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勝負開幕!

「「料理勝負を!」」


 ……………あれ?


「いや、ちょっと、え? 料理勝負?」


 今の流れ完全にバトル展開かと思ってたぞ。


「それ以外に何があるんですか師匠」


「いや、普通に戦闘力を競うとかだと思ってたんだけど」


 普通そう考えるよね。


「サナ様、こう言ってはなんですが、強いからと言ってシャルル様を預ける理由になると思いますか? 強さなんかよりも、シャルル様にちゃんとした料理が出せるのか。そっちの方が重要でしょう?」


 うっ……確かに言われてみればそうだ……。


 散々人のことバトルジャンキーだ何だと言ってたけど、案外私が一番戦闘狂思想に染まってたのか……。

 何気にショックだぞ……。


「よし、そうと決まれば早速開始しましょう!」


 ハンカがもう待ちきれないとばかりに目を輝かせて言った。


「そうですわね。でも、(わたくし)食材なんて持ってきておりませんわよ」


 確かに人を連れ戻すだけなら普通食べ物なんて持ってこないよな。

 でもうちにも今はきのこくらいしかない。


 それなら、


「じゃあ、その辺は自分達で調達する事にしましょう。幸い、村の近くにありますし森にだって食べられるものはたくさんあります。毒のあるなしは私とハンカで判断するので、森でとったものは使う前にちゃんと見せてください」


「それは構いませんが、(わたくし)お金なんて持ってきておりませんわよ。奪えばいいんですか?」


 何でお金がないなら奪えばいい、って思考してるんだ! 悪魔か……?!


 ……いや、魔族だから一応悪魔に近いのか。


「えっと、資金は近くにいるゼリリウムを狩って稼いでください。私はずっと冒険者ギルドにいますから、アスモデウスさんは私を介して換金してください」


「分かりましたわ」


 と、そこまで話して私はふと考えた。


「あの、魔族がモンスターを倒すのって大丈夫何ですか?」


 こう、同族殺しみたいになってしまうのなら一応私の貯金から出そう。

 ハンカが来たおかげでだいぶ食費が浮いた上、収入が倍になったので結構貯めれているのだ。


「いや、その辺は大丈夫ですわ。確かに魔族とモンスターには知性の有無くらいの違いしか無いのですが、同じものとは考えておりませんし、ゼリリウムを倒すくらいなら罪悪感もありませんから」


 あれか、人が『人間』と『動物』を分けて考えてるみたいなものか。


 まあ何にせよ、それなら私も安心だ。


「それじゃあ、時間制限は太陽が空にのぼりきるまで。いいですね?」


 私の問いかけに二人は首を縦に振って答えた。


 時計を使ってもいいかと思ったんだけど、お互い時間感覚が皆無となるといろいろグダグダになってしまいそうな気がした。

 それならいっそ、この世界でよく使われる方法の方がいい。


 そう考えたのだ。



 それから、私達は家の外に移動した。


「それでは、よーいはじめ!」


 私の掛け声を皮切りに、二人は物凄い速度で森に行った。

 確かに森の資源は限られてるし、村と違って品質も安定しないから早い事確保しておいた方がいいんだろう。


 こうして、家の前には私とシャルルちゃんだけが取り残される。


「うん、それじゃあ、行こうか」


「ああ、そうだな」


 手を繋ごうとシャルルちゃんの手を触り、ものすごい力で振りほどかれながら、私達は冒険者ギルドに移動した。



「おはようございます、シンシラさん」


「サナさん! そろそろいらっしゃる頃だと思ってました!」


 すごいな、予知みたいな力があるんだろうか?


 と、思ったけど、こっちの世界に来てからは毎日ほとんど同じ時間に通っていたんだ。そりゃ流石に分かってくるか。


「おや? 今日は可愛らしい方を連れられてるんですね」


 シンシラさんがシャルルちゃんを見ながらそう言った。


「可愛らしいとは何だ! 我はもう613歳だぞ!」


「そうなんですね〜」


 激しく怒るシャルルちゃんに対して、シンシラさんは優しい笑みを浮かべていた。

 これは子供の冗談だと思ってる顔だ。


 いや、私も最初はそうだったんだけどさ。


 まあただ、わざわざ魔王の娘であることを明かして驚かせる必要もないし、放っておこう。


「それはそうとサナさん、今日は袋、持たれてませんけど換金じゃないんですか?」


 なかなか鋭いところをついてくるシンシラさん。

 何気にこういうところの洞察力はあるんだよな、シンシラさんって。


「はい、今日はギルドの休憩スペースにしばらく居させてもらおうかと思って」


 私は入り口すぐ横の、椅子や机がいくつか置かれた休憩スペースを指差した。


 一応ギルドは換金とかだけではなく、こういった共有スペースみたいなのもあるのだ。

 シルバ村は平和だって言ってたし、ゼリリウムを狩ろうとする村人がいないあたり、こういった場所を作っておかないとさすがに冒険者ギルドなど残してはもらえないのだろう。


「珍しいですね。別にそこは自由に使っていただいて構いませんよ。あ、でもあんまり騒がしくはしないでくださいね」


「はい、それは大丈夫です」


 私はシンシラさんににっこり微笑みかけると、シャルルちゃんと椅子に腰をかけた。



そしてそれから3時間後、両者の料理は出揃った。

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