや、自分たちの違和感は間違っていないようだと確信するタマモとテンゼン。そうしてふたりは確信を秘めながら言った。
「「これ、悲鳴だね(なのです)」」
『……うむ。その通りだ』
シュトロームはふたたび大きなため息を吐いた。ため息を吐いてからシュトロームは面倒くさそうに続けた。
『「物理無効とか卑怯です!でもそんな卑怯な方法で負けてもぜんぜん悔しくないのです!」』
「……え?」
「シュトローム、なにを」
『……悲鳴の主の翻訳さ』
ほとほと呆れた様子でシュトロームは言う。その間も「ぼえぇぇぇーっ!」という咆哮は続いていた。
『ちなみにいまは「そもそも物理無効なうえに、そんなに動きが速くて、しかも小さいとか卑怯にもほどがあります!もっと大きくて鈍くて物理攻撃が無効じゃない人を要求します!」と抜かしておるな』
やれやれと呆れきった様子のシュトローム。口にしている内容は、例の悲鳴の主の言葉なのだろうが、どう考えても負け惜しみである。あまりにも清々しぎるほどの負け惜しみだった。
「……相手しているのは」
『我が一族の若いのだな。我らは基本的に物理攻撃は効かん。かといって魔法もそこまで決定打にはならぬ。特にいま戦っている連中あたりからは、だが』
「本当に厄介だよね」
『ふふふ、まぁな』
シュトロームは渾身のドヤ顔を披露した。……あくまでもシュトロームとしては、だが。
(……こんなにもわかりづらいドヤ顔とか、かえって珍しいのですよ)
(相変わらずわかりづらいドヤ顔だなぁ)
シュトロームのドヤ顔を見て、タマモとテンゼンが同じことを思ったのは言うまでもない。当のシュトロームはそのことに気づかず、無邪気にドヤ顔をしているのが、なんともシュールな状況だ。
『まぁ、あれに関しては我ら一族の者に任せておけばよい。ところで北側で探したい物とはなにかな?』
シュトロームは話題を変えて、本題を聞いてきた。タマモとテンゼンはジャポニカ米の稲のことを、バラエティー番組やゲーム等で見知った稲のことを事細かくシュトロームに伝えた。
最初は『ふむふむ』と頷いていたシュトロームだったが、次第に表情が険しくなっていき、ついには深いため息を吐いてしまった。その変化にひどく嫌な予感を覚えるタマモとテンゼン。その予感は現実のものとなった。
『……その穀物は奴とだいぶ深い関係にある』
シュトロームはたっぷりと時間を掛けてから言った。絞り出すように言った。その言葉にふたりは「あぁ、やっぱり」と思った。それでもふたりはあえて尋ねることにした。
「その奴とは」
「もしかして」
『うむ』
「ぼ、ぼえぇぇぇーっ!?」
『奴だ』
若干目を虚ろにするシュトローム。その様子に「あぁ、やっぱり」と同じことを思うタマモとテンゼン。
『……では、行こうか。面倒極まりないが、一応な』
「……はい」
「……あぁ」
シュトロームが進路を例のモンスターの居場所へと変えて進んでいく。その足取りは心なしか重たい。その後を追うタマモとテンゼンの足も若干重かった。
そうしてゆっくりと3人は移動し、ほどなくしてそれなりに大きな沼がある開けた場所に出た。その沼には──。
「す、スラ」
「スララぁ」
「スラ、スラスララぁ」
──疲れきった様子の数匹のスライムと その体の下でピクピクと、体を痙攣させて目を回している一頭の鯨がいたのだった。
ちなみにスライム三匹のセリフはそれぞれ「つ、疲れた」「もう、やだぁ」、「本当に、こいつ面倒くさいよぉ」となります←




