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2.苺とルンバは踊れない

 喫茶店に行ってケーキやホットケーキを頼むと、その横にアイスやら8分立ての生クリームやらミントが添えられてくる。大変華やかで大好きなのだが、冬になると多数の人にとって嬉しいもの、私にとっては悪魔のものが添えられることが多い。

 甘くて赤くて北関東某県で全国生産第一位で冬になるとスーパーに並ぶあれ。

 苺である。

 この赤い物体が、私は物心ついた頃から全く食べられない。食べようとすると普通に固まる。全身で拒否する感じ。味は全く覚えていないが、においの時点でもう無理。触るのも無理。給食で苺が出れば普通に友人に押し付けたし(嬉しがっていたかどうかは謎)、できれば目に触れないところで給食を食べたい、とも思っていた。大人になってバイト先で仕事の関係上かろうじていちごショートを触れるようにはなったが、食べられるようにはならず。

 冬のスーパーの入り口が苦手だ。なぜならば、大体やつらが入ってすぐの真正面に待ち構えているのである。そこで私と苺の攻防戦が始まる。やつらはにおいでまず攻撃してくる。においの時点で私はひるむが、用があるのは苺を抜けた先にある一本100円のダイコンである。ダイコンにたどり着くためにはまず、やつらが醸し出すにおいの攻撃をくぐりぬけ、やつらはいないと思って通り抜けなければならない。ここが難しい。においの存在は強烈である。ここで精神的ダメージを多大に受けながら、何とかしてダイコンにたどり着く。そして気づくのは「家にダイコンが2本あるから今日ダイコン買わなくていいじゃん」という、台所に転がるダイコンの存在の有無である。

 ああ苺。あなたと私は愛のダンス、ルンバが踊れないの。ダイコンとは踊れるからもう一本買っちゃうけど。これでも私はレベルアップしたの。今年のクリスマスだっていちごのケーキを家族に用意したし(用意できる程度に大丈夫にはなりました)。

 しかしなぜ苺が食べられないのか。これから食べる予定もないし、においも触るのも見るのも得意ではないんだけど、いろんな人にやはり聞かれる。

「何故苺が食べられないのか。うまいから食べてみなさい」嫌いだからだよそれ以上の理由はない、と答えるわけにもいかず、朝ドラの『ごちそうさん』のヒロイン、め以子に怒られそうな本当のことを話す。

「物心つく前に一生分食べました」と。


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