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57話 再会

「──では、本戦第二試合はこれより五分後に開始とします。出場者は舞台袖で準備をお願いいたします」


 本戦第一試合を終えたタマモたち「フィオーレ」は、気絶したレンをヒナギクが肩に担いで舞台を降りた。同時に、五分後本戦第二試合を開始するというアナウンスが流れた。


 そのアナウンスとともに舞台袖へと個人部門とクラン部門での出場者が集まり始めていく。


 その集まっていく出場者を横目で眺めつつ、タマモたちは通りすぎていく。


 タマモたちが目指しているのは観客席だった。本戦第二試合を観戦するためであった。


「一応残れたわけだし、次の試合のために少しでも多く情報を集めようか」


 普段ならレンが言いそうなことをヒナギクが言ったのだ。


 もっともその当のレンが気絶しているというのもあるのだろうが、それ以上に「フルメタルボディズ」の「フィオーレ」対策に驚愕としたというのも大きな理由だろうなとタマモは思っていた。


(完全に分断されてしまいましたからね。ヒナギクさんとレンさんは心配なんていりませんけれど、ボクにとっては死活問題です)


 そう、今回は運よくバルドとの一対一に持ち込めたが、もしこれが逆であれば、タマモに4人が殺到していたら結果は逆になっていた可能性が高い。


 もっともそれまでにヒナギクとレンによってバルドを圧倒したという可能性もなくはないが、ふたりがバルドを倒すまで持ちこたえられる自信がタマモにはなかった。


 今回の「フルメタルボディズ」との試合は、ひとえに「フルメタルボディズ」が「フィオーレ」の攻略として分断を選んだことがかえって、「フィオーレ」の勝利に貢献してしまったという、「フルメタルボディズ」にとっては皮肉な結果になった。


 だが、なにかひとつ違えば、負けたのは「フィオーレ」だった可能性が高いというのもまた事実である。


 その事実を踏まえて、気絶したレンを連れてタマモたち「フィオーレ」は観客席への移動をしていた。


 その際ヒナギクとタマモの話の中心になったのは、それぞれが得たスキルまたは「武術」に関することだった。


「──じゃあ、ヒナギクさんのあの一撃は新しい称号を得たからこそなんですね?」


「そうだね。とても、うん、とっっっっっても不本意ではあるけれど、あれがあったからこそあの人たちをブッ飛ばせたからねぇ」


「な、なるほど」


 ヒナギクが言うのはヒナギクが最後に放った一撃の正体だった。


 その正体はもともとヒナギクが取得していた「鬼屠女おとめ」の上位称号である「鬼屠姫おとめ」を得たことで取得した「鬼鋼拳(炎熱)」の効果によるものだった。


 ヒナギクが言うには「鬼屠姫」を得たことでステータス欄からは「鬼屠女」が消えて、「鬼屠姫」だけになっているようだった。


 上位の称号を得たことで、もともとの称号は上書きされてしまったようだった。


 そのあたりは「三称号」と呼ばれる「理解者」と「反省者」と「敵対者」の関係と同じなのだろう。


 そして「鬼屠姫」を得たことで取得した「鬼鋼拳(炎熱)」によってヒナギクの拳は一時的に鋼のように固くなったうえにそこに火属性の効果も加わったようだった。


 ある意味切り札に近いものを手に入れることはできた。


 そう、切り札を手に入れられはしたが、ヒナギクの職業である「治療師ヒーラー」からはますます遠ざかることになったのは言うまでもない。


 だが、「鬼屠姫」の称号を得たことが今回の試合を勝てた理由と言えなくもない。


 それはヒナギク自身もわかっているため、ヒナギクはこのうえなく遺憾な顔をしていた。



(これは「鬼屠姫」のことをとやかく言うと、地獄を見るパターンなのです)


 ヒナギクにとっては「鬼屠姫」のことについては触れてほしくないことだろう。だからこそあえて触れないことにしたタマモである。


「それよりもタマちゃんの最後のあれはなに?」


 本来ならタマモから話を振るべきだっただろうが、ヒナギクにとっては触れてほしくないことだったので、みずから話を切り替えてくれたのだった。


「あれはですね。「尻尾操作」のレベルが上がったことで得た「武術アーツ」なのですよ」


 タマモは胸を張りながら言う。背中の尻尾もタマモの意思を感じ取ったのか、ふさふさの身をこれでもかと扇げ反っていた。


(タマちゃん自身もドヤ顏をしているけれど、尻尾もドヤっているみたいに見える)


「尻尾操作」を得てから、タマモの尻尾はまるでみずからの意思を持っているかのように行動しているように見えるのだ。


 それが「尻尾操作」を得たからなのか。それとも「金毛の妖狐」だからなのかは判断できなかった。


「でもあれって物理法則無視していなかった? 普通尻尾が組み合わさってもあんなドリルみたくはならないよね? というか、あんな高速回転していたら尻尾が千切れそうな気がするよ」


「まぁ、ゲームですから」


 現実的なことを指摘するヒナギクに元も子もない返事をするタマモ。


 そんなタマモに「それはそうだけど」となんとも言えない表情を浮かべるヒナギク。


 そうこうふたりが言っているうちに、ふたりは観客席にとたどり着いていた。


 観客席はどこも埋まっており、いまからは座れそうにはなかった。


「どこも埋まっているのですねぇ」


「座れそうにないね。……一角おかしなところがあるみたいだけど」


「それは気にしちゃいけないのですよ、ヒナギクさん」


 ヒナギクが言う一角は、遠目からでもはっきりとわかるほどに異様な雰囲気をか持ち出していた。


 具体的にはこわもてのお兄さんたちが壁となることでその内側を守っているようだった。


 その内側に誰かいるようだが、こわもてのお兄さんたちの発する雰囲気があまりにもあまりすぎるため、長々と見ていられないのだ。


 現実のヤのつくご職業の方をあまり見ないようにするのと同じであった。


「とりあえず、空いている場所を──」


 一角のことは無視して周囲を見回そうとした、そのときだった。


「お? おぉ、嬢ちゃんたちじゃねえか!」


 不意に聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。それもわりとすぐそばから聞こえてきた。


 声が聞こえたのはちょうど観客席の入り口の上──舞台を俯瞰的に見られる席からだった。そこに座っていたのは──。


「あ、ガルドさん」


 ──そう、予選二回戦で戦った「ガルキーパー」のマスターであるガルドとほかの「ガルキーパー」の面々であった。

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