バレなきゃいい
やっと絵本が作り終わった……!
後は国体行って本とゲームを消化すれば私的な用事は全部終わります!
……まぁ、その後にどんな量のお仕事が待ってるかは謎なんですけどねっ!
「ただの誘拐じゃん!」
見た目だけ切り取れば姉妹が街を歩いてるようにしか見えないから通報されなかっただけで、条件を整理すればもう犯罪臭しかしてこない。
言葉って不思議だね!
……ではなく!
『どうするの!? 私捕まるとかやだよ!』
私は声を潜めながらハンカに訴えた。
一応今まで基本的に清く正しくをモットーに生きてきたつもりだ。
女の子に抱きついたとかはノーカンとして、前世も今世も犯罪は犯さないように努めてきた。
ものすごい短い、意味ないだろ! って言いたくなるような信号でもきちんと守ってきた。
いやまあそんなの当たり前のことなんだけども、それなのに楽しい旅行中に捕まるとか嫌すぎる。
『大丈夫です、師匠が捕まるくらいなら私が身代わりになりますから』
『それ何にも大丈夫じゃないよね!?』
私にとっては家族同然のハンカが捕まるなんて、正直自分が捕まるよりもキツイ。
『家族全員捕まらず、誘拐もバレないハッピーエンドを目指そう』
『なるほど……。とすれば、やる事は一つですね……』
そう、こんなの話す前から結論は決まってる。
『『親を見つけて保護した体を装う!』』
まあ用は、バレなきゃいい理論です。
この作戦を成功させる為にはまず、あの子のことをよく知らなきゃいけない。
私がその子の方向に目線を戻すと、『子供を連れてきてあげたのだ』と少し自慢げに話すシャルルちゃんと、少し感心した様子で聞くエンジュの姿が見えた。
エンジュ気づいて! それ結構犯罪臭がするから!
「ねぇシャルルちゃん、そこの子なんだけど、どの辺りで会ったの?」
私がシャルルちゃんにそう問いかけると、シャルルちゃんは少しむすっとした顔をこちらに向けてきた。
「そこの子ではない、マーヤだ!」
いや、私初対面だから名前とか知ってるはずないからね。
まあでも初対面で名前も聞かず「そこの子」なんて呼び方した私が悪いか、反省しておこう。なんでそれでシャルルちゃんが怒るのかはさておき。
「ごめんごめん、それでマーヤちゃんとはどこで会ったの?」
「うむ、我がマーヤと出会ったのは、大通りを抜けてすぐの時なのだ。我と同じ銀髪で興味が湧いたのと、迷子で親が見つかりそうもないというのでここに連れてきたのだ!」
えっへんと言わんばかりに胸を張るシャルルちゃん。
「マーヤちゃん、本当にそうなの?」
シャルルちゃんが都合のいいように情報を改ざんしてる可能性もあるので一応確認を取る。
「はい、そうなのです。私が親とはぐれて途方にくれてたところを助けていただいたのです」
マーヤちゃんは上品に微笑みながらそう答えた。
なんかこう、全身から高貴な感じがにじみ出ている。
「そっか、なら良かった」
ともあれ、まあここまでは割合予想通りだ。
こんな小さい子が街を一人で歩くなんて迷子か家出くらいなものだし、こんな大人しそうな子が家出するとは考えにくいからね。
そうなってくると、一番の問題は……
「どうやって親御さんを見つけるか、だよねぇ」
「やはりそうなりますね。私としては、ひとまずシャルルさんがマーヤさんを見つけた場所に戻るのが良いのではないかと思います」
「うん、そうだね」
まあ、この状況ならそれが最善だろう。
「よし、それじゃあみんなで西の大通りに行こうか!」
「あ、それなら私またいろんな出店見て回りたいです!」
「わ、私も見てみたいのです!」
私の掛け声に、エンジュとマーヤちゃんが反応した。
エンジュはともかくマーヤちゃんが反応するのは予想外だ。
親がいるかもしれないからかな?
「うん、まあ親御さん探しがてらぐらいなら巡ってもいいんじゃないかな? シャルルちゃんとハンカもそれでいい?」
「はい、もちろんです」
「我も巡りたいのだ!」
そんなわけで、私たちは再度西の大通りに戻る事にした。