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来訪者の正体

新キャラ、元々サリナで進む予定だったんですが、書いててサナと打ち間違いやすいことが判明したのでハンカに変えます!


響きで名前決めちゃダメですね。

「最強の魔法使い、サナよ。私は貴方に決闘を申し込みに来た!」


 堂々と言い放つハンカさんを前に、私は思わずフリーズした。

 そして


「えっと……なんで?」


 やっと出てきた私の第一声はこれだった。


「なんで、だと? 闘うのに、理由なんていらないだろう」


 さも当然かのように言い放つハンカさん。


 おかしいからね! みんながみんな理由もなく闘い出したらそこら中がコロシアムと化すからね! 世紀末だからね!


「いや、ハンカさんはそうでも私はそうじゃないんですよ……」


「ん? つまり闘いに理由が欲しいのか?」


 いや、そうではなくて遠回しに嫌だと言ったんだけど、どうやらハンカさんには伝わっていなかった。


「ならば、サナさんが勝てば何か一つ願い事を聞こう! 叶えられるのは私が実行できる範疇でだが。これでどうだ?」


 いやいや、だからそういう問題じゃないでしょ! そんな自信満々に「どうだ?」とか聞かないで! 無理だから!


「どうだと言われても……。というか、私の噂なんてどこで聞いたんですか」


「どこでって、別に大層なところではない。武器の修理をしに王都を訪れた時に小耳に挟んだんだ」


 王都といえば、村とは山を一つ隔てた位置にある都市だ。


 え、私の噂、山一つ越えて伝わってるの!? 一週間やそこらで!? ネットもないのに!?


「たしか、ステータスは四天王はおろか魔王ですら遠く及ばないほど高く、人が生まれるはるか昔から森の奥で研究と鍛錬を重ねたまさに伝説級の存在と言われていたな」


 なんか話がえらく壮大になってる!


「シルバ村の後ろ盾になった事で、国も村への待遇を考え直してるなんて話もあった」


 私の噂、国動かしてる!?


 というか、国が動くほどに大きな噂になってるって事は、もうかなり広まっちゃってるっぽいな……。


 ……やばくね?

 今後もこんな感じで私と闘いたい人たち来るんじゃね?


 だったら……。


「分かりました、闘いましょう。あっ、命の取り合いとかは無しですよ! あくまで安全な方法で闘いましょう。それで、もし私が勝ったらその噂は嘘だったと広めてください」


「安全な方法……。まあ、いいだろう。それで、偽の噂を流すのは、なぜだ?」


「私はあくまでスローライフが送りたいんです。それなのにそんな噂のせいで闘いの毎日とか勘弁だから」


「ふむ、なるほど……」


 どこか不思議な顔をしながら頷くハンカさん。


 これならお願いも聞いてくれそうだ。


 仮に負けたとしても、それならそれで私が弱いって事実が知れ渡るわけだし、我ながらいい作戦だと思う。


「それなら、無理だな!」


 あれ!?


「それは……なんで?」


「うむ、私はさすらいの剣士をやっているため知り合いの多さには自信があるが、特別親しい者もいない。それにあなたの噂は既に王都全体に広まっていて、私一人では到底処理しきれるものではない。よって、私の力では叶えられない!」


 すごい真面目だ!


 闘いたいだけなら適当に頷いてしまってもいいのに、それをしていなかった。


 あれかな? 武士道みたいなのがこっちの世界にもあるのかな?


「それじゃあ闘うのは無理ですね……。ごめんなさ……」


「いや! 大丈夫だ!」


 ハンカさんは私の言葉を遮るように叫んだ。


 いちいち圧がすごい。


「でも、噂を広めるのは無理なんですよね?」


「ああ、噂を広めるのは無理だ! だが、あなたが戦わずに済むようにはできる!」


 ……ん? どういう事だ?


「えっと……どゆこと?」


 なんかナゾナゾじみたその言葉に、私は思わず首を傾げた。


 私は知力は一般人なんだ。分かりやすく説明してくれい。


「つまり、私が負ければこの村に定住して、あなたに挑戦しにきた者の相手をするという事だ!」


 なるほど。


 さすらいの剣士って言ってたし、定住しようと思えば基本いつでも出来るんだろう。


「よし、じゃあそれでいいよ」


 この一戦で今後の生活の安全が保障されるのならお安い御用だ。


「それで、どういう戦いにする? 私としてはあんまり暴力的なのは嫌なんだけど」


「そうだな……ならば、ここ一帯のゼリリウムをどちらが多く狩れるかというのはどうだ? 私は剣の腕と同じくらい、速さには自信がある」


 確かにそれなら私に危害が及ぶことはないな。


 ゼリリウム達には悪いけど、それでいかせてもらおう。


「それじゃあ時間は……あ、そうだ! ちょっと待ってて」


 私はそういうと、家の中にお茶菓子を置いて、代わりに時計を持ってきた。


 こっちの世界には時計みたいなものはまだ発明されてないんだけど、天使さん達が家につけておいてくれたものだ。


「えっと今は9時半だから……10時ちょうど、この長い針がこの12ってところを指すまでって事で」


「さすが最強の魔法使い、不思議な道具を使うな」


「あはは、ダメかな?」


 時計を知ってるのと知らないのとでは残り時間の把握に大きな差が出てしまう。


 そういう意味では、私の方が圧倒的に有利だ。


「いや、あくまで私は挑戦者、文句を言えるような立場ではない。他にも使いたいものがあれば持ってくるといい」


 やっぱり、すごい真面目だ!


「いや、私武器とか使えないし、大丈夫」


 私は手をヒラヒラして断る。


「そうか、ではもう始めても構わないか?」


「あ、うん。それじゃあ、よーい、スタート!」


 こうして、私とハンカさんの戦いの火蓋は切って落とされた!

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