27話 これぞフィオーレ
平成最後の更新となります。
そう最後なのに、内容が←笑
サブタイはわりとさわやかな感じですが、まぁ、うん←
「これより「武闘大会」2日目及び予選2回戦を開始いたします」
不意に流れてきたアナウンスに会場内の雰囲気が変わった。
試合前にと空腹値を回復させようとしていたプレイヤーたちが試合会場内の至るところにある屋台に集まっていた。
手には初日の結果を重んじたそれぞれの屋台の特色が反映された料理があった。焼きそばやらお好み焼きやらアメリカンドッグやら串焼きなどどう考えてもお祭りの屋台にありそうなものばかりであり、初日のようなレッドボアの肉を使ったバフ付きの料理などは一切見かけなかった。
というのもレッドボアの肉を使った料理は屋台に人を呼ぶためだけのものであり、いわば客寄せパンダ的な扱いの料理だったのだが、そのレッドボアの肉が品切れになったとたんに、客という波が引いてしまったのだ。
レッドボアの肉を使った料理は採算度外視であり、話題性のためだけのもの。話題性に引き付けられた客を根こそぎいただくという予定だったのだが、その際に主力となるはずだった料理には一切目もくれられず、レッドボアの肉がなくなるとそれまで群がるようにいたはずのプレイヤーたちは一斉にいなくなっていく。
そんな光景がレッドボアの肉を出していたすべての屋台で起こったのだ。すでにレッドボアの肉の在庫はどの屋台からもない。かと言ってレッドボアを狩りに行こうにも途中で「闘技場」から出ることは敵わない。となれば、自然といまある材料でどうにかするしかなくなってしまったのだ。
加えて言えば、レッドボアの肉を使わなかった屋台の繁盛っぷりが目についたというのもあるだろう。レッドボアの肉はなくても純粋な味で勝負していたという屋台には、レッドボアの肉がなくなったら用済みと言われているかのように見向きもされなくなった屋台とは違い、常に一定のプレイヤーたちが列をなしていた。
その中でも一番売り上げがよかったのは、「キャベベ炒め」一本に絞った「タマモの屋台」だった。材料費はキャベベと各種調味料だけ。主な材料であるキャベベに至っては自家栽培なためタダであり、各種調味料には資金がいるが、大量買いを行っているため、実際よりもだいぶ安く仕入れている。そのため、一皿の材料費は3、4シル程度で収まっていた。
そのうえ、キャベツ炒め一本に絞っているため、工程が単純であり提供が異様なほどに速かったというのも影響し、結果予想外に「タマモの屋台」の売り上げはトップとなったのだ。単価だけを見ると各屋台で一番安かった「タマモの屋台」がトップになったのだから、レッドボアの肉という採算度外視の反則的な手段に出たやたいにとっては皮肉以外の何物でもなかった。
そんな結果を初日終了時に屋台を開いていた各プレイヤーたちには運営からのお知らせという形で送信され、このままでいてなるものか、とレッドボアの肉を使った屋台は奮起し、低予算でかつ採算が取れるものを選んだことにより、各屋台のメニューがお祭りの出店と化した理由となった。
運営側も想定外の結果になった初日の覇者である「タマモの屋台」の店長であるタマモはと言うと──。
「……ゴメンナサイゴメンナサイ。勝手ナコトハ、モウシナイノデス。ダカラ許シテクダサイ」
──もう2回戦が始まっているというのにも関わらず、いまだ虚ろな目で延々とヒナギクに謝り続けていた。そんなタマモを見てもヒナギクは特にこれといったアクションを起こす気はないのか、淡々と包丁を振るっていた。
だが、謝り続けているのはタマモだけではなく、朝からヒナギクに折檻されていたレンもまた同じであった。
「誤解。誤解ナンデス。ダカラ許シテクダサイ」
レンもまた目から光をなくしてヒナギクに謝り続けている。しかし当のヒナギクはなにも言わない。ひと口大に切り分けた材料を今度は湯通ししてから鍋で振るっていた。メンバーのうち半数以上が虚ろなのにも関わらず、唯一淡々と「調理」をするヒナギクの姿は異様な光景であった。
しかしそれでもなお「タマモの屋台」のキャベベ炒めに魅了されていたプレイヤーたちの列が止まることはなく、レンもタマモも虚ろな目でそれぞれのやることを行っていた。
「はい、お待ちどうさまです。キャベベ炒め、2人前です」
ヒナギクはタマモたちの様子を見ることなく、初日同様にキャベベ炒めを列に並んだプレイヤーたちに提供していく。
まさに「これぞフィオーレ」と言える光景だった。
そうして「タマモの屋台」は2日目も継続して売り上げを伸ばしていくのだった。
事実上ヒナギクが「フィオーレ」の影の支配者です。




