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39話 3日目の朝

「武闘大会」3日目の朝となった。


 目標にしていた本戦出場を無事に果たすことができたタマモたち「フィオーレ」は、今日は朝から作戦会議をしていた。


「とりあえず、「姫」さんたち「三空」にあたらないことを前提にしようか」


 会議の議長を務めているのはレンだった。


 もっとも議長とは言うものの、参加者は3人だけなのだから、議長もなにもないものなのだが、こういうのは形から入るべきだとレンが主張したため、レンを議長にして会議を進めていた。


 会議の話題はもっぱらアオイたち「三空」に対してのものだった。


 もっともアオイたち「三空」のことを前提に会議しているクランは、「フィオーレ」だけではない。


 むしろ本戦出場を果たしたクランはすべて「三空」にどう対処するかで頭を悩ませていた。


 なにせいまのところ「三空」はクランのマスターであろうアオイしか戦っていないのだ。


 まだアオイの後ろにはふたりのプレイヤーが残っているのだ。


 そのふたりのうちひとりがアッシリアであることをタマモたちは知っている。


 そのアッシリアがどういう戦闘スタイルなのかはいまのところわからなかった。


 アオイが前衛をこなしているところを見るかぎり、中衛ないし後衛だと考えるのが普通だった。


 しかしヒナギクとレンにとってみれば、それはありえないことのようだった。


「たぶんアッシリアさんが本来は前衛なんだと思うよ? 身のこなしが後衛の人たちのそれとはまるで違うもの。あれは昔から武道を習っているか、なにかしらの運動をしているかで体を鍛えている人のものだったし」


 ヒナギクはアオイたちが試合の際にヒナギクなりの見解を口にしていた。


 その見解によるとアッシリアは中衛でも後衛でもなく、前衛のプレイヤーだということだった。その見解はレンも同意見のようだった。


「間違いなく、アッシリアさんは前衛だと俺も思う。動きが後衛のプレイヤーに比べて機敏だというのもあるけれど、足の運びがなにかしらのスポーツか武道をしていたように思えるね。あとは単純にこのゲームに対して慣れているということもあるけれど、少なくともあの人が後衛というのはイメージに合わないかな?」


 わかるようでわからない内容だった。


 だが、たしかにアッシリアが前衛というのはわりと合っているかもしれないな、とタマモも少し思っていた。


 ただ後衛でもありと言えばありな気はしていた。


 もっと言えば後ろで指揮を執れそうなタイプだと感じられたのだ。


 しかし指揮は執っても、基本的には前衛で戦うプレイヤーだろうと思った。


 もっと言えばオールラウンドに戦えるプレイヤーのように感じられるのだ。


「オールラウンダーか。たしかにそういう雰囲気もあるね」


「むしろオールラウンダーと考えるべきかもしれないな。なにせあの「姫」さんの世話役みたいなことをしている人だし、オールラウンダーじゃないとやっていられない気がする」


「たしかにそうかもしれないね」


 ヒナギクとレンもアッシリアをオールラウンダーだと仮定したようだった。


 もっとも実際にオールラウンドに戦えるかどうかはわからない。


 わからないが、あのアオイのクランにいるプレイヤーだ。


 オールラウンダーと考えておくべきだろう。


 それもただのオールラウンダーではなく、すべてを高レベルでこなせるタイプだと考えるべきだった。


 アオイとアッシリア。このふたりだけでもかなり厄介だというのに、残るひとりは性別が男性だろうということ以外はなにもわかっていないのだ。


 正体がわかっていないプレイヤーという点を踏まえると、アオイとアッシリア以上に厄介なのが最後のひとりのプレイヤーだろう。


 なにもわからないということは、それだけ対応の幅を広げないといけないということになる。


 ただでさえアオイとアッシリアにもまだ詳細不明な部分があるというのに、残りのひとりもまるでわからないのだから、余計に厄介だった。


 全員が全員厄介な部分のある「三空」とあたらないことを前提にしようというレンのひと言は、情報がまるでない現状では致し方がなかったのだった。


「「三空」にあたったら運が悪かったと思えばいい。むしろ胸を貸してもらうつもりでやろう」


「それしかないかなぁ」


「残念ですけどねぇ」


「まぁ、もともと目標の本戦には出場できたんだ。これ以上欲張るのも問題だからね。とはいえ、ただで負けてやるつもりはないけど」


 にやりと人の悪そうな笑みを浮かべるレン。そんなレンにため息を吐くヒナギク。そんなふたりの姿に「ふたりらしいですね」と思うタマモだった。


「とりあえず、ここからはかなりの激戦になると思う。ふたりとも気を抜かずにやろう」


 レンの言葉にヒナギクと一緒に頷くタマモ。そこから具体的な会議が始まった。その会議を聞きながら、できるかぎりのことをしようと心に決めるタマモだった。


 そうして「武闘大会」3日目、本戦開始の日は始まったのだった。

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