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21話 いざ出陣です!

 書いていたら長くなってしまいました←汗

 普段よりもちょっと増量ということでひとつ←笑

 五日後──。


 いつものようにログインしたタマモは、使い慣れた農業ギルドの一室から出た。


「おはようございます、タマモさん」


「おはようございますです」


「おぉ、おはよう、タマモちゃん」


「あ、はい、おはようございます」


 すっかりと顔なじみになった職員やファーマーたちと挨拶を交わしながら、タマモは小川の先にあるみずからの畑へと向かって行く。


 数日前までとは畑の様子はだいぶ変わった。


 それまでは固い土壌であり、畝さえも作っていない、本当に畑なのかと自分でも思ってしまうものだったが、いまは誰が見ても畑だと思えるものにはなっていた。


 いや、それどころかもしかしたら、自分の畑がこのギルドで一番の畑なのではないかという自信さえタマモにはあった。


 ……もっともまだ植えているのはキャベベだけなので、タマモが勝手に思っているだけのことではあったが、それでもキャベベだけであれば、誰にも負けないという自負をタマモは抱いていた。


「ふぅ、今日も見事なのです」


 小川を超えると収穫時期を迎えたまるまると大きなキャベベが畝の上に実っていた。


 畝の、というか畑の土は足を踏み入れたら、足を取られてしまいそうなほどに柔らかくなっている。


 少し前までは学校のグラウンドかと思うような固い土だったのが嘘のようだ。


「ボクの畑なのです」


 改めて言うことではないだろうが、それでもタマモは口にしていた。


 これが自分の努力の成果なのだと。……まぁ、タマモだけが頑張ったわけではないが、それでもクーたちと頑張って作り上げた成果だった。


 その畑の土を踏みしめながらタマモは畝へと向かって行く。実ったキャベベを収穫するためだった。


 それもひとつやふたつではない。畝の上にあるキャベベはすべて大玉と言っていいサイズとなっている。それをすべて収穫する予定だ。


 まずタマモは目の前にあるキャベベをおもむろに掴むと勢いよく引っこ抜いた。


 形は少し悪いが、サイズはいい感じだった。


 そうして収穫したキャベベをイベントリにしまうことなく、タマモは畑の向こう側──ログハウスの建設予定地へと向けて声をかけた。


「みんなー、今日のご飯ですよー」


「きゅー!」


 声をかけると、クーがひょっこりと顏を出し、飛び跳ねながら畑へと向かってくる。


 その後をほかのクロウラーたちや虫系のモンスターたちがぞろぞろと続いてくる。


 その光景は虫嫌いの莉亜が見たら卒倒しかねない光景ではあるが、タマモはとっくに慣れてしまっていた。


「はい、どうぞ。まずはクーからですよ」


「きゅー!」


 クーの前に採れたばかりのキャベベを、大玉のキャベベを置くと、クーはいつものように跳び上がって喜んでくれた。


 そんなクーを羨ましそうにほかの虫系モンスターたちが見つめている。


 タマモはおかしそうに笑いながら、すでにイベントリにしまっておいた残りのキャベベを振る舞っていく。


 クーを始めた虫系モンスターたち全員が嬉しそうにキャベベを平らげていく姿を見ながら、それっぽい形になったログハウスを眺めた。


「……本当にクーたちのおかげなのですよ」


「クロウラーの理解者」の称号を得たことでタマモの農業と建築は一気に進展した。


 それまでひとりっきりで進めていたことが、クーたちの協力を得られるようになったのだ。


 具体的には固かった土は、どうやったかは定かではないが、クーが呼んでくれたリトルワームというモンスターたちが協力して耕してくれたし、いつできるか不透明だった腐葉土もリトルワームたちが協力してくれたおかげですぐに完成してくれた。


