王都到着!
「王都なのだ〜!!!」
「シャルルさん、危ないので馬車から身を乗り出さないでください」
「うぅ〜もっとオシャレな服着てくれば良かったです……。サナさん、私変じゃありませんか?」
「全然変じゃないよ。いつも通り可愛いって」
「そう言ってもらえるとありがたいですけど……でも……!」
荷物の一件から一夜明け、私たちは予定通り馬車に乗って王都を訪れていた。
現在の構図は、ウキウキしたシャルルちゃんをハンカが諭し、ファッションに不満があるらしいエンジュを私が励ましてる感じだ。
「サナ! 早く降りよう! すごい楽しそうだぞ!」
「まだダメだって、ちゃんと馬車を預けるところあるんだから、そこまで我慢ね」
「むぅ……」
少し口を尖らせて不満げになるシャルルちゃん。
王都を楽しみにしてもらえてるようで何よりだ。
「それにしても、ただ座っているだけとはいえど、流石に疲れが出てきますね」
ハンカはそう言って体をほぐすように伸びをした。
ハンカにしては珍しい弱音だけど、村からかれこれ二時間ほど馬車に乗っているのだ。
私はカンストのおかげでまだマシだけど、それでも少し疲れはある。みんなはなおさらだろう。
「よし、それじゃあ馬車から降りたらまず宿を取りに行こうか」
「申し訳ありません、そうしていただけるとありがたいです」
「いいのいいの、荷物だって預けなきゃ行けないしね」
というわけで私たちの最初の行き先が決定した。
それから私たちは馬繋場で馬車から降りた後、御者さんから聞いた人気の宿に行って四人部屋を一つ借りた。
部屋は割合広くてシンプルなもので、あるものといえばライトとダブルベッド一つにシングルベッドが二つくらいだった。
ちなみにお風呂付き。
「こっちの世界の宿も結構悪く無いな……」
異世界の宿っていうと、凄い荒れた、どちらかというと汚い部類のイメージを持ってたんだけど、結構綺麗だ。
ホテルというよりかは旅館みたいな感じで、基本的に木でできてるんだけど、それがまた暖かみを出していた。
「みんな、移動用の荷物用意できた?」
「準備万端なのだ!」
「はい、できています」
シャルルちゃんとハンカは私に小さめなカバンを見せて準備ができてることをアピールしてくれた。
返事がないのはあと1人、言わずもがな、おしゃれが大好きな天使さんだ。
ちなみにどこに居るのかというと、脱衣所だ。
部屋に入って早々に飛び込んで以来、出てきてないので多分あそこに居るはずだ。
「エンジュ、大丈夫? なんかあった?」
「あ、いえ! 大丈夫です! ただちょっと髪型と服装が納得いかないだけで!」
あ、またやってるのか。
私、前世の時からあんまり服とか容姿とかに頓着してなかったからあんまりオシャレの楽しさとか分からないんだよな。
だから正直エンジュがここまで気を使う理由もあんまりよくわからないけど、自分の価値観に相手を押し込めちゃうのも良くないと思うし、ここは大目に見て待ってあげよう。時間はたっぷりあるし、休憩も挟みたいからね。
と、いうことで、私達はエンジュが納得するまで30分ほど待って、街に繰り出すことになった。
「よし、じゃあ最初はどこに行く? 行きたい場所とかあるかな?」
私の質問に、真っ先に手をあげたのはシャルルちゃんだった。
「我は、食べ歩きがしてみたい!」
「食べ歩き?」
「うむ! 食べ歩きだ!」
食べ歩きか、あんまりしたことないな。
「ハンカとエンジュはどう? 食べ歩きでいいかな?」
「はい、私は師匠について行きますので」
「私も同じくです! それに王都の屋台って興味あります!」
うん、2人とも大丈夫そうだね。
そんなわけで、私達は屋台が集まって居るらしい西の大通りに移動した。
「おぉ、結構凄いね」
西の大通りにいくと、そこには日本のお祭りに負けず劣らずなくらいに屋台が並んでいた。
聞く限り特に今の時期お祭りがあるとかではないらしいから、普段からこんなんなんだろうな。なんかこう、凄い。
「いい匂いがするのだ! 早く行こうサナ!」
「そうですね! 私も凄い気になります!」
シャルルちゃんとエンジュがそれはそれはもう目を輝かせながらこちらを見つめてきている。
楽しみなんだね。
まあ実を言うと、屋台から漂う匂いのせいで、私も結構心が踊り出している。
「よし、それじゃあ行こっか」
こうして、私達は屋台を巡ることになった。