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65話 タマモとアッシリア

「ザ・ジャスティス」とアッシリアの戦いは始まった。


 アッシリアはひとりなのに対して「ザ・ジャスティス」は5人全員だった。


 どう考えても多勢に無勢だが、アオイも残りの男性プレイヤーもまたアッシリアの助力をしようとはしていなかった。


 後ろでその戦いを観戦しているようだった。


「いくらなんでも、あれは」


 タマモはなぜか動かないアオイたちに困惑していた。


 後ろの席に座っているヒナギクとレンも戸惑っているようだ。


「あれじゃ、あのお姉さんがリンチされるじゃんか!」


 隣の席のサクラは憤慨していた。


 サクラの言うとおり、いくらアッシリアが最高のPKKであったとしても、同じPKKを5人相手するなど無謀きわまりない。


 しかしアッシリアの行動をアオイたちは止めない。


 それどころかなぜか観戦しているプレイヤーたちもなにも言わないのだ。


 一種の禊とでも考えているのだろうか?PKKたちを裏切ったことへの禊だというのだろうか?


「サクラ。興奮しすぎ」


 憤慨しているサクラを落ち着かせようと声を掛けるローズ。


 しかしサクラは落ち着くことなく憤慨していく。


「だって、あんなのひどいぞ! いくら裏切ったからってあんなの!」


「それを決めるのは彼らだよ。部外者が口出ししていいことじゃない」


「だけど!」


「それに、あんたが考えているような展開にはならないよ」


 ローズはあっさりとした口調でよくわからないことを言っていた。


 サクラが「どういうこと?」と首を傾げたそのときだった。


「うおりゃぁぁぁーっ!」


「ザ・ジャスティス」のひとりが、先頭にいた大剣士がその手に持つ大剣を振りかぶりながら突撃していく。


 狙いはアッシリアなのだろうが、アッシリアは構えを取ることなく、腕を組んでいた。腕を組みながら大剣士をじっと見つめている。


「あ、アッシリアさん!」


 タマモは思わず叫んでいた。


 するとアッシリアがなぜかタマモを見て笑った。そして口をゆっくりと動かしてなにかを言っていた。だが、なにを言っているのかはわからなかった。


「「安心して」だってさ」


ローズがタマモの頭に手を置きながら言う。


「ローズさん、読唇術が?」


「少しだけね。でもなんでタマモちゃんに言っているんだろう?」


 ローズは不思議そうに首をかしげていた。


 たしかになぜタマモを安心させようとしているのかはわからない。


 タマモ自身、アッシリアと会ったのは2日目が初めてだった。


 だが、初めてのはずなのにどうしてかアッシリアといるのは落ち着いた。


 わりと人見知りする質のタマモなのだが、なぜかアッシリアにはその人見知りが発動しない。


 むしろアッシリアのそばにいるのはとても心地よい気がしたのだ。


 それがどういうことなのかはアッシリアの素顔を見るまではわからなかった。


 だが、いまはなんとなくわかるのだ。


(もしかして本当にアリアなの?)


 あの心地よさは幼馴染の莉亜と一緒にいるときのようだった。


 加えて莉亜と瓜二つの顔をしている。肌は莉亜よりも焼けてはいるが、莉亜の肌も少しだけ日に焼けているため、そこまで大きな差はなかった。


 そしてその名前は莉亜のあだ名である「アリア」によく似ていた。


 普段莉亜は、ゲームの主人公には「アリア」と名付けるが、「EKO」では気分を変えて違う名前にしたのかもしれない。 


 だが、名前を変えても莉亜であることを伝えるために「アッシリア」にしたのだろう。「アッシリア」の中には「アリア」が含まれていた。


 そしてなによりもPKKたちにしたあの一喝。あれにはタマモも覚えがあった。


 子供の頃から何度も莉亜がしてくれたことだ。


 タマモに、まりもに自信がないとき、莉亜はいつだってああして一喝をして、奮い立たせてくれた。


 だから知っている。だからわかる。あそこにいのは、舞台でひとり戦おうとしているのは、幼馴染の秋山莉亜。玉森まりもにとって、唯一無二の親友だということが。


「……本当に意地が悪いんだから」


「タマモ」としてではなく、「玉森まりも」としての言葉を口にしていた。


 するとアッシリアは再び笑った。聞こえるはずのない距離なのに、アッシリアはたしかにタマモを見て笑っていた。その笑顔は紛れもなく莉亜の笑顔だった。


「さぁ、やりましょうか」


 アッシリアは腕を組んだ体勢のまま、地面を蹴り、跳躍した。


 そこからアッシリアの独壇場は始まったのだった。

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