 名称 腐葉土 評価5 畑の栄養素のひとつ。評価によって収穫できる野菜の品質が上がる。


 鑑定の結果はまずまずというものだったが、自家製の腐葉土ができてくれたことは嬉しかった。


 ……できることならタマモの力だけでできてくれればより嬉しかったが、贅沢は言えなかった。


 ただたい肥だけはギルドで購入できるものを買った。


 購入資金はクーを始めたとしたクロウラーたちの友好の証として絹糸を売ることで得られていた。


 絹糸は一日につき一回だけしかもらえない。


 だが、それはクロウラー全体ではない。個体ごとに一日ひとつ。


 確認しているかぎりでもタマモに協力してくれているクロウラーはクーを入れて十匹。


 つまり日に十個の絹糸を得られるようになったのだ。評価は5や6のものだが、品質はすべてAのものをだ。


 そうして得た絹糸の半分は姐さんに卸し、もう半分はオークションに出した。


 姐さんには無料で卸しているが、オークションには姐さんの助言を聞いて1万シルで出している。


 タマモの初期資金の十倍の値段であるはずなのだが、開始わずか数分で10万シルまで高騰していたのには驚かされてしまった。


 もっとも10万シルで売れたのは最初の一回だけだが、それ以降でも2、3万シルで売れてはいる。


 だが、絹糸が高騰しているのも「クロウラーの理解者」を得ているのがタマモであるうちだけだ。


 もっとも大抵のプレイヤーはまだ「敵対者」の称号を得てしまっているままなので、「理解者」になるにはそれなりの時間がいるはずだ。


 だからこそいまのうちにできるだけ稼いでおこうとタマモは考え、できるかぎりキャベベを育てていた。


 その結果タマモは一気に小金持ちになった。しかし無駄使いをする気はなかったので、農業ギルド内に大半は預けている。それでも常に手持ちに1万シルほどは残していた。


 潤沢な資金を得られたので、材料など買えばいいだけの状態ではあるが、それでもタマモは一度決めたことを途中で放り出すつもりはなかった。


 それにお金で買えない価値のものをこの二週間余りで得られたのだ。お金を得られたからと言って放り出す気にはなれない。


 加えて、クーたちも畑仕事だけではなく、ログハウスの建設も手伝ってくれている。


 タマモがしていた地ならしはリトルワーム同様にどうやって呼んだのかはわからないが、ダンゴムシの魔物であるボールバグたちが転がってくれたおかげで終った。


 埋まったままだった切り株や木の根はカブト虫の魔物であるリトルビートルたちが掘り起こしてくれた。


 リトルビートルたちはいま木材の運搬をしてくれている。


 クロウラーたちは運搬された木材を糸で固定してくれている。


 ひとりでやっていたら、運搬だけで一日がかりだっただろうが、クーたちのおかげですんなりとログハウスの建設を行えていた。


 タマモの作業はいまやクーたちに指示を与える現場監督とリトルワームたちと協力して行う畑仕事だった。


 自家製の腐葉土と農業ギルド特性のたい肥、リトルワームたちの尽力により、タマモの畑は当初の評価1ではなくなった。


 名称 畑 評価6 栄養十分の畑。中評価の野菜を育てることができる。時折高評価の野菜ができあがることもある。土はふかふか。


 鑑定した畑の評価は一気に五つも上がっていた。


 その成果が大玉のキャベベたちだった。そのキャベベの半分はクーたちのご飯になり、半分の半分、全体の四分の一は農業ギルドに卸していた。


「始まりの街アルト」付近ではキャベベの人気は高く、その分農業ギルドではキャベベを納品すると、貢献度を多く得られる。


 反面買い取り額はそれほどではないが、いままでの恩を返せるのであればなんの問題もなかった。


 そして残りの四分の一をタマモは貯めこんでいた。


 だがそれも今日までである。資金もある。材料も得られた。となればするべきことはひとつだけだった。


「よぉし。今日の仕事も終わりなのです。というわけで、クー。あとはお任せです。ボクは経験値を稼ぎに行くのです!」


 畑仕事を終えると、タマモはクーに代理監督を任せた。


 クーは虫系モンスターたちのリーダー的存在になっており、タマモがいなくてもちゃんと指示を出してくれる。


 むしろタマモよりもきちんとした指示が出せたりするのだが、タマモはあえて気にしなかった。芋虫に負けたと思うと悲しくなるだけであるからだ。


「きゅ!」


 クーは力強く頷いてくれた。これで建設に関しての憂いはない。


 脱線したため、すっかりと後回しになってしまっていたが、もともとの目的を果たすのである。


 そう、レベルアップのための経験値稼ぎ。すなわち「調理」をしに行くのだ。


「頑張りますよぉ!」


 タマモは希望に満ち溢れながら、ひさしぶりに「アルト」の街へと向かって行ったのだった。

 順風満帆に見えるタマモですが、大事なことを忘れていますが、そのことは次回にて。

 続きは明日の正午となります。

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