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目的って意外と忘れがちだよね!

エンジュの持っていたドラゴンの尻尾が、気がついたら消えていました。


何か目的があってもたせていたような気がするんですがなんだったか……?

「どれもこれも素晴らしく美味なのです!」


「こっちの肉も美味しいのだ! 食べてみるか?」


「はい! 頂くのです!」


 西の大通りに到着してから5分ほど。私たち……というかマーヤちゃんとシャルルちゃんがものすごい楽しそうに屋台で買った食べ物を頬張っていた。


 なんか姉妹みたいで見てると凄く微笑ましいね。


「そういえば、マーヤちゃんはこの通り来るの初めてなの?」


「はひ! はひへへへふ!」


「うん、ごめん、とりあえず飲み込もうか!」


 もごもごしすぎて全然聞き取れなかった。

 いやまあ口に物入れてすぐ質問した私が悪いな。


 ともかく、しばらく待つと何かの肉を飲み込んだマーヤちゃんが質問に答えてくれた。


「はい! そうなのです!」


「親御さんとも来た事ないの?」


「はい、両親は基本家にこもっているのですよ」


 親が引きこもりって……。何が複雑な家庭なのかな?


 一応親探しに来てるから特徴とか聞こうかと思ったんだけど、聞くのは少し悪い気がしたのでやめておいた。


「よし、それなら存分に楽しもうか!」


「はい! ありがとうございますなのです!」


 親探しに来たんだからそっちに力入れなきゃいけないと思うけど、帽子かぶっちゃってるし早々見つかりそうもないからね。今は楽しんじゃっていいんじゃないかと思ったのだ。



 それから私たちは色々な事をして王都を満喫した。


 シャルルちゃんとマーヤちゃんたっての希望で西の大通りの屋台をほとんど制覇し、ハンカたっての希望で国一番の武器屋に行き、エンジュたっての希望で服屋を巡りに巡った。


 私の要望がないのは、特に行きたいところがないのと、みんなの楽しそうな顔が見られれば十分だったからだ。

 そういう意味では、私が一番長時間楽しんでいたのかもしれない。


 ともかく、アインシュタインの相対性理論のように楽しい時間はあっという間に過ぎて行くわけで、気がつけば空が赤く染まりきっていた。


「いや〜今日は楽しかったですね!」

「なのです!」

「はい、王都も悪くありませんね」

「もっとたくさん遊びたいのだ!」

「じゃあ今度は迷子にならないようにしなきゃね」


 私たちはベンチに腰をかけながら、のんびりそんな会話をしていた。

 ここまで結構歩いていたし、割合疲れているのだ。


「そういえば、何か大切な事を忘れているような気がするのですが……」


「大切な事……ですか?」


 はて? とエンジュが小首を傾げる。


 私としても何か引っかかる気がするんだけど、なんだったかいまいち思い出せないな……。


「大切な事……あ! マーヤ! マーヤの親を探せていないのだ!」


「「「あ!」」」


 そういえば私たちマーヤちゃんの親を探すつもりでいたんだった!

 楽しすぎてすっかり忘れていたぞ……。


 やばいんじゃないかと私たちがあたふたとし始めると、マーヤちゃんは何かを決意したかのように立ち上がって、私たちの前に立った。


「あの、みなさん、少し大切なお話があるのです」


「大切な話?」


 マーヤちゃんから真剣な空気を感じ取って私たちは背筋を伸ばしてマーヤちゃんに向かった。


「まず始めに、今日は1日とても楽しかったのです。ありがとうございました」


 深々とお辞儀するマーヤちゃんに思わず私たちも軽く頭を下げた。


「みなさんの事は大好きなのです。……ですが、私はみなさんに一つ隠し事をしてしまっていたのです。その……私は……実は……」


 マーヤちゃんが言いにくそうにもごもごとし始めると、ハンカがふと呟くように言った。


「王族の方……ですよね?」


 ……え! 王族!?


「王族って、要はこの国の王様の子供って事!?」


「私の予想だとそうなのですが、マーヤさん、当たっていますか?」


「……はい、その通りなのです。ずっと家に閉じこもっていたのがつまらなかったので飛び出して来て……」


 なんかもう色々凄いな……!

 マーヤちゃんが王族なのもそうだし、ハンカがそれを見抜いてたのもそうだし。


 ただまあハンカだし、いろんな情報を見逃さずに理論的に推理していったんだろうね。


「あれ、ということはもしかして、迷子じゃなくて家出して来たんですか?」


「はい、そうなのです。なので、みなさんに両親を探していただく必要はなくて……」


 マーヤちゃんは少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


 多分私たちを騙した形になったから申し訳なく感じているんだろうな。

 まあでも、正直いうと後半は親探しなんてすっかり頭から抜け落ちていたし、驚きはあっても騙された気はしてない。


「そっか。どう? 初めての町巡りは楽しかった?」


「はい! それはもうすごく楽しかったのです!」


「ならよかった。じゃあ、日が暮れる前にお家に帰ったほうがいいよ。ご両親も心配してるだろうしさ」


「はい、そうするのです……」


 少し寂しくはあるけど、我が家の一員になるわけにもいかないし、こうするしかない。


「あ、でも皆さんには何かお礼をしなくては!」


「いや、いいよそんなの」


「ではせめて今回かかったお金だけでも……!」


「いいって、私たちもマーヤちゃんがいて楽しさ倍増だったしさ。ね、みんな」


「はい!」

「うむ」

「そうですね」


 一応みんなで稼いだお金でもあるから確認してみたんだけど、言うまでもなくみんな頷いてくれた。さすが私の家族たち。


 ただ、ふと私はそこで思いついた。


「あ、でも個人的に一つだけお願いしてもいいかな?」


「はい、なんでも構わないのです!」


「じゃあ、私たちがまた王都に来たら一緒にまた町を巡ってもらえないかな? お城に呼びに行くからさ」


「……はい! もちろんなのです!」

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