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弟子が優秀です

「すみません、晩御飯の準備を始める前に森に採集しに行ってもいいですか?」


 家に着いてすぐ、ハンカがそう相談してきた。


「うん、別にいいけどあの森そんなに食べれるものないよ?」


 確かに食べれる植物は生えているけど、種類も数も膨大にあるわけじゃないし、わざわざ取りに行くようなものはなかったはずだ。


「生で食べれるものは少ないですが、熱したり乾かしたりすると毒が抜けるものもあるんです。それがまた美味しいので」


「そうなんだ」


 すごい詳しいな。

 さすらってたらしいし、その中で情報を集めたのかな。


「私も知っておきたいし、着いていってもいいかな?」


「はい、もちろんです!」


 こうして、私達は森に行く事になった。



 はっきり言って、森についてからはハンカの独壇場だった。


「この実は毒があるんですけど少し熱するだけで毒が抜けていい酸味が出るんです」とか「このキノコは干して戻すと良い出汁出すんです」とか。

 そんな具合に、まるで自分の畑かのように次から次に食べれるものを見つけてくれるのだ。


「それにしても詳しいね。どうやって調べたの?」


「さすらいの生活の中でですね。なので死にかけたことも何度かありましたが」


 まさかの実体験!


「それって大丈夫なの?」


「はい、昔から体は丈夫でしたし、初めてのものは少しずつ食べて毒があるか調べたので」


 そういう問題なのか……?


 まあ、なんにしても、


「もうそういう事はやめてね。ハンカが死んじゃったら、私悲しいし」


「は、はい……」


 ハンカは少し残念そうにしていた。


 まだ会ってから少ししか経ってないけど、一緒に暮らすのだから家族も同然に思っている。

 その辺の人にだって死なれたら良い気分しないのに、それが家族だったら尚更だ。


「本当にダメだからね! 絶対だよ! 振りとかじゃなくて絶対だからね!」


「は、はい! もうしません……ってこのキノコ初めて見るな。ちょっとなら……」


「ハンカ!」


「うぅ……わ、分かってますよ……」


 ハンカは手に取ったキノコを名残惜しそうに捨てた。


 言ったそばから先が心配だ……。



 そんな私の心配をよそに、その後は特にハンカが無茶する事なく、滞りなく進んだ。

 背中に背負ってたカゴの中はすっかり食べれる植物で埋め尽くされていて、結構壮観だ。


「それじゃあ私は色々と下処理しておきますので、師匠は家で休んでいてください」


「いや、任せきりは悪いし私も手伝うよ」


「いえ、師匠の手を煩わせる事ではありませんから大丈夫ですよ!」


 ハンカは少し食い気味に主張してきた。


 私にさん付けして呼ばれるのも嫌がったくらい上下関係をしっかりしたがる子だ。

 師匠である私に雑用をさせるのは彼女の精神衛生上よろしくないのだろう。


 ハンカにストレスを与えてまで手伝おうなんて思ってはないし、ここは素直に引いておいた方がいいかな。


「分かった、それじゃあ私は家で待ってるね」


「はい。ではまた後で」


「うん、じゃあね」


 私はハンカと別れると、家に帰ってハンカの部屋(予定)の掃除をしておいた。


 一応掃除は毎日しているんだけど、家がそれなりに大きいせいで全部屋を毎日とはなかなかね。


 使ってないとはいえど、1週間も放置していた部屋はやっぱり少し埃っぽかった。



 そうして、部屋の掃除をしたり、ハンカに似合いそうな服を引っ張り出したりしていると、すぐに夜になった。


 そして現在、我が家の食卓には和洋折衷様々な料理が所狭しと並んでいる。


「これはすごいや……。全部一人で作ったの?」


「はい、あの台所の火が出るやつのお陰でかなり楽できました」


 火が出るやつってガスコンロの事か。


 一応我が家には電化製品はないがガスコンロ(みたいなもの)はあるのだ。


 基本的な構造はガスコンロと同じなんだけど、付ける時にガス臭とかしないし多分ガスは使ってない。


 仕組みとかそういうのは全く分からないけど、すごく便利なのでハンカにも使い方を教えておいたのだ。

 その時に「これが最強の魔法使いの家……!」とか言って驚いてたけど、無事に使えたみたいだ。


「それじゃあ、冷めないうちにいただこうか」


 正直、もうお腹が空いて仕方がない。


 元々そんなにお腹減ってなくても、美味しそうなもの見るとお腹減る事ってよくあるよね!


「はい、それじゃあ」


「「いただきます!」」




 食事は、一瞬で終わった。

 美味しすぎて凄い勢いで食べちゃった。


 特に、キノコのアヒージョみたいなやつが凄い美味しかった。

 バケットが欲しくなる味だったけど、この世界にバケットってあるんだろうか? 今度調べてみよう。


「ごちそうさま」


「いえ、お粗末様でした」


「よし、それじゃあ片付けようか。お皿を流しに持って行ってもらってもいい? 私が洗うから」


「そんな、師匠の手を煩わせるのは……!」


「いや、こんなに美味しい料理作ってもらって何もしないのは流石に私も落ち着かないからさ……」


「でも……!」


 うーん、ハンカの生真面目さが悪い方向に行ってるな。

 多分これ、ずっと食い下がってくるぞ……。


「あ、そうだ、それなら当番制にしようよ。1週間のうち初めの3日はハンカがやって、次の3日は私がやって、最後の1日は外食にして、掃除は一階と二階をそれぞれがやろう」


 これならいい感じに分担できてるし、いいんじゃないか?


「師匠と弟子が同じ労働はおかしいですよ! せめて休みの日を私の当番に……!」


「いや、1日外食日は作っておきたいんだよね」


 村の人との交流が出来たりするから、結構重要だ。


 その後、私とハンカの一進一退の攻防の末、1〜3日目はハンカ、4日目は外食日、5〜6日目が私で7日目が外食日となった。


 やっぱり共同生活する上で、こういう決まりは作っておいた方がいいよね。


「それじゃあ、これからもよろしくね、ハンカ」


「はい、よろしくお願いします師匠!」


 私達は、ガッチリと握手を交わした。

これにてハンカ回は終了です!


次回、2話から名前が出てきてるあのお方の娘が出ます!

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