EX-11 拠点・前編
お久しぶりです。
まさか、5日間も更新しないとは思わなかったです←汗
9月はずいぶんとまぁ←汗
さて、今回で第3章は終わるはずでしたが、もう1話追加となります。
具体的に言うと、終わらなかったので←トオイメ
一瞬の浮遊感の後、タマモたちはむき出しの地面を踏みしめていた。
それまで立っていたのは、舗装された通路だったが、いま立っているのは舗装などは一切なされていないありのままの地面だが、完全に人の手が入っていないわけではない。人が通って踏み固めたあぜ道はある。そのあぜ道の先には様々な収穫物が実りを迎えていた。
アルト近郊にある「農業ギルド」の敷地内にある農地。それがいまタマモたちのいる場所であり、「武闘大会」に参加表明をした場所でもある。
「……戻ってきたね」
ヒナギクが囁くように言うと、レンが「そうだな」と頷いた。残るタマモはレンの背中で眠っていた。レンからではどうやっても見られないが、ヒナギクからしてみれば笑ってしまいそうなほどに穏やかな寝顔だった。ヒナギクの中ではいろいろと複雑なものはあるが、ありのままの寝顔を浮かべるタマモを見ているとその複雑なものもどうでもよくなってしまう。
「お疲れ様、タマちゃん」
くすくすと口元に手を当てて笑うヒナギク。だが、タマモは返事をすることなく、むにゃむにゃと言葉になっていない声を上げつつ口元を動かすだけである。そんなタマモにヒナギクは再び笑ってしまった。それはタマモを背負っているレンもまた同じである。
このとき、「闘技場」から戻ってきた数名のファーマーがタマモたちを目撃していた。そして目撃したファーマーたちは口々に「理想的な家族がいた」と言ったそうだが、それはまた別の話となる。
「きゅ?」
不意に聞き覚えのある鳴き声とともに這うような音が聞こえてきた。振り向くとそこにはデフォルメされた顏を持つ巨大な芋虫がいた。その芋虫は嬉しそうに「きゅ! きゅ! きゅ!」と短く鳴きつつ、ヒナギクたちの方にと近寄ってくる。
「ふぁ?」
芋虫の接近とともに眠っていたタマモが目を開けた。同時に芋虫は大きくジャンプした。結果、芋虫はタマモの頭上に舞い降りた。正確に言えば、タマモの頭上に落ちてきた。
だが、寝ぼけたタマモに受け止めることなどできるわけもなく、落下する速度と芋虫の自重による一種の攻撃を直撃することになった。その際「ぐえ」とっ蛙の潰れたような声が上がるもヒナギクとレンは気にしなかった。加えて言えば、芋虫が着地したのはちょうどタマモの顏の辺りだったことが災いし、タマモは後頭部から地面に着地することになった。その激痛により覚醒&のたうち回るタマモ。そんなタマモのお腹の上で「きゅ! きゅ! きゅ!」と嬉しそうに鳴きながらジャンプする芋虫。そんな芋虫に向かってタマモは叫んでいた。
「な、なにするんですか、クー!」
涙目になって巨大芋虫ことクーを睨み付けるタマモ。しかしクーは気にすることなく「きゅ!」と胸を張るだけである。芋虫の胸がどこであるのかは気にしてはいけない。
胸を張られつつ見下ろされる現状にタマモはどうしたものかと思っていたが、ヒナギクとレンが驚いたような声を上げている。
どうしたのだろうとふたりが見ている方を見やろうとしたが、当のクーが「 きゅ! きゅ! きゅ! 」と跳び跳ねているため、見たくても見られなかった。ついでに跳び跳ねている場所はタマモの胸であるため、地味に痛い。もしなだらかでも谷間ができる丘があれば、いや、谷間にならずとも傾斜がある坂くらいがあれば、クーとて跳び跳ねることはなかっただろう。
しかしタマモには丘どころか坂さえもない。完璧に舗装された直線が存在するだけである。クーにしてみれば実に跳び跳ねやすいことだろう。
愛でる側であるタマモにとってみれば、自身のそれの大きさなどどうでもいいことだが、今日ばかりは直線であることを恨めしく思えた。
「うわぁ、頑張ったんだね、クーちゃん」
「すごいな、クーは」
直線であることを珍しく恨めしく思っていると、ヒナギクとレンが感嘆とした声を上げている。
ますますなにがあったのかを知りたくなったタマモは、クーに「ごめんなさい!」と謝りつつ、腹筋の要領で一気に起き上がった。
下にいるタマモが一気に起き上がれば、胸の上にいたクーは当然巻き込まれてしまいそうなものだが、クーはタマモの起き上がりに合わせて「きゅ!」と短く鳴きながら、後ろ向きにくるりと回転していた。それどころか、空中でその身を斜めに捻るようにして回転していた。しかもドヤ顔である。これ以上とないドヤ顔で捻り回転を加えながらクーは静かに着地した。まるで両手を掲げるようにして触角をビシッと揃えて着地していた。
「クーちゃん、すごい!」
「さすがはクーだな!」
ヒナギクとレンがクーを讃えるようにして拍手を贈っていた。
当のクーは「きゅ!」と鳴きながら、「どんなもんだい!」と胸を張っていた。その表情はやはりドヤ顔であるのがなんとも言えない。
釈然としないものを感じつつも、どうにか起き上がれたタマモはクーに一言言ってやろうとしていた。
だが、起き上がったことでようやく見られた光景に、飛び込んできた光景にタマモは言葉を失った。
タマモの、タマモたちの視線の先には完成したログハウスがあったのだから。
「か、完成したのですか?」
視線の先にいるクーに尋ねると、クーは触角を器用に矢印の形に動かして「来いよ」と言わんばかりのドヤ顔を浮かべた。
もっともタマモたちには「 きゅ! きゅ! きゅ!」としか言っているようにしか聞こえない。
それでもクーが完成したログハウスにタマモたちを案内しようとしていることは理解できた。
タマモたちはお互いの顔を見合ってからクーの後を追う形でログハウスへと向かった。




