迷子の迷子のシャルルちゃん・後編
「シャルルさん、どこ行っちゃったんですかね〜」
「まだそんなに遠くにはいってないと思うけど、この人混みだと簡単には見つけられないね」
シャルルちゃん捜索を開始した私たちは、人の流れに沿って歩きながら左右を見回していた。
さすがは王都と言うべきか、人が多すぎて一筋中じゃ見つかりそうもない。シャルルちゃんの身長だとどうしても人混みの下の方に紛れ込むので、なおさらだ。
「この通り奥まで行ったらちょっと人に話しでも聞いてみようか」
「あ、それいいですね! シャルルさん珍しい髪色してますし見かけた人も多いかもです!」
そういえば、元の世界ではともかく、こっちの世界でも銀髪ってあんまり見ないな。魔族特有の髪色だったりするんだろうか?
まあなんにしても、目撃情報も集まりやすいのはありがたい事だし、存分に利用させてもらおう。
「あ、サナさん、通り抜けたみたいですよ」
少しぼーっとしていた意識が、エンジュの声で引き戻された。
危ない危ない、人探し中なのにぼーっとしてたら意味なさすぎるぞ。
私は気を引き締め直して前を見ると、目の前には広場みたいなものが広がっていた。
私達が通ってきた道の他にも8本ほどの通りと繋がっており、そこからこの通りに人が流れ込んでくるっぽい。
パリの町並みから凱旋門を無くしたものを想像してくれると、わかりやすいんじゃないかな?
「よし、それじゃあ早速聞き込みしようか」
「ですね! それじゃあ私行ってきます!」
エンジュは元気よく手を挙げると近くにいた人のところに行ってしまった。ドラゴンの尻尾くらいどこかに置いてきた方がいい気はするけど、まあいいか。
それにしても、エンジュってやっぱりコミュ力高いな……。シンシラさんとも謎の共鳴を起こして意気投合してたし、村の人達とも1日もしないうちにかなり親しくなってたしな。
よし、じゃあ一般の人への聞き込みはエンジュに任せて私はお巡りさん的な人に話を聞こう。
私は辺りを見回すと、広場の中央あたりに制服っぽい服を着た人を見つけた。
日本の警察とは似ても似つかない格好だけど、異世界だし多分あれが警察的な人だ。
「あの、すみません」
「はい、どうかしましたか?」
私が話しかけると、体全体をこちらに向けて対応してくれた。
すごい礼儀正しい人だな。
「さっきまであの通りにいたんですが、連れていた子供とはぐれてしまいまして。銀髪の背の小さい子なんですが、見ていませんか?」
正確に言えばシャルルちゃんは600歳越えなんだけどね。
見た目は子供だしそう言った方が絶対伝わりやすいけどシャルルちゃんにバレたら怒られそうだなぁ。
「ふむ、銀髪の子供ですか……」
お巡りさんの目が急に鋭くなって私を見透かすように睨みつけてきた。
思わず恐怖を感じて体がピクリと反応してしまったが、すぐさまお巡りさんは元の優しい表情に戻る。
「今のところ目撃情報はありませんね。お力になれず申し訳ありません」
「いえいえそんな。では、もし見かけたらサナが宿に戻るよう言っていたと伝えていただけますか?」
「はい、それはもちろん」
その後も、何人かの人に聞き込みをしたけど、やっぱりといえばやっぱりか、全く目撃情報はなかった。
そりゃ道をただ歩いてるだけの子供をいちいち覚える人なんてそうそういないだろうしね。仕方ない。
エンジュと合流してお互いの情報を確認しようと思ったんだけど、顔を見るに多分エンジュも情報なさそうだな。
「お巡りさんを中心に聞いてみたけど、誰もみてないって。エンジュは?」
「私も同じく誰もみてないですね……。シャルルさんどこ行ったんでしょう?」
「うーん、もう結構時間経っちゃってるし、もしかしたらもうこの辺にはいないかもね」
捜索開始から20分強、通りを抜けてどこかに移動するには十分すぎるくらい時間が経ってしまった。
シャルルちゃんの事だからあんまり無謀な動きはしないだろうけど、見つけられないとショックはショックだな。
「よし、それじゃあ通りもう一回通って軽く探してから宿の方に向かってみようか」
「はい、そうですね!」
そんなわけで、私たちは宿に戻ってみることにした。