公平な審判
料理が出揃ったとの報告を受けた私達は現在、シャルルちゃんが判定の代理を頼みたいと推薦したシンシラさんを招き、我が家のリビングに大集合していた。
「第一回シャルルちゃん争奪料理バトル〜」
「イェーイ! ……て、あれ?」
一人やたらテンションの高いシンシラさんが、私悪いことしましたか? と目で聞いてくる。
私はシンシラさんに悪くないんですよ、と首を振って伝えた。
なぜこんなことになっているのかというと、どういう訳か、私とシンシラさん以外の三人のテンションがすこぶるに低いのだ。
「絶対勝てる、師匠に褒めてもらうんだ。でももし負けたら破門とか……? いや、でも負けなければ……」
と、ハンカはこんな感じにずっとブツブツ言ってるし、
「せっかくシャルル様に私の料理を食べていただけると思いましたのに……」
と、アスモデウスさんは文句を垂れてるし、
「……」
と、シャルルちゃんは黙って申し訳なさそうにシンシラさんから目を逸らしている。
もう雰囲気は軽いお通夜状態だ。
シャルルちゃんの反応に関しては、なんか物凄い嫌な予感がしてくるけど、とりあえず見なかった事にして進行する事にした。
「えっと、まあ何にせよ、今回はシャルルちゃんたっての希望でシンシラさんにジャッジを行ってもらいます。意気込みはどうですか?」
「バッチリです! 精一杯頑張りますよ!」
シンシラさんはやる気マックスといった様子を見せるが、別に会場、もとい私の家のリビングは盛り上がりの一片も見せてはくれない。
なんかすごい虚しくなってくるぞこれ……。
「ま、まあとにかく最初の料理はこちらです!」
私はそう言って机の左側を大げさに指した。
その先にあるのは、フルコースかよ! と突っ込みたくなるような、豪華絢爛なものだった。
これは……多分ハンカが作ったな……。
一応昼ごはんという設定だったんだけど、まあいいか。
そして、別に布とかかけてたわけでも何でもないので、最初からずっと丸見えだったのだけど、シンシラさんは空気を読んで「わぁ!」と驚いてくれる。
その優しさ、プライスレス!
「それじゃあ、いただきます!」
シンシラさんは飛びつくようにその料理達に手をつけると、あっという間に全てを食べきった。
その姿、まるで吸引力の変わらないただ一つのアレの如し。
「えっと、一応この後にもう一人前食べてもらうんですけど、大丈夫ですか?」
正直、さっきの料理は一人前なんてはるかに超えた量があった。
それこそ、この場にいるメンバー全員を満腹にできてしまうくらいの量が。
「大丈夫ですよ、まだ腹0.3分目くらいなんで!」
「0.3! すごい細かい上全然満たしてない!」
もう完全にダイ◯ンだよこの人!
いや、このツッコミも意味わかんないけど!
「まあ、でもそれなら安心です。では、次の料理はこちら!」
また、私は大げさに右手側の料理を指した。
その先にあったのは、カレーだった。
私的にはカレーは夜のイメージが強かったけど、昼に食べても何の違和感もないし、何より子供には大人気。
シャルルちゃんが食べると考えていたのならアスモデウスさんが文句を垂れていたのも納得だ。
それなりに大人のシンシラさんだと、カレーってだけで無条件に喜ぶほど子供では───
「カレーだ! やったァァァァァァ!!!」
無条件に喜んだ!!!
「それじゃあ、いただきます!」
本当に全くお腹に溜まっていないらしいシンシラさんはカレーに飛びつくと、一口目を頬張り、そして──────気を失った。