帰宅!
家に戻ると、出かけていたハンカが家に帰ってきていた。
「あ、おかえりなさいませ師匠」
「ただいまハンカ、もう戻ってきてたんだね。昔の知り合いとは楽しんで来れた?」
「はい、おかげさまで楽しませていただきました。3日も家を空けてしまい申し訳ありませんでした」
さすがハンカ、もうこれ以上ないくらい真面目だ。
「いやいや、気にしないで。これからもどこか行きたかったら遠慮なく言ってもらってもいいからね」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑んで少し頭を下げるハンカ。
笑顔が可愛いから頭下げない方がいいな!
「そういえば、先程から気になってたんですが、そちらの方は?」
あ、そういえばまだエンジュさんの事を紹介してなかったな。
「こちら、私の古い知り合いのエンジュさん」
後ろのエンジュさんを示しながら紹介する。
すると、エンジュさんは一歩前に出て自己紹介をした。
「私、サナさんの天使をしているエンジュ・エル・フラムといいます! 以後、お見知り置きを!」
「はい。よろしくお願いします」
テンション高めに接近するエンジュさんに、ハンカは少し困った様子を見せていた。
一応ハンカは剣士をしていたわけだし、パーソナルスペースとかに敏感なんだろう。
いや、そうでなくともあの接近は戸惑うか。
「じゃあエンジュさん、シャワーだけでも浴びてきちゃってください。タオルは脱衣所にあるタンスの2段目に、服は三段目に入っているのでそれを使ってくださいね」
「わかりました! それじゃあお言葉に甘えて」
このままほっとくと、さすがにハンカが可哀想だったので早めに援護を出すと、エンジュさんはいそいそとお風呂場に向かっていった。
なんで場所がわかってるのか疑問に思ったけど、よくよく考えたらこの家作ったのエンジュさんだもんな。知ってて当然か。
「それじゃあ私はお茶の用意をしますね。知り合いから茶葉をもらったんですよ」
「へぇ、それは楽しみ。お願いね」
ハンカがお茶を入れにキッチンに行ったところで、私とシャルルちゃんは食卓についた。
「なんかごめんね、せっかく遊びに行ってたのに」
「いや、全然構わないぞ」
もっと駄々をこねて「今度もう一度行くのだぞ!」とか言いそうだったのに、意外と素直に引いてくれた。偉いね。
まあでもさすがにかわいそうなので今度埋め合わせをしてあげよう。
心の中でそんな決心を固めたところで、シャルルちゃんが疑問を一つ投げかけてきた。
「それはそうとサナ、あのエンジュとかいう人は何者なんだ? 何やら天使とか言っていたが……」
あ、そういえば私普通にエンジュさんの事、天使さんとか呼んじゃってたな……。
エンジュさん自身も思いっきり天使を自称してたし隠さなきゃいけないことではないんだろうけど、そこを説明するとなると、転生についても話さなきゃいけなくなる。
一応転生者の端くれとして、その辺を明かすのは気がひけるものがあった。
というわけで私は、
「その辺りの説明は本人がいるときにするよ」
問題を先送りにした。
理由は二つ。
まず一つ目は、バラしていい情報とダメな情報がわたしにはわからないので、その辺りを全てエンジュさんに任せようと思ったから。
そして二つ目は誤魔化すための言い訳が全く浮かばなかったからだ。
一つ目はともかく二つ目に関してはシャルルちゃんに知られたら色々文句を言われそうなので絶対に言わないようにしよう。
「うむ、分かった」
ともかく、シャルルちゃんも納得してくれたのでこの話はここで一時中断。
そこから先は他愛も無い会話を楽しんだ。
そうしてそれから大体10分後、
「いや〜いい湯、もといシャワーでした〜。服まで貸してもらっちゃって、ありがとうございます!」
「あ、お茶もちょうど入りましたよ」
リビングに全員が集結した。