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決闘!

決闘を辞書で引いて見たら、命をかけた勝負をする事って書いてあって、あれ、ゼリリウム討伐対決って決闘じゃないじゃんとも思いましたが、そこは流しましょう!


だってほら、サナの今後の生活とかかかってるわけだし!

「よーい、スタート!」


 私のその掛け声と同時に、目の前からハンカさんが消えた。


 そして、その直後に、ハンカさんがいたところを中心として突風が吹き荒れた。


「え……」


 あまりに突然の事に思わず棒立ちになる。


 よくよく確認したら、ハンカさんはここから50メートルほど先でゼリリウムを次から次に倒していた。


 なるほど、超高速で移動したから風が起こったんだ!

 私が全力疾走した時よりもずっと速いような気がするけど、私よりも素早さが高いんだろうか?


 って、そんなこと考えてる場合じゃない!


「私も早く倒さなきゃ」


 この勝負には私の今後の生活がかかっているんだ。

 負ける気なんて毛頭ない。


「でもあれより早く倒せる気もしないな……」


 ゼリリウムは弱いモンスターなので、やっぱりハンカさんも全部一撃で倒している。

 なら、速く動けるハンカさんに軍配があがるのは間違いないだろう。


「……魔法、使ってみようかな?」


 確か、図書館の本に範囲攻撃魔法っていうのがあった。

 あれならもしかしたらハンカさんより効率的にゼリリウムを倒せるかもしれない。


 まあでも、魔法って料理の時に指先に火を灯す『ファイア』っていうのしか使ったことないし、一応動作確認しておこう。


 私は、とんでもない威力になっちゃった時に備え、家の裏手に回って、50メートルほど距離を取った。

 これならハンカさんに被害が行くことも、家に攻撃してしまうこともないだろう。


 いや、家に関しては魔王が来ても大丈夫って書いてあったから心配ないかもしれないけど、今の私は魔王よりも高いステータスらしいし、万が一ってこともあるからね。

 家が壊れたら私もうどうしようもなくなるし。


「えっと、呪文は……」


 私は本で読んだ通り、足を肩幅くらいに広げ、全身に力を入れた。

 そして、朧げな記憶の中の呪文を唱える。


「我のうちに眠る魔力よ、その力をもって、冷気として吹き荒れよ!」


 すると、唱えた直後に体がフワッとする感覚に包まれた。

 おお、これが魔法を使うってことなのか。


 そして、フワッとした感覚はすぐに消えると、一瞬にして、私の視界は一面の銀世界ならぬ氷世界に変貌した。


「……え?」


 本日二度目の棒立ち。


 この魔法は確か、周辺30メートルくらいに強い冷気を吐かせるものだった。

 でも、今私の目の前は4、500メートル先まで氷漬けになっている。


「会心の一撃……ではないよね……」


 うん、間違いなくカンストのせいだ。

 現実逃避は良くないよね。


「って家!」


 後ろの家を見て見たら、不思議な力で守られているのか、その周囲だけは凍っていなかった。

 さすが神様、カンストしてても負けないんだ。


「ふぅ、良かった……」


 私はホッと胸をなでおろした。


「あの! これはなんなんだ!? 急に足元が凍りついたんだが!」


 撫で下ろしちゃダメだ!


 私は大急ぎでハンカさんのところまで行くと、ファイアの魔法で周囲の氷を溶かした。



 そして、私の魔法でこの辺りのゼリリウムが一掃されてしまったので、家でお茶をする事にした。


 とりあえずリビングの椅子に座ってもらうと、温かいお茶と買ってきた茶菓子を出した。


「いやはや、よもやここまでの強さだとは思わなかった……。完敗です」


「ま、まあまあとりあえずお茶でも飲んでよ」


「申し訳ない。ありがとうございます」


「いや、こちらこそごめんね……」


 カンストの力を舐め過ぎてました……。反省してます……。


「なぜサナさんが謝るのです? あれはゼリリウムを巻き込むなら、相手に攻撃するのもありというルールを見抜けないばかりか、魔法攻撃を避けきれなかった私の責任だ」


 すごいストイックだ!


 でも別に私はそんなルールの穴をついた技あり一本を狙ったわけではないし、あの魔法も攻撃じゃなくてお試しだ。

 一応、その辺の誤解は解いておきたい。


「その……」


「いや、皆まで言わずとも構いませんよ。私は全て納得しておりますから」


 自信満々に頷くハンカさん。

 すごい訂正しにくくなった!


 というか、さっきから気になってたんだけど、ハンカさんの言葉遣いが凄い丁寧になっている。


「サナさん、そこで一つ、願いがあります。いや、負けた身分でありながら図々しいのは分かっているのですが……!」


「大丈夫大丈夫、全然気にしないから、言ってみて」


「はい……。その……私をあなたの弟子にしていただきたい!」


 本日三度目の棒立ち……いや、座ってるから棒座り?


「えっと、それは私の……だよね?」


「はい、もちろんです」


「それはまたなんで私なんかの……。ハンカさんって剣士じゃないの?」


「確かに私は剣に生きてきましたが、サナさんの魔法は今まで見たことのあるどんな剣よりも力強く感じました。あなたが放つオーラ以上の力を感じました。私は、自分の能力以上の力を出せるサナさんから学びたいのです!」


 うーん、つまりオーラで見た時に思ってた強さよりも強かったって事かな?


 でもなんでそんな事が……? ってあ、カンストか。

 多分ステータスがカンストしちゃってるせいでハンカさんが見れるオーラの限界を突破したんだ。だから能力以上に見えたんだろう。


「いや、私から学べるものなんてないし、やめておいた方がいいと思うよ」


「そんな事はありません! あの力は是非とも学びたいです!」


 目をキラキラさせるハンカさん。


 うーん、でも私は別に弟子なんて取る気もなければ、取れるほどの人間でもないしな……。


「考えは素晴らしいとは思うんだけど、やっぱり私から教えてあげられる事はないよ」


「そうですか……。でしたら、この家に住み込みで働くという形ではダメですか? 掃除はやった事がありませんが頑張りますし、料理は得意です!」


「住み込み……。それいいね!」


 正直、一人暮らしは寂しくて仕方がないのだ。


「では、弟子入りしてもいいのですか!?」


「弟子……。うん、住み込むなら弟子になってもよし!」


「本当ですか!? よろしくお願いします師匠!」


 スローライフ9日目、私は弟子を持ちました。

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