再び森へ!
それなりに時間が取れて来たので連載再開します!
ただ、まだ完璧に暇になったわけではないのと、普通に書き方を忘れかけていてリハビリが必要なのとで更新速度は2、3日に一回とかになると思いますが、どうぞよろしくお願いします!
「我は、森に行きたい!」
三人の生活にもすっかりと慣れだしたある日の昼、ポカポカ日向ぼっこをしているとシャルルちゃんが急にそんな事を言い出した。
「森って、すぐそこの?」
「ああ! すぐそこのだ!」
シャルルちゃんは元気よく頷いた。
そんな元気のいいシャルルちゃんに、私は苦笑いを返した。
正直いうと、最近私は森に行っていない。
というのも、前に言った通り森で採れるものはそのままで食べれるものはさほど多くなく、殆どが調理必須というめんどくささがあったり、ハンカ同伴でもなければ1日かけたって集まるのは一食分が関の山なのだ。
それなら、周辺のゼリリウムを倒して村で食材を買ったほうが時間的にも労力的にも圧倒的に楽で、私みたいなタイプはやっぱり楽な方に流れてしまっていた。
いつもなら弟子のハンカに協力を要請できたけど、あいにく3日ほど前から古い知り合いの所に行くといって、家にはいない。
ハンカ抜きで森に行けば終わるまですごい時間がかかりそうな訳で、まあはっきりいってしまうと、めんどくさかった。
「そろそろハンカも帰ってくると思うし、それまで待たない?」
「嫌だ! 我は今すぐ森に行くのだ!」
「でもさ、あそこそんなにいいもの採れないよ?」
「それでも行く! 行くったら行く!」
600歳を超えるシャルルちゃんは地団駄を踏んだ。
年齢だけ見れば一人で行かせてもいいような気はするけど、見た目も精神年齢も注意力も、シャルルちゃんはそれこそ14歳くらいの子供そのものだからね。
付き添いなしっていうのはちょっとなぁ……。
「ど、どうしてそんなに行きたいの?」
「理由などない! そこに森があるからだ!」
どこの登山家だよ……。
ただ、そういう思い立ったが即行動みたいなところは、シャルルちゃんの利点とも言える。尊重してあげるのも悪くはないかもしれないな。
……いやまあ、欠点とも言えるんだけどさ。
そうしてその後、どうしてもゆっくりしたい私と、どうしても森に行きたいシャルルちゃんの歴史的大舌戦は5分にも及び、結果、私が折れた。
一応、安全面も考慮して採集などは禁止して、持ち物は護身用の短剣一本というなるべく身軽な格好にするという譲歩案は突き通したんだけど、森に行っちゃってる時点で私の負けと言っていいだろう。
そんなこんなで、私達は森の中に移動したのだった。
「すごい! こんな緑豊かな場所来たことがないぞ! 鳥だ! 今、物凄い青い鳥がいた!」
「へぇ、たしか、青い鳥って幸運を運ぶって言われてるよね」
「そ、そうなのか!?」
「うん、そんな話を聞いたことがある気がする」
「そうなのか! ならきっとさっきの青い鳥は神様からの贈り物だな!」
結構ロマンチックなことを言うシャルルちゃん。
魔王なのに神様とはこれいかに……。
まあただ、世の中には邪神とかもいるらしいし、魔族ならそれを崇拝するのかな?
私のそんな他愛もない疑問をよそに、シャルルちゃんはキラキラとした表情であたりをひたすら見回していく。
こんな可愛い表情が見れただけでも、森に来た甲斐があったね。
私としては、カメラがこの世界にないのがもどかしくて仕方がないよ。
「おお! 虫が小さい!」
「ん? 魔界の虫って小さくないの?」
「ああ、小さいものでも人より少し大きいくらいはあるのだ。毎年魔族が何人か食べられる事故も起きているぞ」
「おぉ……それは……」
人より大きいものがまだ小さいって……。
前世の時から虫って嫌いだったんだよな。
いやだってなんかうじゃうじゃしてるし、突然不意に現れるし、何考えてんだかよく分からないし……。
「ほら見てみろサナ! これなんか綺麗で可愛いぞ!」
「ん? ってギャァァァァァァァ!!!!」
私は森中に響き渡りそうなほどの大声をあげながらシャルルちゃんの手に収まっていたカナブンっぽい虫を風魔法で吹き飛ばした。
「ど、どうしたのだ……?」
シャルルちゃんがポカンとしたまま心配してくれた。
というか、カンストした私の風魔法を受けてもビクともしないってすごいな。魔王だから耐性とか色々あるんだろうか……?
って、そうではなく
「い、いや、実は私虫ってあんまり好きじゃなくてね」
「何故だ!? こんなに小さくて可愛いのに!」
「いや、小さいとか大きいとか私からしたら関係ないし、可愛さは感じない……」
「なんだとっ!?」
いや、そんな『衝撃の新事実!』みたいな反応されましても……。
苦手なものは苦手なんです。
というか、虫が好きな女の子の方が少ないんじゃないかな?
「と、に、か、く! 虫を私に近づけるのは禁止ね!」
「う、うむ! 了解した!」
今後暮らしていくためにも力強くシャルルちゃんにそう教えると、私達はさらに森を突き進んでいった。