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52話 新しいスキル

 ヒナギクの行動によってバルドとの一騎打ちが中断してすぐあることに気付いた。


(なんでしょう、これ?)


 アバターの画面上にポップアップがあったのだ。視線を向けると「新しいスキルを取得しました」という表示が出た。


(新しいスキルが生えたんですか? でもボクレベルアップはしていないはずなんですけど)


 いまのところ、タマモのレベルは4のままだ。


 集めた情報によるとレベルが5になるとEKが最初の進化をするということだった。


 その進化までもう一回レベルアップすればいいところまで来ていた。


 しかしそのレベルアップが途方もなく遠いのだからどうしようもない。


(とにかく、いまのうち確認しましょうかね)


 バルドはまだヒナギクの行動に寄る余波で固まっていた。


 いまのうちならステータスを開いても気づかれそうにない。


 タマモはひそかにステータスを開いた。


(新しいスキルってこれかな?)


 ステータスは相変わらず貧弱ではあるが、その貧弱なステータスでもどうにか踏ん張れているのだからこのままでも問題はない。


 だが、いつかはちゃんと高ステータスになってほしいものだと思いつつ、ステータス画面をスクロールさせると、スキル欄に「New」の表示があった。


 それまで取得していなかったはずの「幻術」というスキルが追加されていたのだ。


(「幻術」ですか。狐や狸にはお約束の能力ですねぇ)


 狐や狸というと幻術などのまやかしの術が使えるというのは、半ばお約束のようなものだった。


 そのお約束の能力をようやく手に入れられたのかと思うと、少し気が遠くなりそうなタマモだった。


 だが、逆に言えばこの土壇場で使い勝手のいいスキルを手に入れられたのだと思うと、まるでタマモ自身が物語の主人公になったような気分だった。


(主人公というものは土壇場で進化するのがお約束ですもんね)


 手に入れられた能力はお約束のものであっても、土壇場で手に入れられたということの方がはるかに重要だった。


 おかげで運営の怒りは霧散した。


 もっとも霧散してもあくまでも一時的になのだが。


 とりあえずいまのところは許してやろうと言う気分になりつつ、タマモは「幻術」についての説明に目を通していく。


(ふむふむ。取得条件は一定回数相手を幻惑させること、ですか。もしかしてさっきのシールドバッシュを連続で使ったことで条件を満たしたんでしょうか?)


 バルドはタマモの変則的シールドバッシュの機動に着いて来ていなかった。たしかに幻惑したと言えば言えなくもないことだった。


(まぁ、取得条件はいいとして、問題はその能力ですけど……。ふむ。これはなかなかいいかもしれませんね)


「幻術」の効果はMPを消費することで一定時間対象の行動を制限するとあった。


 少しわかりづらいが、要は相手に幻を見せて行動を操るということだった。


 ただし相手とのレベル差によりMPの消費は増減するようだった。


(MPが増減するのはどうにかしてほしいところですけど、それに目を瞑れば、格上相手に勝てる切り札にもなるかもしれませんね。まぁ、あまりにも格上すぎたらレジストされちゃうんでしょうけど)


「幻術」は確実に相手に効く能力ではなかった。


 レベル差がありすぎるとレジストされてしまい、効果が発揮しなくなってしまうのだ。


 ちなみにレジスト判定はレベル+MENの数値による。


 逆に術者側はレベル+INTの数値となる。


 それぞれの数値が超えればレジストか成功かに分かれるのだ。


 タマモは試しにバルドへと「幻術」を使ってみたが、画面上に「失敗しました」と表示されてしまった。


(むぅ、レジストされてしまったのです)


 さすがに一発成功とまではいかないようだった。


 だが、ヒナギクの行動の衝撃からバルドはまだ立ち直っていない。仕掛けるのであれば、いましかなかった。


(「幻術」、「幻術」、「幻術」!)


 バルドへと連続で「幻術」を使っていくタマモ。


 しかしなかなか成功してくれなかった。それでもめげずに「幻術」を使っていると──。


「「幻術」の効果が発動しました」


 いままでとは違う表示が、「幻術」の効果が発動したというひと言が表示されたのだ。よし、と思ったタマモの目の前にまた新しい表示がされた。


(「解除リリース」で「幻術」の効果を任意で消せる、ですか。ふむふむ、なかなか面白いことができそうですね)


 にんまりと笑いつつ、タマモは少しだけバルドから距離を取った。


 だが、バルドはそのことに気づかぬまま、その手にあるEKを斧型のEKを誰もいない方へと振り始めた。


『おぉーっと、バルド選手! いきなりEKをあらぬ方向へと振り始めました! これはいったいどういうことなのでしょうか!?』


 実況の声が響く中、タマモはきちんとバルドが「幻術」の支配下に落ちていることを確認した。


 確認しながらバルドの背中へと回り、「解除リリース」と叫んだ。


 同時にバルドが唖然に取られた顏をしたのが後ろにいながらでも理解できた。がら空きの背中がよく見える。


「急所突き+尻尾三段突き!」


 無防備なバルドの背中に「急所突き」の効果が乗った「尻尾三段突き」を放った。


 バルドはとっさのことに反応できなかったようだった。


「急所突き」の効果は発動しなかったが、バックスタッブ扱いとなったのか、バルドに大ダメージを与えることに成功したのだった。


 だが、これでようやく五分となった。変則シールドバッシュを連続で使ってはいたが、それだけで勝てるほど甘い相手ではない。


 そもそも「武闘大会」に出るプレイヤーはほぼすべてが格上だった。


 ゆえに大ダメージを与えたうえに「朦朧」の効果が発動してようやく互角であることをタマモは痛いほどに理解していた。


 いままでは準備運動のようなものだった。ゆえにここからが本当の勝負となる。


 タマモは斧を構えたバルドへと向かいながら、より一層集中を高めていくのだった。

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