表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/1000

69話 とりあえず、おまえをぶっ潰す(Byタマモ

 サブタイがわりと過激ですが、まぁ、うん。

 アッシリアと一時間後に会う約束を取り付けたタマモ。


 約束の時間までなにをするべきかと思い悩む──はずだった。しかし現在のタマモは思い悩む以前の問題にと巻き込まれてしまっていた。


「ほぅ。では、あなたがかの高名な「通りすがりの狐」さんでしたか。お目通りが叶って光栄です」


「は、はぁ」


 現在タマモは「ザ・ジャスティス」のマスターであり、アッシリアを「姉様」と呼ぶ弓士のナデシコとなぜかティータイム中だった。どうしてこうなったのかはタマモ自身さっぱりだった。


 アッシリアと約束をし、見送ってから「これからどうしようかな」と思っていた矢先に、いきなり後ろから肩を掴まれたのだ。「ほえ?」と首を傾げながら振り返るとそこには──。


「ちょっとよろしいですか?」


 ──にこにこと笑うナデシコがいた。そう、ナデシコは笑っていた。


 笑っていたのだが、あれをはたして笑顔と言っていいのかはタマモにはわからなかった。


 なにせナデシコ自身は笑っていたが、その目はとても剣呑だったのだ。思わず小さく悲鳴を上げそうになるほどには。


(ヒナギクさんと同じタイプですよ、この人!)


 ナデシコの笑顔を見て、タマモはナデシコがヒナギクと同じタイプの女性であることを理解した。


 すなわち怒らせたらまずいタイプの人物だと理解したのだ。


 となれば、下手な言動は身を滅ぼすことになる。


 であれば、余計なことは言わず、流れに沿って行動するのが一番無難であると考えたのだ。


 だが、その結果がなぜか「闘技場」内にあるカフェでお茶をするというよくわからない展開になっていた。


 いったいなにがどうなってこうなったのかがタマモにはさっぱりだった。


 しかしナデシコは優雅に長い脚を組んでお茶を啜っていた。


 着ているのは和服なのに飲んでいるのは紅茶だった。画面的にはとてもシュールな光景である。


「あ、あの、なんでボクをご招待していただけたんですか? えっと」


「ああ、これは失礼を。私はナデシコと申します。PKKのクラン「ザ・ジャスティス」のマスターを勤めさせていただいております。以後よしなに」


 ナデシコは静かに頭を下げながら名乗った。タマモも慌てて名乗り返した。


「こ、これはご丁寧にどうもなのです。タマモです」


「これはご丁寧に。ですが、タマモ殿のお名前は存じ上げておりますよ」


「え?」


 慌てて名乗り返したのだが、なぜかナデシコはタマモのことを知っているようだった。


 だが、タマモは今日初めてナデシコと会ったのだ。なのになぜナデシコはタマモの名前を知っているのだろうか。


「なにせあなたは「ガルキーパー」と「フルメタルボディズ」のマスターたちを連続で撃破した、期待の新人ということで我らの間でも噂されておりますからね」


「ぼ、ボクがですか?」


「ええ」


 ニコニコとナデシコは笑っていた。期待の新人と言われてこそばゆさを感じるタマモだった。


 そんなタマモを見てナデシコの口元がわずかに歪んだ。だが、そのことにタマモは気づくことはなかった。


「さて、タマモ殿」


「は、はい」


「私どもがあなたをここまでご招待したのは、あなたとアッシリア姉様とのご関係を聞きたいということなのです。なにやら知己の仲のご様子でしたが、どこかでアッシリア姉様とお会いしたことがおありなので?」


 ナデシコは首を傾げながらタマモを見つめていた。穏やかな表情だった。そう、穏やかな表情なのだが、なにかを隠しているように見えた。いや、なにかを探ろうとしているようだった。


(……なんでしょうね、この人。どうにも様子がおかしい気がするのです)


 期待の新人と言われて喜んでいたタマモだったが、ナデシコの言動に引っ掛かりを感じ取った。それがなんなのかはいまひとつわからない。だが、あまり好ましくないことのようにも思えた。


(……ひとつカマをかけてみますか)


 相手の腹積もりがわからないのであれば、馬脚を露わにさせればいいだけのことだった。


(この人が本当のことを話していたのであれば、あとで謝ればいいだけですし。そもそもなにかを隠しているのだから、この人だってボクを責める道理はありません。仮に責めてくるのであれば──)


「そうですねぇ。ボクもすぐには思い出せなかったのですけど」


「ということは、どこかでお会いしたことが?」


「ええ。そうなのです」


 タマモは頷いた。頷きながらうっすらと目を開いてじっとナデシコを見つめる。


 ナデシコはなにか考えているようで、口元を押さえながら思案顔である。


 その姿にはタマモは憶えがあった。正確にはナデシコと会ったことがあるということではなく、似たようなことをしていた連中に憶えがあるのだった。


「アッシリアさんのことはすぐには思い出せなかったんですが、お顔をまじまじと見てようやくわかったんですよぉ」


「わかった、とは?」


 ナデシコは真剣を通り越して、剣呑そうな目でタマモを見つめていた。その目にも憶えがあるタマモ。同時にナデシコの腹積もりをなんとなく理解できたのだった。


(ふむ。これは確定ですかねぇ。となると憶えがあるのも当然ですかぁ。……アリアは本当に変なのにも好かれてしまうのですねぇ)


 アッシリア、いや、幼なじみの莉亜は男女ともに人気があるのだが、時折歯止めが壊れているような連中にも好かれてしまうのだ。


 もっとも歯止めが壊れているとはいえ、常識までもが壊れているわけではないので、話をすれば大抵は理解してもらえるが、中には過激な連中もいるのだ。そしてそういう過激な連中を見つけた場合、まりもがすることはただひとつだ。


「ええ、彼女のことをようやく思い出せたのですよぉ。ボクと彼女はですねぇ~」


 にこにこと笑いつつ、タマモは心の中ではっきりと宣言した。


(とりあえず、心をバキバキに折らせてもらって、次はもう二度とアリアに対して余計なことをさせないようにしないとですねぇ)


 目には目を、歯には歯をという教えもあるのだ。


 過激な連中にはより過激な方法で心をぽっきり折らせてもらおう。


 いや、折るだけでは生ぬるい。こういう手合いにはもっと相応しい対応がある。そう、それは──。


(正直わりと好みなタイプですけど、仕方がないですよねぇ。潰さないといけないのです)


 ──徹底的に潰すということだった。これまでも「玉森まりも」として、使える手札はすべて使って莉亜を困らせるような過激な連中を文字通り叩き潰してきたのだ。


 であれば、今回もまた同じことをすればいいだけのことである。たとえ相手がPKKだろうがなんだろうが、そんなものは知ったことではない。


(とりあえず、ぶっ潰すので、覚悟しやがれ、おまえなのです)


タマモはニコニコと笑いつつも、ナデシコの心を木っ端みじんにするべく思考を巡らすのだった。

 わりと物騒なタマちゃんでした←

 次回はナデシコ視点です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