42話 藍那の笑顔
「う~ん。リアル狐ちゃん、マジヤバいわぁ~」
藍那は恍惚顔になっていた。
対してまりもは、げっそりした顔をしている。藍那による頬擦りですっかりと精神力を削られていたのだ。
対して藍那は、とても満足げだ。見開かれた瞳にはハートマークが見えるが、あまり気にしてはいけない。
「……ボクは逆の意味でヤバいのですよぉ」
げっそりしながらまりもは藍那を見やるも、藍那は特に気にした様子もない。
むしろまりものげっそりした様子さえも肴にしているようだ。
「藍那さん、いい加減ウザいのですよぉ」
「ふふふ、そう言ってお嬢様はウザがるふりをしていますが、本当は嬉しいんですよねぇ?藍那には、お嬢様の性癖などとっくにお見通しですよ?」
クスクスと笑いながら藍那は、まりもの体を強く抱き締めていく。
まりもの水平な胸元に、藍那のほどよい大きさの胸が押し潰されていく。
「……むぅ」
「ふふふ」
藍那はにやりと笑った。まりもとしては認めたくないことなのだが、藍那の胸もまたまりもにとっては至高の逸品であった。
(大きさはそこまでではありませんが、服と下着越しでもはっきりとわかる柔らかさとボクの胸を押し返す弾力はまさに至高!いい仕事をしているのですよ!)
くわっと目を見開きそうになりつつも、藍那の胸称賛するまりも。そんなまりもを見て藍那は、それまでの妖しい笑みを止めて、とても穏やかそうに笑っていた。
まりもを見る目はとても優しい。
それまでの「リアル狐ちゃん、はぁはぁ( * ´ Д ` )」はどこへ行ったのか、まっとうな愛情をまりもに向けていることがよくわかる。
だが、その当のまりもは藍那の愛情にはまるで気づくことなく、脳内でのお胸ランキングの更新作業に忙しくしていた。
そんなまりもの姿に、藍那はやはり穏やかそうに笑う。その姿はまるで少し年の離れた妹を愛でる姉のようにも見える。
だが、藍那とまりもの間に血縁関係はない。だが、いまの藍那が浮かべる笑みは、年上の血縁者を想わせるものだった。
だが、その笑顔をすっと消して藍那は、それまでのような妖しい笑みを再び浮かべた。
「ふふふ、藍那の思ったとおりですね?」
「はっ!?」
「やはりお嬢様は胸がたいそうお好きでしたねぇ。お姉様よりかは小振りですが、ご満足いただけたようでなによりですよ」
ニヤニヤと笑う藍那。その藍那の笑顔に体を震わせるまりも。
しかし藍那は止まらない。
「さて、藍那の胸を堪能した分、藍那にもお嬢様を堪能させていただきますよ?具体的にはお嬢様を、ふふふふふ」
「その「ふふふふふ」はなんなんですか!?具体的にとか言って、ぜんぜん具体的じゃないのですよ!?」
「あら、言った方がよろしいので?」
「やめてください、死んでしまうのです!」
藍那がなにを言おうとしているのかは定かではないが、身の危険をひしひしと感じるまりも。
だが、当の藍那はぺろりと唇を舐めるだけで、まりもの懇願を聞く様子はない。
「さぁさぁ、楽しませていただきましょうか?まりもお嬢様には、藍那の子を宿して──」
「宿せるわけがないのですよぉ!?」
藍那のあんまりな一言にまりもは叫んだ。だが、「武闘大会」の際に自身が考えていたことをすっかりと忘れているようだ。
もっともそのことを指摘したところで、「それはそれ。これはこれ」と言われるだけだろうが。
「まぁまぁまぁまぁ。お嬢様は藍那の胸を味わっていてください。天井の模様の線を数えている間に終わらせらますので」
「言っている意味がわからないのですよぉ!」
まりもは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。そんなまりもに藍那は、ふたたび穏やかな笑みを浮かべた。
だが、その笑顔に気づくことなくまりもは、藍那に徹底的に弄られ続けることになったのだった。
明日は通常更新に戻っているといいなぁ←




