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25話 出会い・前編

今日明日はテンゼン視点となります

テンゼンが氷結王と初めて会ったのは、ログインした初日だった。


SSRランクのEKであるムラクモの試し切りをするための相手を探していたとき、ここ「死の山」のことを知った。


テンゼンが最初にログインしたのは、リリース翌日、ゲーム内時間で言えば3日目にあたる。


すでに「死の山」の恐ろしさが知れ渡っており、一部の諦めの悪いプレイヤー以外は近づかなくなっていた頃だった。


テンゼンは水と食料といまも使っているフード付きの黒い外套、そして店で投げ売りされていたなまくらの刀だけを持ち、「死の山」へと向かった。


「死の山」の玄関口である滝つぼには当時それなりの規模のキャンプ地があった。


一部の諦めの悪いプレイヤーが集まってできたキャンプ地だったが、テンゼンがたどり着いた頃には、全員がログアウトした後だった。


掲示板で滝の裏側に洞窟があることは知っていたが、ほかの情報も現地で仕入れるつもりだったのだが、当てが外れた。


小さく舌打ちをしつつ、テンゼンは足を踏み入れた。


その直後にヒュドラに襲われてしまった。ヒュドラは強敵だったが、ムラクモを抜くほどの相手だとは思えなかった。


なまくらの刀だけで撃退したが、命は取らなかった。


ヒュドラの目には必死さを感じた。


命のやりとりをしているのだから、必死になるのは当然のことだ。


だが、そのヒュドラからは自分の命を守るためではなく、自分の命よりも貴いなにかを守ろうとしているように思えた。


「子供か年老いた親のためかな?」


守るべき者がいる者は強い。それはテンゼンが子供の頃から剣の師である祖父に教えられたこと。


最初テンゼンはヒュドラは自身の子供や親のために必死で戦っているのだと思った。


だから殺さずにある程度痛めつけると、その脇を通り過ぎたのだ。


ヒュドラは途中までテンゼンを追いかけていたが、洞窟に新たな侵入者が来たようで、無念そうに道を引き返していった。


そうしてヒュドラから逃れたテンゼンだったが、その後も洞窟を抜けるまでの間に、バジリスクなどの蛇身のモンスターに襲われた。


「……こいつもか」


出会うモンスターはすべて共通して必死だった。必死になにかを守ろうとしていた。


襲いかかるモンスターたちをすべて撃退もしくは隙を見いだしての逃亡という形で切り抜けていった。


そうしてどうにか滝つぼの洞窟を抜けると、今度はオーガやヴェノムスパイダーなどのモンスターがはこびる森にたどり着いた。


その森のモンスターたちもやはり必死だった。


どうして出会うモンスターはどれもこれも必死なのか。テンゼンにはわからなかった。わからないまま森を抜け、滝の上流の小川にとたどり着いたとき。


「スラ!」


一匹のスライム。後に「シュトローム」とテンゼン自身が名づけることになる友人とテンゼンは出会ったのだった。

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