転生成功!
目を覚ますと、私はふかふかなベッドの上で寝ていた。
目の前には木製の見知らぬ天井がある。
「凄い、転生もののお約束だ……!」
私は変なところで感動しながら、体を起こした。
「さて、と。ここはどこなのか……は考えるまでもないか」
ここはおそらく、田舎の方でかつ、人里から近すぎず、離れすぎずの位置にある家だろう。
それが私のお願いだったのだから、間違いないはずだ。
私はひとまず、家の中を散策する事にした。
これから暮らしていく家なのだから、知らない部屋とかがあるとなんか怖いし。
そうして調べた結果、この家は結構な大きさがあることが判明した。
二階建てで、敷地面積は大体50坪ぐらい。お風呂やトイレをしっかりと完備していて水はもちろんお湯だって出た。
家具とか諸々の生活必需品は揃っていたが、電化製品とかは置いてなかった。魔物が出るとか言ってたし、きっと世界観がすごくファンタジーなんだろう。
「よし、家の構造は大体把握できた!」
私はだだっ広いリビングの真ん中で一人叫んだ。
うん、なんかすごい寂しいな……。これが独り身の辛さってやつか。ずっと実家暮らしだったから知らなかったぞこの感覚。
と、そこで机の上に何やら手紙が置いてあるのを見つけた。
「ん、なんだろ? 天使さんからかな?」
私は普通に手紙を手に取ると、封を切って中身を取り出した。
『サナさんへ
こんにちわ、あなたの転生担当だった天使のエンジュです。
家は気に入っていただけたでしょうか? この家は私達天界の者達で作ったので、非常に丈夫で魔王が攻めてきたって壊れないくらいの強度があります! 安心してお住みください!
それと、家から出てまっすぐ進むと村があります。平和でいい村ですので、ご活用くださいね。
お金に関しては、その辺にいる魔物を倒したら出てくる魔晶石を村に持っていけば換金してくれるので大丈夫です!
それでは、良いスローライフを!
あなたの天使 エンジュ・エル・フラムより』
「すごい高待遇だ……!」
私はその手紙を読んで、驚愕していた。
正直、私が望んだ以上の望みが実現されている。
こんなにも手厚い保護を受けていいんだろうか? ここまでくると、逆に何か悪いことが起こるんじゃないかと心配になってくる。
「まあ、でも大丈夫か。危険が迫れば家に逃げ込めばいいんだし」
魔王にも壊せない家なら、多分何があっても大丈夫だろう。
というか、魔王とかもいるのか。やっぱり世界観ファンタジーだ。
「それにしてもあなたの天使って……」
ハートマークとか付いてないし、多分純粋にあなたの担当の天使って意味なんだろうけど、文字だけ見るとそこはかとないエロさを感じる。
と、まあそれはさておき。
「それじゃあとりあえず村に行ってみようかな。日用品は揃ってるけど食料とかなかったし」
私はそんなこんなで村を目指す事にした。
家を出ると、目の前には草原が広がっていた。
どうやら私の家は丘の上にあるようで、少し下り坂になっている道を進んで行った先に、手紙に書いてあった通り村があった。
距離的には500メートルちょっとくらいで、軽い運動にはもってこいだろう。
「健康の為にも、一応毎日村に行くようにはしようかな」
私はそんな決意表明をして、家を出発した。
意気揚々と歩みだして1分程すると、私の目の前になんか青い半透明のぶよぶよした生物が現れた。
これは……
「スライムだ!」
うん、間違いなくスライムだ。
昔やってたゲームに出てきたから中々感慨深いものがある。
「やっぱりこっちの世界でも雑魚モンスターなのかな?」
私はそんな疑問を抱きながら、一応ファイティングポーズをとってみる。
別に格闘技とかした事ないから、完全に見よう見まねなんだけどね。
『ぶるっ』
すると、そんな効果音とともに、スライムはこちらに向かって飛び跳ねてきた。
スライムの たいあたり攻撃!
しかし サナには 当たらなかった
サナの ただのパンチ攻撃!
スライムは 死んだ
「ってあれ?」
想像以上にあっさりと絶命したスライムに、思わずそんな声が漏れる。
首をかしげる私をよそに、スライムのいた場所には小さな石が現れていた。
私は、その石を拾い上げながら、ポツリと呟く。
「会心の一撃、出ちゃったかなぁ……?」
その後、村までの道中にもう5匹のスライムが出てきたが、これもまた一撃で難なく倒すことができた。
多分、ゲームでのスライム以上に弱いのだろう。
そして、私は村の入り口で、ふと立ち止まってしまった。
「あれ? そういえば魔晶石の換金って、どこでするんだ?」
天使さんからの手紙には、換金できるということしか書いておらず、どこですればいいとかいう情報は無かった。
誰か村の人に頼ろうかとも思ったけど、言葉が通じるとも限らない。
「これ、どうしようもないんじゃ……」
いや、物は試しに話しかけてみるのもアリだけど、それのせいで変な目で見られたらショックなんだもの。
「嬢ちゃん、そこで何してんだい?」
横から、おじさんが声をかけてきた。
大丈夫、日本語だ!
「えっとですね、最近この辺りに引っ越してきた者なんですが、この村の作りとかが全く分からないので困ってまして……」
「おぉ、なんだそんなことかい。そんなら俺に付いてきな。案内してやるよ」
おじさんはそういうと、村の中に入っていった。
正直、すんごく怪しい気がするけども、私も後をついていった。