そういえば
ゲーム楽しいなぁ、なんて思っていたらいつの間にやら1ヶ月……。
時間が経つのって早いですね。
そういうわけで、私たちは西の大通りに行こうと思ったんだけど、
「そういえば、まだ自己紹介してないね。ごめんねマーヤちゃん」
ちょっと状況がゴタゴタしていたせいですっかり忘れていた。
「いえ、それなら大丈夫なのです。皆様の事はもうシャルルちゃんから伺っているのですよ」
「へぇ、そうだったんだ」
このくらいの歳の子なら、知らない大人には警戒しそうなものなのにしていなかったのはそんな理由があったのか。
ともかく、もう私たちのことを知っているというなら、わざわざ自己紹介なんてする意味もないね。
それにしてもシャルルちゃん、私たちのことどんなふうに紹介したんだろう? 気になるな……どうにかして聞き出したいけど、まあまた今度でもいいか。
「あ、そういえばさっき私外でシャルルちゃん見た人がいないか聞き込みしてたんだけど、その時に銀髪の子って言ったら嫌な顔されたんだよね」
「ふむ、そうなのか」
「うん、だから、一応シャルルちゃんとマーヤちゃんは頭を隠す何かを用意したほうがいいと思うよ」
そうは言ってみたものの、あいにく私たちは帽子とかの類いのものは持ってきていないし、さっき買っておいたりもしていない。
まあお金に関しては結構余裕のある額を持ってきたから買ってもいいかと思ったんだけど……。
「あ、帽子なら私持ってきてます!」
エンジュが手を上げて嬉しそうにそんな報告をしてくれた。
「2つも持ってきてる?」
「はい、もちろんです! 今すぐ出しますね!」
エンジュは元気よく頷くとどこからともなく結構大きめな麦わら帽子を出してきた。
どっから出てきたんだそんなもの……。
「これでいいですか?」
「うん、バッチリ」
私は手でオッケーマークを作ってエンジュに見せた。
「あ、マーヤさんは髪が長いので帽子被っても髪見えちゃいません?」
「そういえばそうだね」
エンジュにしては結構鋭いことを言った。
「だから、私がマーヤさんの髪をセットします!」
あ、エンジュの狙いってこっちか。確かに凄い綺麗で長い銀髪だから髪型をいじって見たくなる気持ちも分からなくはない。
とはいえ、本人の確認無しにそんなことしていいわけもないので一応確認することにした。
「マーヤちゃんは髪いじられても平気?」
「はい、もちろん大丈夫なのです」
微笑みながらそう言ったマーヤちゃんからは、そこはかとない高貴なオーラが出ていた。
なんか凄い育ちが良さそうな感じがする。
ともかく、マーヤちゃんからの許可も取れたので洗面所の方に移動した二人は、10分ほど経ってから戻ってきた。
「いやぁ、やっぱり長い髪をセットするのって楽しいですね! これなら自信を持って送り出せる出来です!」
どこに送り出すんだよ、と思わなくもなかったけど実際、マーヤちゃんはどこに送り出しても恥ずかしくないくらい可愛く仕上がっていた。
髪をまとめるだけなら団子かポニーテールにすればいいのに、そうはせず、柔らかさを持たせたアップヘアになっている。
こんな上手いなら今度ハンカの髪もいじってもらおう。
「よし、それじゃあみんな準備はできたよね?」
「出来てるのだ!」
「はい! 出来てます!」
「はい、いつでも出られます」
「出来ているのです!」
何気に私含めて5人もいるから、返事の声も結構大きいな。
ともかく、そんなこんなで私たちは改めて大通りに向かうことにした。