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27話 出会い~あんたを斬る~

むぅ、また終わらなかった←汗

テンゼンとエンシェントスライムとの決闘は、やや一方的な攻防となった。


いままでとは違い、いままではまるで様子見であったかのように、エンシェントスライムの攻撃は熾烈だった。


体の一部を変化させて槍のようにしていた攻撃は、それまではひとつだけだった。


だが、本気を出してからは、全身から無数の槍を放つようになっていた。


そして槍ひとつひとつの柄からは、やはり無数に伸びる槍が放たれた。そのすべてが高速でテンゼンに襲いかかった。


テンゼンは無数の槍をすべて紙一重で避けた。がその動きには華麗さはない。地面を転がることもあれば、川の中に飛び込んで目眩ましをすることもあった。


その動きには華麗さはない。


あるのはただ生きようとする意志だけ。生き残ったうえで、なにがなんでも勝とうとする強い意志。


テンゼンにとって、仮にエンシェントスライムを斬ったところで死ねば負けだ。


かといって、生き残れても斬れなければ、やはり負けである。


生き残ったうえで斬る。それがこの決闘での勝利となる。


そんなテンゼンの意志をエンシェントスライムは感じ取っていた。


感じ取ったうえで攻撃を熾烈化させていく。


(やはり強いなぁ、このスライム)


勝利条件をみずから定めたテンゼンではあるが、その条件が途方もなく遠いことを痛感していた。


斬るためにはエンシェントスライムの懐に入らなくてはならない。


だが、その懐に入るのが途方もなく厳しく、そして遠かった。


(……うちの爺様とやっているみたいだな)


テンゼンの剣の師である祖父は、テンゼンとテンゼンの兄弟子にあたる長兄の親友と口を揃えて「天下無双」と謳えるほどの使い手だった。


もっとも祖父が言うには、そんなものには意味はないとのことだった。


どんなに強くてもずっと勝ち続けられる訳じゃない。どんなに強くてもいつかは負けてしまう。それは対峙する相手という意味でも、自分自身に対してもいつかは負ける。


だが、仮に負けたとしても生き残れればそれでいい。


生き残れれば、その敗北から学ぶことはある。


そうして学んだものからいつかは勝てばいい。


つまり生き残ることは先の勝利に繋がる。目先の勝ちに拘らず、常に生き残ることを考える。それが祖父の教えだった。


だが、その教えからテンゼンは逸脱しようとしていた。


(これはゲームだ。究極的に安全な状況で生き残ることばかり考えても仕方はない。いや、考えはするけど、二の次でいい)


現実であれば、生き残ることは常に考える。だが、いまはゲームの中にいる。いわば絶対に安全な状況にある。そんな状況だからこそテンゼンは、あえて生き残ることだけを考えるのをやめることにした。


生き残ったうえで勝つ。


生き残るだけでも至難な状況にあって、あえてその上を目指すことにした。


思考の切り替えをした証拠に、テンゼンは初めてムラクモを振るった。エンシェントスライムの放つ無数の槍に目掛けてムラクモをただ振るった。


エンシェントスライムは物理攻撃を無効化する。それはエンシェントスライムの放った槍は、エンシェントスライムの体の一部を硬化したもの。ゆえに物理攻撃は同じく無効化する、はずだった。


だが、テンゼンのムラクモはエンシェントスライムの体の一部である槍を切断した。


エンシェントスライムの体を一部とはいえ、切断したテンゼンに森の中のモンスターたちからはどよめきが上がった。


『……やはり、斬られてしまうか』


だが当のエンシェントスライムはそれが当然のように振る舞っていた。動揺は見られない。


そんなエンシェントスライムにテンゼンは再びムラクモを斜めに構えて言った。


「あんたを斬らせてもらうよ、エンシェントスライム」


テンゼンは鋭くエンシェントスライムを睨み付けながら言い切った。

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