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ぷれぜんとふぉーゆー

 エンジュを我が家に迎えてから数日が経ったある日の昼下がり、私はゼリリウムの魔晶石の換金のために、冒険者ギルドに来ていた。


「それじゃあシンシラさん、よろしくお願いします」 


「はい! お任せください!」


 ポンッと胸を叩いてやる気をアピールするシンシラさんに魔晶石の入った袋を渡した。


 シンシラさんはそれを馴れた手つきで数えると、いつものように袋にお金を入れてくれた。


「ゼリリウム148匹討伐なので、14800ゴールドです!」


「いつもありがとうございますね」


「いえいえ、こちらこそありがとうございます!」


 お金の入った袋を受け取ると、ずっしりと重みを感じる。


 結構な額が入ってるもんな、当たり前といえば当たり前か。

 なんでこんなに稼ぐ必要があるのかといえば、もちろん、同居人が増えているからだ。


 現在サガミ家に住んでるのは私を含めて四人。

 元気で楽しく暮らしていこうと思うと、やっぱりこのくらいは必要になるのだ。


「よし、ありがとうございました。それじゃあ、また」


「あ、そうでした! サナさん、ちょっと待ってください!」


 やる事もやったので、家に帰ろうと歩き出すと、シンシラさんに呼び止められた。


「ん? どうかしました?」


「はい、ちょっと見せたいものがあったんですよ」


 シンシラさんはそう言いながら、カウンターから一枚の紙を取り出した。


 大きさはよくあるコンサートのチケットくらいのもので、そこに何やら字が書かれていた。


「何ですか、それ?」


「これはですね、なんと、王都に行ける馬車のチケットです!」


「馬車のチケット?」


 それを見せられて、私はどうすればいいんだろう?


 というか、この世界にも馬っているんだ。


「あれ? 思ったより食いつき悪いですね……。馬車ですよ、馬車!」


「え、いや、分かってますけど……そんなに馬車って珍しいんですか?」


「何言ってるんですかサナさん! 馬車といったら貴族の乗り物! そう滅多に乗れるようなものじゃありませんよ!」


 馬車ってそんなすごいものなのか!


 まあでも確かに、前の世界でも馬車なんて見たことなかったしな。車があったとはいえど、すごいものといえばすごいものか。


「あ、もしかして明日から行くんですか?」


 だとしたら、明日から数日は冒険者ギルドで換金ができなくなる。

 それならチケットを見せられたのも納得だ。


「いえいえ、そうでは無くてですね」


 あれ、違うのか。


「じゃあ、なんでまたそんなものを?」


「実はですね、これ、サナさんに差し上げようと思いまして!」


「え、いやいやいや! 貴重なものなんですよね? 流石にもらえませんよ! いただく理由もありませんし!」


 基本貴族しか乗れないとか聞かされた後だと、日本人としては流石にもらうのはためらうよね。


「いえ、理由ならありますよ」


「え、あるんですか?」


 私、なんかいいことしたっけ? 記憶にないけど……。


「実はですね、サナさんがこの村に住むようになってから、国からの徴税がかなり軽くなったり、物資を格安で売ってもらえたり、逆に商品を高く買ってもらえたりしてるんですよ」


「え、なんでそんな事に……って、あぁ、なるほど」


 そういえば以前、ハンカがやってきた時に私のステータスが高すぎて国が村への処遇を考え直してるとかいってたな。(6話参照)


 多分、その結果がシンシラさんの言ってる事なんだろう。


「でも、それ私自身は何もしてませんよ?」


 そう、私はただ住んでいるだけで、何もしていない。

 もっと言うと、ステータスがカンストしてるのもエンジュのおかげなので、いよいよ本当に何もしていない。


 それで高い物を貰うのは気がひけるよな……。


「いえ、サナさんのおかげなんですから、気にしないでくださいよ! それに、実はこの券を買ってもお釣りがくるくらいに得をしてますので!」


「なるほど……それならありがたくいただきますね」


「はい!」


 まだ納得はできないけど、特に断る理由もないし、相手が構わないと言うのなら貰う事にしたのだ。


 そうしてチケットを受け取ると、そこにはしっかりと『四人乗り』と書かれていた。

 うん、これならみんなでいけるね。



 そういうわけで、馬車のチケットを家に持って帰ると、


「王都に行けるのか! 前々から気になっていた王都のお菓子屋さんや洋服屋さんが沢山あったの……って違うぞ! 我は魔王の娘だからな! あくまで偵察だ! 人間の街を攻めるための偵察なのだ!」


「おー、馬車ですか。私乗ったことないので楽しみですね〜」


「ふむ、出立は明後日ですか。ではなるべく急いで準備しなくてはですね」


 みんな結構乗り気になってくれた。

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